2016年05月29日

toujyouka016.jpg 日本の未婚男性の不幸感(2)

5月28日エントリの続き。

日本の未婚男性の不幸感が飛び抜けて高いことについてです。

「未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会」
(はてなブックマーク)

 
結婚生活や家庭生活は多かれすくなかれ男性中心的です。
夫の生活や家族の事情に妻が合わせることを余儀なくされるとか、
妻の犠牲の上に結婚生活が成り立つことは多いです。
日本だけでなく世界中どこでもその傾向はあります。

それは多くの社会で、
http://skky17.hatenablog.com/entry/2014/10/31/223934
結婚は、男性にとっては「イベント」であり、女性にとっては「生まれ変わり」
ということに現れていると思います。

世界的に見ても離婚が増えているのですが、
これは男性中心の家族観や社会制度が薄れてきたり、
女性が経済的に自立できるようになることで、
女性が不本意な結婚生活をしないですむようになったからです。

「世界的に離婚が増えている」


これは男性は結婚によって既得権を得ていることを示しています。
未婚男性に不幸感が強くなる人が多いのは、
このような結婚にともなう既得権を得られない、
という思いもあるのではないかと思います。

ニューズウィークの記事は、このあたりを調べるために、
日本における離婚率と自殺率との相関を見ています。
横軸に離婚率、縦軸に自殺率を取り、1950年から2014年までの
離婚率と自殺率をプロットして、ジェンダー別に示しています。

図2 離婚率と自殺率の相関(1950-2014年)

この図はわたしのブログでもだいぶ前に取り上げたことがあります。
このときは女性の立場に注目したのですが、
今回は男性の立場に注目することにします。
(データも更新されて、2014年まで含まれていますし。)

「女性に不利な結婚生活」



男性は離婚の多い年ほど自殺も多いことは明らかです。
自殺率と離婚率のあいだに、はっきりした正の相関があります。
男性は結婚によって得ている既得権が多いので、
離婚でそれを失なうと精神的ダメージも大きいということでしょう。

とくに日本の男性の場合、「家族思想信仰」があるので、
男性が離婚で失なうものがとくに大きいと考えられます。
「夫が外で働き妻は専業主婦」という
「家族思想信仰」の「教義」は、男性の自由な労働活動のために
女性が奉仕するというものであり男性中心的だからです。

未婚男性の「不幸」感が未婚女性と比較して著しく高いというデータは、
日本の家族の意味合いが男女で異なっていることがうかがわれる。
それは、著者の過去の記事でこれまでにも指摘していることだが、
日本社会の性役割規範(ジェンダー観)がいまだに根強いことの証左に他ならない。

女性は離婚の多い年ほど自殺が少なく、負の相関があります。
離婚によって女性は結婚生活の抑圧から解放されるので、
精神衛生上よくなるから、ということになるでしょう。
「家族思想信仰」は女性にとっては抑圧的で、
結婚生活を窮屈にすることを示しているとも言えます。

男性の場合、支える目的や情緒安定の場の喪失という意味で、
離婚(家族解体)は自殺のきっかけになり得るが、
女性は必ずしもそうではないことが示唆されている。
女性の場合は、家庭の諸々の束縛から解放されるという点で、
離婚は自殺の抑止因になっていることも考えられる。



>結婚に夢を見る男性

男性のほうが女性よりも、結婚に「夢を見る」ように思います。
(諸外国はわからないですが、日本はそうだろうと思います。)
未婚男性に不幸感が強いのは、結婚にともなう「都合のいいこと」ばかり
考えるということもあるのではないかと思います。

結婚というのは、ずっと生い立ちの違うふたりが
いっしょになるのですし、カチカンの違いから
ふたりのあいだに軋轢が生じることもとうぜんあるはずです。
そういう結婚にともなう「都合の悪いこと」はあまり考えない感じです。

男性が結婚に夢を見られる理由は、前のエントリでお話したように
「家族思想信仰」の影響が男性により強く残っていて、
男性のほうが「結婚すれば幸せ」と思いやすいからでしょう。
もう少し詳しく見ると、結婚生活が男性中心ゆえに
自分が利益を得ることを考えていられるからだと思います。


「結婚は、男性にとっては「イベント」であり、
女性にとっては「生まれ変わり」」とあるように
男性は結婚しても変化が少なく、むしろ女性のほうが
多く変化して男性の都合に合わせてくれるくらいです。

未知の結婚生活に対する不安から気分が憂鬱になる
「マリッジブルー」も、通常は女性だけの心理現象です。
男性は結婚にともなう変化が小さいので未知の要素が少ないから、
マリッジブルーになることもほとんどないのでしょう。

ほかにも男性が結婚で得られる既得権はあって、
少なくない男性がお好きであろう「家庭のぬくもり」があります。
日本の場合、既婚男性中心の企業文化のおかげで、
結婚すると年収が増えることも大きいと思います。

「家庭のぬくもりと家族思想」
「男は結婚で年収が増える」

こうしたことがあるので、結婚生活にともなう
「都合の悪いこと」には考えがあまりおよばず、
「都合のいいこと」にだけ思いを馳せて、
結婚に夢を見ていられる男性も結構いるのだろうと思います。

posted by たんぽぽ at 13:23 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
離婚シングル男性は既婚男性より10歳平均年齢が短いそうです。
その多くは生活習慣病だそうです。
今まで妻に健康管理をしてもらえていたものが、そうでなくなって不摂生な生活しか出来なくなると考えられています。
結局「自立」して生きれないのは男性なんでしょうかね。
Posted by わんわん at 2016年05月30日 11:07
わんわんさま、こちらにコメントありがとうございます。

>離婚シングル男性は既婚男性より10歳平均年齢が短いそうです。
>その多くは生活習慣病だそうです。

そういう男性は結婚前も、自分で栄養のバランスを
考えて食事を摂る、なんて習慣も身に付けなかったのでしょう。
「そういうのは結婚して奥さんにやってもらうこと」
という意識だったことと思います。

離婚してひとりになったから、これからは自分でなんとかしなければ
という発想にならないのも、いかんともしがたいです。
(生活がすさむと家事は雑になってくるものですが、
離婚して心がすさんだままということなのでしょうか?)


>結局「自立」して生きれないのは男性なんでしょうかね

かかる男性は「夫は外で働き妻は専業主婦」という
「家族思想信仰」の「教義」に依存しているのかもしれないです。
その意味で「教義」の「犠牲者」だと思います。
Posted by たんぽぽ at 2016年05月30日 23:16
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