みずからの推進したい政策を進めるために、
「種まき期」「収穫期」という「二つの顔」を
使いわけるということをお話したのでした。
「(2016参院選 安倍政治を問う:上)政権「二つの顔」
首相「アベノミクス最大限ふかす」」(1/2)
「(2016参院選 安倍政治を問う:上)政権「二つの顔」
首相「アベノミクス最大限ふかす」」(2/2)
「秘密法・安保体制の推進力に 「3分の2届けば改憲着手か」」
現在は選挙前であり、安全保障関連法案で低下した
支持を回復させる「種まき期」ということになります。
具体的にまいている「種」に当たる政策を見ていくことにします。
これらがどれだけ有権者からの支持を得るかが、
参院選の結果に大きく影響してくるからです。
>消費税10%増税の延期
これはとても妥当な判断だと思います。
8%への増税でも消費が落ち込んで、景気が停滞したのでした。
10%に増税したらさらに経済が恐慌的になりかねないです。
「安倍首相、消費増税の再延期を正式表明 19年10月に」
「消費増税の再延期、安倍首相が表明
「これまでのお約束とは異なる、新しい判断だ」」
熊本で地震がありましたし、スティグリッツなど著名な外国の
経済学者からも、消費税増税をするべきでないと言われてもいました。
安倍首相はかなり前から増税延期を決めていたようですし、
伊勢志摩サミットの様子を見ても、本気度は高いようです。
「スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合」
「スティグリッツ教授は、本当は安倍首相にどんな提言をしたのか?」
>家族・ジェンダー
安倍政権は「一億総活躍社会」を掲げて目玉政策にしています。
この中に「夢をつむぐ子育て支援」という項目があって、
ここは家族・ジェンダー政策がメインとなります。
「三本の矢・一億総活躍社会?」
「夢をつむぐ子育て支援?」
「希望出生率1.8」という具体的な数値目標がありますが、
そのために現在積極的な施策が、二世帯住宅の支援だったりします。
現代社会においては三世代同居なんて困難ですし、
実効性が薄いであろうことは予測されます。
「3世代同居の住宅政策」
「3世代同居の住宅政策(2)」
「一億総活躍社会」には含まれないかもしれないですが、
住民票やマイナンバーの旧姓併記を検討しています。
選択的夫婦別姓を認めないで、こんな取ってつけた程度のことで
お茶を濁そうというところはお粗末です。
「住民票の旧姓併記を検討」
女性管理職を30%にする目標は断念です。
女性管理職を増やす努力をあまりしてこなかったですし、
これはこれで無理もないことだと思います。
それでも「女性活躍」の理念に反してもいますし、
長年の数値目標の撤回は、かなり手痛いことだと思います。
「女性管理職30%の目標断念」
安倍政権は保育士の賃金引き上げを打ち出してもいますが、
一律2%というわずかなものです。
そして技能、経験のある保育士に限り、
全産業の女性労働者の平均まで引き上げが認められます。
「保育士給与2%引き上げ案」
「保育士の賃金は女性の平均?」
2%の引き上げは民主党政権時代に合意したのに
いままで放置してきたものを、きゅうに取り上げただけです。
金額的にも保育士の生活を改善するには
「焼け石に水」程度の引き上げでしかないです。
そして賃金のジェンダー格差が大きい日本社会において、
低賃金である女性に合わせようというわけですから、
ジェンダー差別の追認や固定化にもなりかねないです。
家族政策やジェンダー政策は、政権の最初のほうと
比べると劣化したというのが、わたしの印象です。
「女性活躍」なんて言っているけれど信用できないという意見は
最初のころから多かったですが、現在は不信感だけでなく、
個別の政策もお粗末さが目立つようになったと思います。
党内や支持基盤にたくさんいる「家族思想信仰」なる
因習・反動的な家族・ジェンダー観を信奉する人たちに阻まれて、
あまり積極的な政策が打ち出せなくなってきた、
ということもあるのだろうと思います。
>教育
返済の必要のない給付型の奨学金(国際的な意味で
「学生ローン」ではなく「奨学金:)の導入を検討しています。
日本は大学の授業料が高いのに、返済が必要な
「学生ローン」ばかりなので、給付型奨学金は
かねてから望まれてきたものです。
「返済不要の給付型奨学金、自公も提言 参院選にらむ」
「給付型奨学金、成績で判断=馳文科相」
これも実現の可能性はあまり高くなさそうです。
財源の確保や、教育の機会均等の保証という
基礎理念にとぼしいこともあって、
実現したとしても条件付きで限定的なものになりそうです。
>雇用
安倍首相は「同一労働同一賃金」の実現を目指す関連法案の
改正を5月に閣議決定し、目玉政策として掲げています。
2019年度の導入を予定しています。
「同一労働同一賃金、19年度実現へ 政府、3法改正方針」
同一労働同一賃金は、正規と非正規の賃金格差が激しい
日本社会において強く望まれてきたものです。
政権基盤を固めるために、国民一般から支持を得られそうな
野党の政策を取り入れたことになります。
政権はその後も、保育士・介護職員の処遇改善、
同一労働同一賃金、最低賃金「1千円」など、
民進党などが主張してきた政策も次々とのみ込んでいった。
これは今のところそれなりに信用してよさそうです。
年功序列や終身雇用によって男性正社員の安定した賃金を守りながら、
安く使える労働力として非正規雇用を導入してきた
労働環境が、日本企業には深く根を張っています。
同一労働同一賃金を実現しようとすると、
あちこちで壁に当たることは予想されます。
「「同一労働同一賃金」なんて本当にできるのか」
「「同一労働同一賃金」で企業が恐れる「給与差」立証責任」
国民一般がこれら「種まき期」の政策を見てどう思うかです。
政策を評価して安倍首相の思惑通り、政権を支持するでしょうか。
それとも信用できない、もしくはふじゅうぶんと考えて、
評価しない人も結構いるでしょうか。
わたしに言わせると、政権の最初のころのような
はなばなしさはなくなっている、というのが印象です。
とくに家族・ジェンダー政策は「申し訳」程度が多いと思います。
反発するかたも多いですし、直接の対象である女性からの支持は、
あまり得られないことは考えられるでしょう。
これらの政策は自民党がずっと消極的だったり、
反対してきたものが多く、党内には反対する勢力も強いです。
実際、放置してきた政策が多いですし、最近になって
「種まき期」に必要だというので打ち出したものです。
自民党や安部首相のむかしからを知っているかたは、
きゅうに「種」をまき始めても信用できないでしょう。
それでもこの程度でも、経済や国民生活を
重視していると評価する人も結構いそうです。
ジェンダー政策にあまり関係ないところにいる中高年男性は、
ジェンダー政策のお粗末は気にならないと思います。
(それどころか彼らはこの程度でも
「女の権利を認めすぎている」と思うかもしれないです。)
「種まき期」の内容がトーンダウンしてきたと思っている人でも、
「野党が政権を取るよりまし」と思ったり、
「自民党でなけれな政策は実現しないし、この程度でもなにも
実現しないよりまし」と思う人も少なからずいそうです。