2016年06月26日

toujyouka016.jpg ハンガリー・反立憲的新憲法(2)

6月25日エントリの続き。
ハンガリーの反立憲主義的な新憲法についてです。

「3分の2」進む権力集中 2010年ハンガリー 中道右派が大勝 
新たな憲法 個人より共同体」
(全文)
「憲法裁判所の人事も介入」
「「バランス欠く」メディアに罰金」
「個人が義務果たす社会に」
「視点 傍観者ではいられない」

 
>王政への懐古

ハンガリーの新憲法には王政への回帰志向があります。
2012年に施行された新憲法の前文に当たる
「民族の信条」には、この王冠が登場する。
「我々は……民族の統合を体現している聖なる王冠に敬意を払う

また新憲法では国名から「共和国」が取り除かれています。

「ハンガリーで新憲法反対の大規模デモ、首相退陣を要求」

新憲法はハンガリーの正式国名から「共和国」の名称を取り去るとともに、

民主的な政体を嫌い否定し、前時代の権威主義的政体を懐古するのは、
因習・反動的なカチカンを標榜する人たちにありがちです。
国民全体にそれに従うよう要求するところも同様です。
こういう人たちは自分はつねに権力の側にいられる
という思い込みがあるのでしょう。

これは日本でも同様のことがあるのは言うまでもないです。
日本で因習・反動的な人たちは、天皇制に異様なまでに執着します。
「戦後レジームからの脱却」というフレーズが示すように、
現在の民主的体制をものすごく嫌います。
自民党が憲法草案を作るのも、「GHQによる押しつけ」として
現行憲法を否定したいのが、そもそもの動機です。



>司法への介入

ハンガリーの新憲法では、憲法裁判所の権限も縮小されています。

政権はチェック機関である憲法裁判所も
政治のコントロール下に置こうと手をつけはじめる。
野党抜きでも憲法裁判所の裁判官を任命できるよう
憲法を変え、予算や税、財政に関する法律を
裁判所の審査の対象から外してしまった。

裁判所が議会や内閣から独立しているという
「司法権の独立」は、民主主義の基礎である
三権分立のためにとくに重要なことです。
議会が憲法裁判所の人事権を強めたり、裁判所が審査できる法律に
制限ができることで、司法の独立性が損なわれることになるわけです。

「司法権の独立」
「司法権の独立」
「何故、司法権は独立していなければならないの?」


さらには過去に違憲判決が出た内容についても、
憲法を改正して条文に盛り込んで合憲化してもいます。

「違憲の法律の憲法化」という状況も生まれた。
憲法裁判所が家族や宗教に関する法律の規定を
「憲法違反」と判断すると、「これに反発した政権は13年、
法律ではなく憲法のほうを改正し、違憲の規定を憲法に書き込んだ。

日本でも民法改正で違憲判決が出ると、
自民党政権は憲法のほうを改正しようとするのではないか、
という懸念はときどき出ることがありました。

「民法改正・最高裁判決の懸念(2)」

ハンガリーはこの懸念を本当に実行したということです。
家族や宗教に関することは生活への密着感が強いので、
因習・反動的な人たちにとってとくに自分の奉じるカチカンに
反することは受け入れがたいということなのでしょう。


>メディアへの介入

ハンガリーではメディアに対する規制も積極的になっています。
メディアを規制しやすいような組織の再編や人事への介入のほか、
「バランスを欠く」メディアに罰金を課すようにもなっています。

主な内容は、規制機関「国家メディア・情報通信庁」の下にある
「メディア評議会」が、新聞やテレビ、ラジオなどの
報道内容について、1.バランスを欠いている
2.民族、宗教、マイノリティーの尊厳を傷つける--
などと判断した場合、メディアに罰金を科すというもの。

問題は「バランスを欠く」という判断は政権が行なうので、
「政権に都合が悪い=バランスを欠く」になることだ、
ということは言うまでもないことです。

日本でも高市早苗が、政治的な公平性を欠く放送をする
放送局に電波停止を命じる可能性を、言及したことがあります。
ハンガリーはこれを本当に実行したということです。

「高市総務相、電波停止に言及 公平欠ける放送に「判断」」
「高市総務相 「電波停止」発言 個別番組へ干渉? 広がる懸念」


ハンガリー政府によるこうした報道規制に対して、
国内の報道機関は猛反発して、反骨精神を示していることが
せめてもの救いだろうと思います。
それでも政府に批判的な報道を続けるメディアに対して
周波数が割り当てられないとか、広告を減らされる
といった圧力がかかることはあります。

「政府から直接圧力を受けたことはないが、
政府系の広告が明らかに減り、収益に影響している。

日本でも自民党の文化芸術懇話会で、「マスコミを懲らしめるには
広告収入を減らすのがよい」と大西英男が言ったことがありました。
ハンガリーはこれも本当に実行していることになります。

「「マスコミ懲らしめるには…」文化芸術懇話会の主な意見」
「大西英男議員「報道機関を懲らしめる」またやった 再び問題発言」

posted by たんぽぽ at 22:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 法律一般・訴訟 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

はてなブックマーク - ハンガリー・反立憲的新憲法(2) web拍手
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック