民法改正の院内集会について、見てきました。
この院内集会の参加者のひとりにインタビューした
記事があるので、それを見ていきたいと思います。
内容は、自民党の改憲案に沿って憲法24条を改正したら
どうなるか、ということをお話しています。
「憲法改正の論点は9条だけじゃない 結婚や男女平等のあり方にも影響?」
(はてなブックマーク)
昨日の院内集会で話したことに加え、そのあとに追加取材もしていただいたBuzzfeedの渡辺一樹記者による記事が出ました。私のは集会の趣旨的には本筋ではなかった話だったと思うのですが、ポイントを押さえて記事化してくださったことに感謝。https://t.co/KgL4gtKeGJ
— 山口智美 (@yamtom) 2016年5月20日
自民党の改憲案は「両性の合意のみ」から「のみ」が
取り除かれていますが、これはなにをしたいのか、
どういうことになるのか、ということに触れています。
安倍晋三首相や多くの有力政治家との関係が指摘されている
保守派団体「日本会議」は、「のみ」の2文字を削ろうと主張している。
日本会議が販売するブックレット「女子の集まる憲法おしゃべりカフェ」では、
次のような議論がなされている。
・もし、高校生の孫娘が変な男と結婚したいと言い出しても、
「未成年の結婚には親の同意が必要」と民法で決まっているから大丈夫。
・ところが、このルールは「婚姻は、両性の合意のみに
基づいて成立する」とする憲法24条と合わない。
将来、違憲判決が出て、民法が改正されてしまうかもしれない。
・だから、憲法を改正して「のみ」を取ったほうがいい。
「のみ」をなくすのは、やはり結婚に対してふたり以外の
意思の介入を容易にするためであることが考えられます。
家族や親族が結婚に介入できた、かつての「イエ制度」への
回帰を目指したものだということです。
日本会議のブックレットでは未成年者の結婚にお話を限っていますが、
「高校生の孫娘が変な男と結婚したいと言い出」すなんて
そもそも現実的なことではぜんぜんないです。
あたりさわりのないようにするために
未成年者のお話にしたというだけで、すべての年齢の結婚について
同様のことを考えていることが予想されます。
メインブログの5月3日エントリで、次のように書いたのは、
当たっている可能性がさらに高いことになってきました。
「自民改憲草案・両性の合意」
自民党の憲法草案で「のみ」が削られたということは、
結婚するふたり以外の意思の介入を容易にするためと予想できます。
ここには男性の意思優先の結婚や、親や親族の意思が結婚に介入する
余地を作るという、イエ制度への回帰が考えられます。
自民党の改憲草案についての朝日新聞の連載記事では、
「のみ」を削除する意図がはっきりしないとあったのでした。
草案Q&A集にも書いていないことでも、日本会議の発行する
ブックレットにはある程度書く、ということなのでしょう。
「(憲法を考える)自民改憲草案・家族:上 個人より「家族」、消えた2文字」
現行憲法の条文と比べて、2文字、消えている。
「両性の合意のみに基づいて」の「のみ」だ。
草案Q&A集をひもといても、その理由については触れられていない。
いったいどう考えたらいいのだろうか。
結婚にふたり以外の意思が介入することの
なにがとんでもないかは言うまでもないことだと思います。
>山口さんは「婚姻をするかどうかに、当事者2人以外の意思が入ってくることになる」と話す。結婚を2人だけで決められないのは「恐ろしいこと」 / “憲法改正の論点は9条だけじゃない 結婚や男女平等のあり方にも影響?” https://t.co/3O1czZSqxc
— 濁山ディグ太郎 (@DiRRKDiGGLER) 2016年6月22日
朝日新聞の連載記事では、憲法によって自由意志による
結婚が保障されていることが、励みになったお話が出ています。
自由意志による結婚が保障されないことによって、
自分が望む相手との結婚が妨害される「ロミオとジュリエット」のような
前時代的な状況に逆行することになるということです。
だが、義母は大反対し、会ってもくれなかった。
「息子の嫁は私が選ぶ」「中卒は許さない」。
定時制高校に通い、卒業した。
心が折れそうになった渋谷さんを後押ししたのは、夫の一言だ。
「憲法24条を読んでごらん。
僕たちの結婚は、憲法で保障されているんだ。
両親は必ず説得するから心配しないで」
もっと怖いのは望まない相手との結婚をさせられる可能性です。
結婚がふたりのためではなく「イエ」のためだった
「イエ制度」の時代は、「イエ」の存続のために
望まない結婚を強いられることが通常でした。
あと、そもそも男女平等が浸透した社会よりも、家父長制の社会のほうが婚姻率が高いってのは、当たり前だと思うよ。家父長制社会のほうが結婚しろという抑圧がかかるし、場合によっては意に沿わぬ相手と無理やり結婚させられるから。
— 宇野ゆうか (@YuhkaUno) 2015年3月27日
高度経済成長期になっても、女性は経済的自立が難しく、
結婚して夫に養われないと生活が困難だったのでした。
それゆえ生活のために望まない結婚をする女性が多く、
生涯未婚率が2%以下という、驚異的な数字になったのでした。
「非婚・未婚と経済問題」
「未婚率が低かった時代」
その後不況になって、男性が妻を専業主婦にしても、
経済的インセンティブを保障することが難しくなったり、
さらにはまがりなりにも女性が経済的に自立できるようになって
未婚率はどんどん高くなっていくことになります。
高度経済成長期は、法的には自由意志で結婚できても、
経済的事情で望まない結婚をする女性が多かったということです。
経済的事情が後退ないし解消するにしたがって、
望まない結婚をしないですむ女性が増えていったことになります。
とくに女性にとって望まない結婚をさせられることは脅威です。
自民党の改憲草案によって24条が改正されることで、
望まない結婚を強いられる女性がまた出てくるのではないか、
ということも考えられます。
意に沿わぬ相手と無理やり結婚させられるのは、男女共に不利益を被る人が出てくるけど、特に立場の弱い女性の側にとってはより驚異だった。結婚とは必ずしも幸せなものではない。「意に沿わぬ相手と結婚するくらいなら一生独身のほうがマシ」と考える人が多くてもおかしくないね。
— 宇野ゆうか (@YuhkaUno) 2015年3月27日
「意に沿わぬ相手と結婚させられないこと」「結婚しなくても男の経済力に頼らず生きていけること」を女が求めたからこそのフェミニズムなんじゃないのかな。まぁその辺は奴隷解放とか公民権運動とかと同じ構造だよね。
— 宇野ゆうか (@YuhkaUno) 2015年3月27日