具体的な施策である「ニッポン1億総活躍プラン」の概要を
はっきりさせたのですが、その中に保育士の賃金のことがあります。
今回はこれを見てみたいと思います。
「保育士賃金を月4万引き上げ…技能・経験積めば」
「経験積めば 保育士月給4万円増」(全文)
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読売の記事は短いので全文を引用したいと思います。
安倍内閣が掲げる「1億総活躍社会」に向け、政府が策定する
中長期計画「ニッポン1億総活躍プラン」の概要が13日、判明した。
経験を積んだ保育士の賃金を来年度から月約4万円引き上げることや、
雇用形態の違いで賃金差をつけない「同一労働同一賃金」実現のために
s指針を策定することなどが柱だ。
18日に開かれる関係閣僚と有識者で構成する
「1億総活躍国民会議」で決定後、政府が31日に閣議決定する予定だ。
プランには、保育士の賃金を一律2%(月給約6000円)引き上げる方針を明記。
保育士の月給が全産業の女性労働者の平均月給より約4万円低いことを踏まえ、
技能・経験を積んだ保育士に関しては約4万円の賃金引き上げを目指す。
「希望出生率1・8」を実現するため、保育人材を確保するのが狙いだ。
ベースとなっている方針は2%の引き上げです。
これは補助ブログの5月3日エントリでも触れたもので、
『ニッポン1億総活躍プラン』に盛り込むという方針で
すでに進められていたものです。
「保育士給与2%引き上げ案」
2%は6000円ほどであり、「もうしわけ」程度の引き上げで、
どれほどの待遇改善になるか疑問ということは、何度かお話しています。
しかもこれは2012年の民主党政権のときに決まっていたものです。
「もうしわけ」程度の待遇改善を、4年も放置したのち
ようやく手をつけることになったということです。
技能・経験を積んだ保育士に対しては4万円まで
賃金が引き上げられることが追加されています。
4万円はどこから出てきたかというと、全産業の女性労働者の平均賃金です。
「平均賃金」であれば技能や経験に関係なく、
一律に引き上げるのが当然と考えられる水準です。
「平均賃金」並みに引き上げられるのは、
技能や経験のあるかただけであれば、保育士の平均賃金は
全産業の女性の平均賃金におよばないことになり、
待遇改善としてふじゅうぶんと言わざるをえないでしょう。
より深刻なのは「全産業の女性労働者の平均賃金」を基準にしたことです。
これは
1. 「保育士=女の仕事」という認識を示す
2. 男女に賃金格差があることを追認する
ということを意味するからです。
なぜ男女問わず「全産業の平均賃金」にしないのかと思うところです。
保育士がほかの業種と比べて賃金水準が低いのは
「保育士=女の仕事」という意識があることもあります。
「女の仕事だから低賃金でかまわない」とされるということです。
政権がそうした認識を示すことで、保育士の賃金が低水準で
固定化されることの追認や強化をすることにもなるでしょう。
「保育士の給与が低い理由」
補助ブログの5月3日エントリで
ただでさえ「女の仕事」と思っていて蔑視感があるし、と書いたのですが、さっそく蔑視感を出してくれたと思います。
保育士は男性もいるんですが、総理はご存じないのかしら? https://t.co/n1xHGvh5dW
— わんわん (@wanwan_nz) 2016年5月17日
さらには保育士が低賃金であることで、男性のなり手が
ますます現れなくなり、「保育士=女の仕事」という状況が
維持・強化されるという悪循環に陥ることになります。
「安倍政権は男尊女卑政権」 民進・山尾氏:朝日新聞デジタル
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- [性差別]
まあ、今更だね/http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/032500041/?P=4 「女の仕事だから」低賃金が問題にされず、低賃金が問題にされないから男性が定着しない悪循環
2016/05/17 12:30
日本は賃金のジェンダー格差が他国と比べてとくに大きいです。
ジェンダー格差がある現状の追認や強化にもなりかねないです。
低水準の引き上げでよいとする発想自体も問題で、
財源を惜しんでもうしわけ程度の賃上げでお茶を濁すために、
低い賃金水準を基準にしているとも考えられます。
「学歴別年収のジェンダー差」
「男女&雇用形態別年収分布」
「収入のジェンダー格差」
「OECDの男女格差の報告」
民進党の山尾志桜里議員が、こうしたことを問題視して
安倍政権を「男尊女卑政権」と言うことになります。
安倍政権が「男尊女卑」なんていまさらという感じですが、
これくらいはっきり言われることになったかとも思います。
「「安倍政権は男尊女卑政権」 民進・山尾氏」
(はてなブックマーク)
二つの意味で大問題だと思います。
一つは、保育が女性の仕事ということに象徴される男女の職業別役割の固定化。
もう一つは、女性の平均賃金が低いからそちらに合わせるということで、
男女の賃金格差も固定化し認めていくこと。
この二つのことを政府が認めた。
さらに深刻なのは、最後まで総理がこの二つの問題に気づかなかったということ。
本当にこの政権の女性活躍というのは、全くのうわべだけ。
「男尊女卑」という古めかしい言葉を倉庫から
出してこなければならなくなった。びっくりしました。
「男尊女卑政権」、まさにそのものだと思います。
安倍晋三首相は反論するのですが、本人としては
女性活躍のために積極的に施策を導入しようとしている
つもりなのではないかと、わたしは想像します。
「民進・山尾氏「男尊女卑政権だ」…首相は反論」