共同調査に関連して、待機児童問題、保育所の問題に
ついての記事があります。
「(朝日・東大谷口研究室共同調査)保育の基準緩和、各党に開き 待機児童問題」
各政党に対して、待機児童問題を解決するための対策として、
6つの選択肢の中から効果的と思われるものを3つを選んで、
1から3まで優先順位をつけてもらうアンケートを行なっています。
これを見てみたいと思います。
選択肢は以下の6つです。
<選択肢>
(1)保育室の広さや保育士の配置など現行基準を守って新施設を整備
(2)現行基準を緩和して整備したり受け入れを増やしたりする
(3)保育士の給与増額
(4)保育所への民間参入を促す
(5)育児休業延長などを企業に義務付け
(6)3世代同居を促進
もっとも多く選ばれたのは「3.保育士の給与増額」です。
全部の政党が挙げています。
自民党や日本のこころのような右翼政党でも、
保育士の賃金を増やすことは効果的と考えるようです。
(「3つ選べ」ということもあるとは思いますが。)
3番目までに選ばれた項目で、最も多かったのは
「保育士の給与増額」で全体(356人)の8割超。
自民、民進両党の9割超と、公明、共産、社民各党や
生活の党と山本太郎となかまたち、
日本のこころを大切にする党の全員が挙げた。
具体的にどれだけ賃金を引き上げるかになるかになると、
各政党ごとに政策が変わってくるのでした。
安倍政権は17年度から保育士の賃金を月平均6千円、
経験を積んだ人だと月4万円引き上げる方針。
参院選の1人区で共闘する民進、共産、生活、社民の野党4党も、
先の国会で保育士の給与を月5万円増額する法案を提出している。
賃上げの規模や、財源をどう確保するかが焦点だ。
自民党案の賃金引き上げ幅は小さいです。
一律2%(6000円)引き上げ、能力や経験に応じて
全産業の女性労働者の平均(4万円)まで引き上げです。
額が小さくでふじゅうぶんな上、「保育士は女の仕事、
女の賃金は安くてよい」というジェンダー格差を
是認しかねないという批判もあるものです。
「保育士給与2%引き上げ案」
「保育士の賃金は女性の平均?」
民進、共産、生活、社民の「立憲4党」は、
一律5万円引き上げの法案を議員立法で提出しています。
全産業平均並みにするのは11万円引き上げる必要があるので、
まだふじゅうぶんですが、自民党案よりは改善されるし、
ジェンダー格差を助長する要素もないです。
「保育士の賃金増額法案」
「立憲4党」の法案では、財源は公共事業の削減で捻出を考えています。
これは何人もの識者が指摘するところであり、よいだろう思います。
「保育士の待遇改善の財源」
7月3日エントリでご紹介した、駒崎弘樹氏の記事では、
「相続税の課税ベース拡大」「高所得者の配偶者控除撤廃」の
ふたつを提示しています。
資産と高所得者の年収に課税というのは、
ピケティ的な格差是正でもあると思います。
「小泉進次郎さんに伝えたこと」
保育基準についてはほぼ「左右」で分かれています。
基準維持は民進、公明、共産、社民に多く、
基準緩和は自民とおおさか維新に多くなっています。
考え方が分かれたのは、保育室の広さや保育士の配置など保育基準の緩和だ。
自民の6割超、おおさか維新の9割超が「基準を緩和」を
3番目までに選んだが、民進、公明は3割超にとどまった。
一方、民進、公明の6割超と共産のほぼ全員、
社民の全員が「現行基準を守る」を3番目までに選んだ。
自民は4割超だった。
日本の保育基準は欧米の民主主義国と比べると貧弱です。
補助ブログの3月20日エントリで触れましたが、
保育所の面積を見ても日本は他国と比べて狭さが目立ちます。
この現状で、さらに保育所の基準を緩和させるのは、
問題が多く批判も多いことだと思います。
「第2章 海外文献調査からみた保育所の基準」
「保育の質の評価に関する研究」
子ども1人当たりの面積について例を挙げると、
アメリカのワシントン州は4.64u(1〜11ヶ月)、3.25u(1歳以上)、
フランスのイヴィリン県は、総面積が10〜12u、
子ども専用区域が6〜8u、知育室が3〜4u、
ストックホルム市は7.5uであるのに対し、
日本は、わずか乳児室が1.65u、ほふく室が3.3u、
保育室又は遊戯室が1.98uしかない。
また、屋外施設面積は、カリフォルニア州、ワシントン州が6.96u、
フランスのパリ市は6.67u、ドイツのザクセン州は10u、であるのに対し、
日本はわずか3.3uにすぎない。
ほかの選択肢についても各政党の立ち位置を
反映するかのように意見がわかれて、予想通りの感があります。
このほか、民進の約7割、共産の9割超、社民の全員が
「育児休業延長などを企業に義務付け」を3番目までに選び、
自民の約3割、公明の約4割より高かった。
「保育所への民間参入を促す」はおおさか維新の約9割とこころの8割が、
「3世代同居を促進」はこころの9割超と自民の3割超が挙げた。
「育児休業延長などを企業に義務付け」は、
企業の雇用習慣に関わるので、自民党で割合が低くなるのでしょう。
公明党に理解が少ないのがやや意外でしょうか。
「保育所への民間参入を促す」はおおさか維新の割合が
きわめて高いのも「さもありなん」だと思います。
「3世代同居を促進」を上げているのが日本のこころと
自民というのも「いかにも」だと思います。
とくに日本のこころの9割超え、すなわちほぼ全員というのは、
「家族思想信仰」に忠実でわかりやすいと思います。
自民の3割超えというのは意外と少ないと思います。
「信仰」にこだわっている議員はそれくらいということなのか、
「信仰」には合っているけれど待機児童対策としては
さほど効果的ではないとじつはわかっているのか、
それはわからないです。