という新しいキャンペーンを旅行会社HISが始めたのですが、
インターネット上で猛批判を受けて、1日で中止になったのでした。
「HIS、セクハラ批判で即日中止「東大美女が同行」キャンペーン」
(はてなブックマーク)
「「東大美女が隣に座るフライト企画」抗議相次ぎ即日撤回 HISが謝罪」
「HISの「東大美女が隣に座ってくれる」キャンペーン 「セクハラ」批判受け即日中止に」
「HISの「東大生美女図鑑」学生が隣に座るキャンペーン、「下品」と批判殺到で中止に」
以下の記事が事件の考察については詳しいと思います。
「旅行会社の「東大美女が隣に座ってくれる」
キャンペーン即日中止について、大学教員として考えること」
(はてなブックマーク)
時事の記事は短いので全文引用します。
旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)は11日、
海外旅行に向かう機内で、写真誌「東大美女図鑑」の
モデルとなった現役女子学生が隣に座ってくれるキャンペーンを
始めると発表したが、即日で中止を決めた。
インターネット上で「セクハラではないか」との意見が上がっていた。
HISによると、キャンペーンは当初、抽選で選ばれた
5組の海外旅行客が航空機に搭乗する際、それぞれ女子学生1人が同行。
機内で旅先に選んだ街の成り立ちや特徴的な建築物などの解説のほか、
子どもがいれば宿題を手伝ってくれるとうたっていた。
これがHISの「東大美女図鑑」です。
批判を受けて発表当日のうちにキャンペーンは中止となり、
HISのサイトは早々におわびの内容に差し代わったのでした。
【お詫び】
— HIS_japan エイチアイエス 公式 (@HIS_japan) 2016年5月11日
本日より開始いたしました弊社企画に関して、ご意見を真摯に受け止め、皆様にご不快な思いを感じさせる内容でありましたことを深くお詫びし、取りやめることに致します。なお、関連する投稿に関しましては、順次、削除させていただきます。https://t.co/Z1d0B4BNiE
これは女性差別という批判は無理もないでしょう。
「女子大生」「隣に座る」ということが重要であり、
明らかに「性的奉仕」が含まれるからです。
男性中心社会の中で、女性は男たちのために
「接待」や「サポート役」を担わされてきたという現実があるし、
そうした差別構造を再現し強化することもなりかねないです。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sendayuki/20160512-00057587/
なぜなら広告が「あなたの隣の席に座って」を、
これでもかというほど強調しているからである。
「美人女子大学生に隣に座ってもらう」ことが第一の目的としか思えない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6800?page=2
そもそもこの企画が炎上している理由は、男性社会の中で
望むと望まないとに関わらず「接待役」「サポート役」という
“性的役割分担”を女性が担わされてきたという
差別的な構造を再現してしまったところにあり、
そこに不快感を覚えた人たちがいることだ。
単にレクチャーするなら、女子大生である必然性はないです。
むしろ大学の教員や専門の識者のほうが適任です。
また「女子大生」だけであることで、
顧客は異性愛者の男性しか意識していないことにもなり、
明確なジェンダー非対称があることになります。
このキャンペーンは「東大」「女子大生」「隣に座る」で、
「才色兼備の若い女性が接待する」ことで生じる「付加価値」を
利用しているし、その「付加価値」がなければ
なりたたないキャンペーンであるいうことです。
この「付加価値」は差別構造があることによるものですから、
それを利用すれば差別的ということになります。
http://b.hatena.ne.jp/entry/287222780/comment/nanae_ll
「東大」と「美女」の組み合わせにどうして特別の付加価値が
発生するかを考えれば、女性蔑視があるのは間違いないでしょう。
「アインシュタインより〜」の件に通じるタイプのステレオタイプ化。
HISが発表当日でキャンペーンを中止にしたのはお粗末です。
それくらい猛烈な批判を受けるレベルであることが、
企画を準備しているあいだぜんぜんわからなかったからです。
(もっとも当日のうちに中止が決定できるくらいの、
批判を受け入れる体制はできているとも言えます。)
http://b.hatena.ne.jp/entry/287222780/comment/T-3don
このレベルの企画が表に出てしまう時点で、
チェック体制に重大な欠陥があると見なさざるを得ない。
反面、即時中止を決定できる程度には評価・クレーム対応の
フィードバックが機能している、と。
(企画の段階で社内から反対や批判はあったけれど、
一部の積極的推進派が企画を強行したということでしょうか?
そうしたら発表当日、猛批判があったので、
ずっと不満に思っていた社内の反対派が「それ見たことか」と、
即座に中止にしたということでしょうか?)
キャンペーンに賛同して協力した女子学生たちについては、
以下のことを指摘しておきたいと思います。
http://b.hatena.ne.jp/entry/287222780/comment/pollyanna
企画した会社も会社だけど、その企画に賛同して協力した学生も学生だよね。
東大に入ってみようかなと考える後輩女子たちを
discourageするかもしれない可能性について
考えてみる知性はなかったんかいな。
「才色兼備の女性による性的奉仕」に協力することで、
とくに後輩の女子学生に対する影響を、どう考えているのかということです。
それは自分の大学のブランドを
みずから損なうことにもなりかねないと思います。
付記1:
HISのキャンペーンはガーディアン紙でも記事になりました。
さすがはガーディアンという感じです。
「Travel agency cancels offer to fly with
Tokyo student in 'book of beautiful girls’」
付記2:
以下の記事でもHISのキャンペーンについて触れられています。
(後半はネットの炎上のお話になっている。)
「H.I.S.の東大美女図鑑騒動Twitterならではの糾弾構造」
こういったことが日本で未だに根強く残る「女性蔑視」の風潮に繋がっているのかもしれませんね。
わたしのブログにコメント、ありがとうございます。
>情けないというか、悲しい話ですね。
>日本は女性が商品として扱われることが多いように思います
それはわたしも思うところです。
女性の商品扱いといえば、最近のことで思い出すのは、
ホステスのアルバイト経験を理由にアナウンサーの
内定を取り消された女子学生ですね。
「女子アナ内定取消で訴訟」
http://taraxacum.seesaa.net/article/410028104.html
「女子アナ」というのが、企業の「男社会」で消費される
「商品」になっていて、ホステス経験があるのは、
その「商品」にふさわしくないということです。
HISのキャンペーンは1日で中止になったので、
女性の「商品」化を許さない空気は、
多少は強くなってきているのかもしれないです。
それでもHISを擁護する人は、しっかりいましたからね。
「本人たちが同意しているのだから問題ない」とかなんとか。
わざわざご返答くださり、ありがとうございます。
私もこの「ホステス経験のある女子アナ問題」は、「男性社会」を象徴する出来事であると感じました。
「女子アナ」になるには「賢く」「美しく」「清純派」の3つの条件が必要であり、男性の欲望が全て詰め込まれているような気がいたします。ニュースを読むのに「美しく」「清純派」なんて必要ないのに...。
日本では「女性は若くて美しいことにしか価値がない」といった考えをお持ちの方がまだ多いように思います。
・「25過ぎたら女はババア」
・「非処女は中古品」
・少し歳をとれば「劣化した」
などといったネットの書き込みをよく目にします。彼らにとっては美少女や美女、処女だけが価値のある存在であり、歳をとったら彼女たちもまた叩きの対象になるのだろうと思います。HISのキャンペーンの擁護者も、こういった考えが根底にあるのでしょうね。
私にはカナダに留学経験のある友人と、台湾人の友人がいますが、ここまで女性を商品としかみなしていない書き込みは、例えネット上であっても存在しないと話していました。
また、日本の子供も女性を「ババア」ということが多いですが、海外ではすぐに周りの人(とくに男性)がきちんと注意をしてくれるそうです。
いくつになっても女性を大切にしてくれる国が羨ましいです。長々と脱線しながら、返信失礼いたしました。大変興味深いお話で、勉強になりました。
>「女子アナ」になるには「賢く」「美しく」「清純派」の
>3つの条件が必要であり、男性の欲望が全て詰め込まれているような
HISの「東大美女」キャンペーンも、この3つの条件を満たしますね。
>などといったネットの書き込みをよく目にします。
ネットで女性相手に議論になったとき、
年齢と容姿を持ち出して誹謗することもよくありますね。
年齢と容姿は気に入らない女性を攻撃する際の
定番になっていると思います。
>私にはカナダに留学経験のある友人と、台湾人の友人がいますが、
>ここまで女性を商品としかみなしていない書き込みは、
>例えネット上であっても存在しないと話していました
外国はやはりそういうレベルなのですね。
(日本が遅れていると言ったほうが妥当なのでしょうけれど。)
HISのキャンペーンが1日で中止になったくらいでは、
まだまだたいしたことなかったですね。
>海外ではすぐに周りの人(とくに男性)がきちんと注意を
教育的配慮も行き届いているのですね。
男性が注意するところにレベルの高さを感じさせます。
>長々と脱線しながら、返信失礼いたしました。大変興味深いお話で、勉強になりました。
いえいえ。
こちらこそコメントをくださりありがとうございます。
つたないブログですが、よろしければこれからも
お越しいただけたらと思います。