2016年07月18日

toujyouka016.jpg 経済政策と民進党の今後

7月10日の参院選は、野党には復調のきざしは見えたものの、
ふつうの意味では敗北で、有権者の支持をじゅうぶん
回復させたとは言えないのでした。

野党、とくに民進党の支持が回復しない理由は、
今回の選挙に関しても、例によっていろいろと分析されています。
その要因として、ここでは経済政策を挙げたいと思います。
(これも以前からさんざん言われていることですが。)

いまのように「アベノミクス」を全否定しているだけでは、
目立った支持の回復はおそらくないでしょう。

 
失業率の低下など「アベノミクス」が一定の成果を出していて、
それゆえ安倍政権に不満は多くても、民主党政権のころよりはましだと、
多くのかたが思っているのだろうと思います。
それで反安倍政権の人が、「アベノミクス」のネガティブな部分を
いくら強調したところで、理解が広まらないものと思います。

「【第75回】「リベラルはどこがダメか」を検証する」
安倍政権は、安保政策や原発政策は大して支持されていないけれど、
他の政党より景気の先行きに希望がもてるから良しとされているのでしょう。
「庶民には景気の実感がない」と野党のみなさんがいくら叫ぼうが、
また民主党政権のころまでのような不況に戻るのは
まっぴらごめんというのが、多くの有権者の実感なのだと思います

民進党など立憲4党が掲げるスローガンは、
「アベノミクス」否定ではなく、「アベノミクス」のうち
実効性のある部分は評価した上で、「安倍政権よりずっと
よい景気を実現しますよ」ということになるでしょう。

有権者は長引く不況の中で「改革」に痛めつけられ、
もう不況はこりごりと思っている。
だとすれば、〈左派・リベラル派の野党がまず掲げるべき
経済政策のスローガンは、「安倍さんよりもっと好況を実現します!」
ということ以外にありません。
景気拡大に後ろ向きのことを言ったら自殺行為になります〉


松尾匡氏という経済学者が、『この経済政策が民主主義を救う』という
著書でこのあたりについて、かなり書いています。
「安倍政権に勝てる対案」というそのままの副題も付いていて、
まさに民進党や左派・リベラルを意識したものです。
次のように著書を自分で紹介する記事も書いています。

「この経済政策が民主主義を救う―― 安倍政権に勝てる対案 松尾匡 / 経済学」

この記事は2016年1月で、参院選の半年前のものです。
それでもこの記事で述べているような主張は、
当の民進党や左派・リベラルには、あまり顧みられなかった感じです。


「アベノミクス」のうち、金融緩和・量的緩和と財政出動の
組み合わせの効果は認める必要があります。
金融緩和によってインフレを起こし、企業活動を活発にさせて雇用を増やす、
経済成長をうながして税収を増やして財源を確保する、
これらは国際的にもスタンダードな経済政策として定着しているものです。

このような金融安定化政策は、欧米の民主主義国の
左派政党、リベラル政党も基本原則として掲げているものです。
国際的に著名な経済学者も「アベノミクス」のうち、
金融緩和・量的緩和と財政出動の組み合わせは評価しています。

http://synodos.jp/economy/15989/2
EUの共産党などの集まりである欧州左翼党も、
スペインで大躍進中の新興左翼政党のポデモスも、
ギリシャで総選挙に勝って政権についている急進左翼連合も、
EUの労働組合の集まりである欧州労連も、みんな同じ主張を掲げています
世界の名うての大物左派・リベラル派論客が、
「アベノミクス」を高く評価するような発言をしていました。
アメリカのリベラル派ノーベル賞経済学者の
ポール・クルーグマンさんやジョセフ・スティグリッツさん、
インド出身のノーベル賞経済学者アマルティア・センさん、
フランスの人口学者エマニュエル・トッドさん。
『21世紀の資本』(みすず書房、2014年)が
ベストセラーになったトマ・ピケティさんも、「安倍政権と日銀が
物価上昇を起こそうという姿勢は正しい」と言っています。

