朝日新聞の日本会議研究の「家族編」ですが、
6月19日(下)は選択的夫婦別姓についてです。
「日本会議、夫婦別姓に反対 「タテの流れから遮断」」
(はてなブックマーク)
「日本会議研究 下 家族編 別姓反対 「広げた」運動」
この記事は日本会議による「夫婦別姓反対小史」のようになっています。
これを見ていきたいと思います。
結婚した夫婦が、別姓を選ぶことができる「選択的夫婦別姓」。
この20年、男女平等の機運が高まる中、政府が法案を国会に
提出しようとするたびに、日本会議は大規模な反対運動を繰り広げてきた。
はじめに、自民党が下野していた2010年の
日本会議の反対運動のひとつが示されています。
伝統的な家族を重視する日本会議は、2010年9月に事務総局が改訂した冊子で、
夫婦別姓によって親子が別姓になり、「子どもが先祖からつながる
『タテの流れ』から遮断されてしまう」としている。
いまでも結婚によって改姓したほうは遮断されるのですが、
それはまったく度外視しています。
「改姓するのは女」という前提のもと、
男の家だけを意識する発想の典型と言えます。
さらに言えば、結婚改姓するとアイデンティティや
キャリアが遮断されるので、連続性を維持する
必要があるかたには、大きな負担となります。
「家族思想」のイデオロギーしかあたまの中にない人たちには、
現実に起きる不都合なんてまったく眼中にないのでしょう。
日本会議、夫婦別姓に反対 「タテの流れから遮断」:朝日新聞デジタル結婚して姓が変わることも、上の世代の親と姓が変わることだからタテの流れを遮断してるよね???なんで論理矛盾に気づかないのかな?頭おかしいのかな?
2016/06/19 23:25
“夫婦別姓によって親子が別姓になり、「子どもが先祖からつながる『タテの流れ』から遮断されてしまう」としている。”私は結婚して親と別姓になったのでタテの流れを遮断したんですがwww / “日本会議、夫婦別姓に反対 「タテの流れから…” https://t.co/Pq0rCiOR9E
— さっこ@くたびれた人妻 (@sakko_o) 2016年6月19日
日本会議、夫婦別姓に反対 「タテの流れから遮断」:朝日新聞デジタル
- [news]
結婚して改姓したら(旧姓である実家の)親と子が別姓になり「タテの流れから遮断」されるわけだ、日本会議的には。つまり「女三界に家なし」が「伝統」であるということかな
2016/06/20 01:14
「女は人として認めてないので、親子断絶当たり前。姓を存続させたかったら婿養子とってね」ってことですね。 https://t.co/0WEsMdFHOD
— さ〜や☆妖精の庭 (@saya_sugarfairy) 2016年6月20日
>1996年
最初の反対運動は1996年、法制審議会の答申が出て、
本格的に民法改正が国政の課題となったときです。
このときは日本会議は設立されておらず、前身の組織の主導です。
ここでも「別姓夫婦は単なる男女の野合」などという
偏見にまみれた理由にならない主張を展開しています。
最初の反対運動は、法制審議会(法相の諮問機関)が
民法改正案の要綱を出した1996年だった。
「婚姻改姓」を経ない別姓夫婦にとって、
結婚は単なる男女の野合に近くなります――。
日本会議の前身の一つ「日本を守る国民会議」は、
こんなチラシを配り、首相や法相に反対の声を送るように呼びかけた。
「単なる野合」でないことは、現状で法的に不利な状況にある
事実婚の夫婦や通称使用している夫婦を見れば明らかです。
あるいは、夫婦別姓が原則の国際結婚を見てもわかるでしょう。
1996年に選択的夫婦別姓に反対する委員会を設立しています。
例によって組織名に「家族の絆」という語が入っています。
これは戦後民法によって規定された「家族のありかた」を
金科玉条のように守る「家族思想信仰」を維持・強制する
ということであることは、もちろんでしょう。
同じ年、「夫婦別姓に反対し家族の絆を守る国民委員会」も結成された。
朝日新聞が入手した当時の呼びかけ人名簿には、
伊藤哲夫・日本政策研究センター代表、高橋史朗・明星大学特別教授、
百地章・日本大学教授も名を連ねる。
3氏は現在、いずれも日本会議の政策委員だ。
日本政策研究センターは「スウェーデンは夫婦別姓のせいで
離婚が増えた」などという、べたな反フェミ的バッシングを展開した、
かなり「とんでも」なシンクタンクです。
「スウェーデンたたき」
「同棲が多い理由」
高橋史朗氏はご存知「親学」の人です。
因習・反動的な子育てを「伝統的子育て」と称して普及させ、
とくに「発達障害が伝統的子育てで治る」などという
