朝日新聞の「アベノミクスを問う」という特集の
子育て支援についての記事のうち、前のエントリで
見なかったところを見てきたいと思います。
「(2016参院選 アベノミクスを問う:3)
「保育園落ちた」遠い政治 予算、高齢者向けに偏重」
「(2016参院選 アベノミクスを問う:3)
「保育園落ちた」遠い政治 予算、高齢者向けに偏重」(全文)
「進む待機児童対策に懸念も 数だけ確保 質置き去り」
>保育の受け皿
昨年4月の保育の受け皿は約263万人分。
それまでの2年間で約22万人分が増えた。
安倍首相は「政権交代前の2倍のペースで拡大した」と誇ったが、
昨年4月時点の待機児童は5年ぶりに増え、2万3167人だった。
保育所の数は民主党政権時代よりも増えているのですが、
待機児童は5年ぶりに増えたのでした。
安倍首相ははじめ「アベノミクスにより女性の雇用が増えたため、
保育所の需要が増えたから」なんて説明していたけれど、
働く女性の数はむしろ減っていたのでした。
「待機児童が増えた理由」


保育所が増えたのに待機児童がが増えた理由は、
保育士のなり手が少ないからだと考えられます。
保育士は低賃金で待遇が悪いので、人材の確保が難しいことになります。
「保育士が不足する理由」
安倍政権は保育所を建てるという「ハコ」を増やすことに
政策が集中して、保育士の待遇改善にはむしろ不熱心です。
自民党案の保育士の賃金引き上げは一律2%、
能力や経験に応じて4万円までと、小幅となっています。
「保育士の賃金は女性の平均?」
民進、共産、生活、社民の「立憲4党」は、
一律5万円引き上げの法案を議員立法で提出しています。
金額的は保育士の待遇改善にはずっと役立ちそうです。
「保育士の賃金増額法案」
>保育の基準緩和
安倍政権は待機児童の解消のために、保育所の基準の緩和を進めてもいます。
これは7月7日エントリでも少し触れたことです。
17年度末までの「待機児童ゼロ」を掲げる安倍政権は、
保育の受け皿を増やす切り札として基準の緩和を進めている。
4月には企業主導型保育事業を始め、自治体の認可がなくても
企業が主に社員向けの保育所を設置できるようにした。
政府が3月に出した緊急対策では、保育士配置や部屋の面積基準について
国の基準より手厚く設定している自治体に国基準まで緩めるよう求めた。
補助ブログの3月20日エントリでも触れましたが、
保育所の面積に関しては日本は他国と比べて狭さが目立ちます。
この現状で、さらに保育所の基準を緩和させるのは、
問題が多く批判も出てくることになります。
基準緩和には懸念の声も出る。
保育事故の遺族らでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」は16日、
企業主導型に反対する考えを内閣府などに表明。
会員の藤井真希さん(36)は「数だけ確保しようという
間違った方向に進んでいる。質の高い保育は置き去り、
後回しにされている」と訴えた。
保育所を広くできないのは、都市部は過密だからに他ならないです。
それでも欧米の民主主義国と比べて、
ずっと保育所が狭いのはどういうことかと思います。
それだけ保育所の整備をないがしろにしてきた
「つけ」ということなのでしょう。
「保育の質の評価に関する研究」
子ども1人当たりの面積について例を挙げると、
アメリカのワシントン州は4.64u(1〜11ヶ月)、3.25u(1歳以上)、
フランスのイヴィリン県は、総面積が10〜12u、
子ども専用区域が6〜8u、知育室が3〜4u、
ストックホルム市は7.5uであるのに対し、
日本は、わずか乳児室が1.65u、ほふく室が3.3u、
保育室又は遊戯室が1.98uしかない。
また、屋外施設面積は、カリフォルニア州、ワシントン州が6.96u、
フランスのパリ市は6.67u、ドイツのザクセン州は10u、であるのに対し、
日本はわずか3.3uにすぎない。
>男性の育児参加
記事の最後は「子育ては母親」という風潮に関すること、
とくに男性の育児参加についてです。
厚生労働省によると、14年度に民間企業の男性が育休を取得した割合は2.3%で、
女性の86.6%と比べて大きな開きがある。
男性の育休取得率の際立った低さは、前にお話したことがあります。
表には出ていないですが、2013年は2.03%、そして2014年は2.30%です。
増加傾向にあるとはいえ、微々たるものとなっています。
「男性の育児休暇の取得率」

2020年までに男性の育児休暇取得率を13%にするという目標が
少子化社会対策大綱にも盛りこまれていますが、
果たして実現するのかと思います。
「少子化社会対策大綱」
仕事を終えても分刻みで育児と家事をこなさなければならない。
夫(47)の協力はわずかで、両親は遠方で頼れない。
日本の男性が家事をしないのは、OECD加盟国の中でも際立っています。
共働きの家庭でも、男性の家事時間は短いです。
「家事は女の仕事」というジェンダー意識に加えて、
長時間労働のような雇用習慣が手伝っているのでしょう。
「家事をしない日本の男性と家族思想信仰」
6歳以下の子がいる有業男女の平均家事時間。さっきのブログでは国内の地域比較だったが,世界的にみれば「井の中の蛙」。夫の家事分担率は,欧米では4割ほどが普通。 pic.twitter.com/pLZtRiGS0M
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2014年9月28日
「この生活では2人目を考える気持ちにはならない。
国が男性に育休取得を義務付けるなど、
社会全体で子育てをする機運をつくるべきだ」
夫の家事、育児時間が長いほど、ふたり目の出生割合が高くなります。
ひとり子どもを持ったけれど、夫が家事、育児に参加しないので、
とてもふたり目の子どもは持てないと思う人も、結構いるのでしょう。
「夫の家事・育児と第二子」

付記:
いままでブログで取り上げたことの「復習」みたいになりました。