日本の民進党や左翼・リベラルはそれでも相変わらず
金融緩和や量的緩和に背を向けているということです。
彼らは「お金をあるところから取ってくる」という発想はあっても、
「ないから新しく作る」という発想には、なかなかならないようです。


なぜ民進党や左派・リベラルはかくも金融安定化政策を
理解しようとしないのかと思います。
民進党の議員や支持者でも、いまだに緊縮財政主義や
財政再建主義を主張してはばからないかたは多いくらいです。

「金融安定化政策と民主党」
「民主党代表選・経済政策」

前に左派やリベラルにも金融安定化政策は必要だという
経済学者の松尾匡氏の記事を、このブログで紹介したことがありました。
この記事を見たとある「左派」が、理解する姿勢にとぼしい、
みょうに冷笑的なエントリを書いてもいたのでした。
これと同様の意識の左派やリベラルも少なくなさそうに思います。

「とある左派の経済政策観?」


バブル時代にインフレを起こしたトラウマが残っているとか、
財務省の影響もあって財政再建を「正義」と思い込んでいるとか、
55年体制時代の名残りで、経済成長を「悪」と考えるとか、
わたしもいろいろと考察したことがあります。
こうした経済政策に対する無理解もあるのでしょう。

「経済政策と民主党の支持」
「金融緩和アレルギーの系譜」
「日本リベラルと経済政策」
「財務省の緊縮財政の目的」

それ以前に「安倍政権と同じことを主張したくない」ことが
あるのではないかという気が、わたしにはしてきています。
これは安倍政権と同じ主張をしていては、差がつかなくて
支持を得られないと考えることもあるでしょう。

ほかにも「安倍のやることだからきっとばかげていてうさんくさい」
という先入観があるのではないかとも思います。
反安倍の人たちの一部に見られる、「アベノミクス」に対する
異様に冷淡な態度は、こうした先入観もありそうです。


金融安定化政策を主張する経済学者の中に、
安倍政権に異様にすり寄って、安全保障関連法案や
歴史修正主義にまで接近しかねないものもいるということも、
左派やリベラルの不評を買うもとになっていそうです。

金融安定化政策を主張する一部の経済学者が
みょうに安倍政権にすり寄るのは、これまで自分たちの居場所が
なかったことも大きいと思うので、一概に彼ら経済学者のせいとは
言えない部分もありそうではありますが。

「安倍のやることだから信用できない」とか
「リフレ派の言うことだから信用できない」とか、
「属人的議論」で判断するかたに対しては、
どうやったら理解されるのかは、わたしにはわからないです。


安倍政権と同じ主張をしていては差がつかないと
心配するかたに対しては、いくらでも対案を出す余地はあります。
金融緩和で作り出したお金を具体的にどこで使うか、
財政出動の中身を、よりリベラル色の強いものにすることです。
さきに挙げた著名な外国の経済学者も、
「アベノミクス」の財政出動の中身までは評価していないです。

具体的にどこにお金を使えばよいかについても、
安倍政権は公共事業に偏っているとか、
正規・非正規の賃金格差を是正して、女性や若年層の消費を活発にしろとか、
今後必要性の高まる介護や保育士の待遇を改善しろとか、
家族政策こそ成長戦略とか、たくさん議論されているわけです。

「財政政策・福祉と公共事業」
「金融緩和・雇用の質と賃金」
「日本の非正規雇用はひどい」
「安倍政権・経済効果が薄い理由」
「子育て支援は成長戦略」

ほかにも大学授業料の無償化や、給付型奨学金の充実もあるでしょう。
(なんなら「福祉国家の4K」を全部復活させることを目標にしてもいい。)
安倍政権の経済政策と差をつける余地はいくらでもあると思います。

posted by たんぽぽ at 23:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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