にせ科学的主張を展開することが特徴的です。
この朝日の連載の「上」でよりくわしく取り上げています。
「男女共同参画に親学の人」
「高橋史郎の起用に抗議」
百地章氏はこちらにインタビュー記事があります。
「【参院選】首相ふれぬ改憲……議論リードする「日本会議」、その中枢に迫る」
>2001年
次の記述は2001年、内閣府の世論調査で
選択的夫婦別姓に対する賛成が、初めて反対を上回ったときです。
2001年、国の世論調査で夫婦別姓への賛成が反対を初めて上回り、
再び法案提出の可能性が高まった。日本会議は「日本女性の会」を結成。
事務総長の椛島有三氏は「第二ラウンドの戦い」と位置づけた。
その「戦い」の様子は、日本青年協議会などの機関誌
「祖国と青年」(02年6月号)に掲載された椛島氏の記事に詳しい。
このとき「日本女性の会」を設立することになります。
わざわざ専門の会を作るというところに、
選択的夫婦別姓の実現を阻止するために、
日本会議がいかに力を入れているかがうかがえます。
>2002年
02年までに、日本会議は181万を超える署名を集め、
自民党議員に反対を表明するよう働きかけ、189人の議員署名を集めた。
その結果、「自民党内に45人いた
『別姓推進派』から12人が脱退した」という。
181万の署名というのは、おそらく第154回国会、
衆議院の法務委員会付託、新件番号1900のことだと思います。
反対派が提出した署名は、前にも後にもこれ以外にないので、
該当するものがほかに考えれないからです。
「夫婦別姓制度の導入を図る民法改正反対に関する請願」

この署名の実際の数は54058(!)です。
ここからどうやって181万が出てくるのかと思いますが、
「組織票」をカウントしたのでしょうか?
自分たち反対派こそ多数だと思わせたくて、
数をごまかしたであろうことは想像にがたくないです。
上述の「日本女性の会」が2002年4月17日に
「夫婦別姓に反対する国民の集い」を開いたのですが、
このとき「181万の署名」を根拠に、民法改正に反対する議員を
支援することを呼びかけたのでした。
この数を2けたもさばを読む署名は、日本会議が主催したものだったのですね。
日本女性の会は日本会議の関連団体だということも最近知りました。
署名のことはむかしメインブログで触れたことがあります。
このときは組織的なつながりはぜんぜん知らなかったのでした。
「反対派の抵抗」
「自民党内に45人いた『別姓推進派』」というのは、
2002年7月16日に結成した『例外的に夫婦の別姓を
実現させる会』のことではないかと思います。
当時の野田聖子のサイトを見ると44人となっていますが、
ひとりくらいならあとからの参加もあるでしょうし、
人数は合っていると思います。
「平成14年7月24日 「民法の一部を改正する議員立法案〜例外的夫婦別姓制度」」
提出に先立ち、今月16日に自民党内で
『例外的に夫婦の別姓を実現させる会』を結成し、
そのメンバーの同志議員を中心に今回の議員立法案を提出しました。
『実現させる会』のメンバーは以下の通りです
(7月23日現在44名、順不同・敬称略)。
山中 貞則(最高顧問)、笹川 堯(会長)、河村 建夫(会長代理)、
谷川 和穂、 野中 広務、 中馬 弘毅、 古賀 誠、 久間 章生、
伊藤 公介、 大野 功統、 鈴木 恒夫、 坂井 隆憲、 馳 浩、
上川 陽子、 佐々木知子、 山口 俊一、 浅野 勝人、 七条 明、
浜田 靖一、 奥山 茂彦、 土屋 品子、 奥谷 通、 渡辺 喜美、
大村 秀章、 新藤 義孝、 山本 明彦、 松島みどり、 谷本 龍哉、
小渕 優子、 藤井 基之、 木村 隆秀、 山口 泰明、 中山 成彬、
下村 博文、 高鳥 修、 佐田玄一郎、 横内 正明、 小西 理、
佐藤 勉、 青山 丘、 逢沢 一郎、 水野 賢一、 近藤 基彦、
野田 聖子
この議連は、「家庭裁判所の認可があれば、
夫婦別姓の選択を認められる」という「家裁認可制案」で
実現しようとしていたときに、作られたものです。
「家裁認可制法案(1)」
「12人が脱退した」というのは、わたしはぜんぜん知らなかったです。
朝日の記事で初めて知ったしだいですよ。
離脱する議員も「その程度」なのかと思いますが、
これだけの圧力をかける日本会議の力も相当だと思います。
2001-02年は、わたしがむかしネットで関わった
選択的夫婦別姓の市民団体の活動が、もっともさかんだったときです。
推進派議員の離脱をどう思ったかと思います。
あの市民団体のことですから、離脱のことは知っていて
隠した可能性は、じゅうぶん考えられます。