要因のひとつとして、安倍首相の選挙戦略があるという指摘です。
「【参院選】改憲を封印した「リベラル」な自民 争点作れなかった民進」
(はてなブックマーク)
安倍首相は争点として憲法を封印して、経済や社会保障のことを
ずっと話題にしてきたということです。
この戦略はうまくいったと言えます。
選挙期間中、安倍首相の演説パターンは決まっている。
アベノミクスの成果をいくつかのデータとともに示す。
ヒートアップした安倍首相は野党を責めるが、憲法改正には言及しない。
この日も「憲法」という言葉すら使わず、マイクを置いた。
これは「種まき期」と「収穫期」のふたつの顔を交互に使う
安倍首相のやりかたを考えれば、当然予想できることです。
選挙前ですから「種まき期」で、国民一般の支持を得るために、
国民の支持を得られそうな政策を前面に出すことになります。
「安倍政権のふたつの顔」
国民から批判の強い政策は「種まき期」のときは引っ込めます。
よって経済や社会保障を前面に出して、憲法のことは封印する
という選挙戦略になるわけです。
何度も同じ手を使って、またやられたのかと思うところですが、
この方法は毎回うまくいくのは事実です。
野党としては「安倍首相はまたふたつの顔の使いわけをする、
そしてそれにつられる有権者は一定数いる」という前提で、
対処せざるをえないことになります。
ほかに安部政権はリベラルな議員が取り組んできた課題も取り入れて、
自民党の主張は「リベラル」になったという指摘があります。
安全保障政策や女性活用について語り、
「日本中から魅力的で輝く女性が集まっている。
こっちはかーっと輝いている、こっちはぴかぴか」と
聴衆に語りかけ、笑いを誘う。
「子供の貧困を解消したい。給食費も払えない子供がいる。これは政治の責任だ」
「若者の所得が低いことが、結婚や出産を遅らせる原因になっている。
非正規の若者賃金をあげる。同一賃金、同一労働を進めていく」
貧困の解消、格差の是正、非正規雇用……。
これまで野党、とりわけリベラル派に分類される議員が熱心に
取り組んできた社会問題に言及し、彼らの主張も取り入れる。
いち早く、国民の関心が高い消費税増税延期を決断し、
とりわけ安倍政権のもとで弱いと指摘され続けてきた再分配政策、
労働問題にも積極的に言及することで、争点の無効化に成功した。
安倍政権なんて、もともと家族やジェンダーに関しては
因習・反動的で、選択的夫婦別姓も実現できないし、
女性の権利に反対した実績のある女性閣僚ばかり集めています。
保育士の給料も条件付きで女性の平均までの引き上げです。
安倍政権の「女性活用」はそもそもが経済のためであり、
女性を行動の主体として見ていないと考えられます。
「母乳強制、DV擁護、中絶禁止…安倍内閣・女性閣僚の「反女性」発言集」
「保育士の賃金は女性の平均?」
「行動の主体と政策の対象」
格差や雇用問題に関しても、自民党政権はひとり親世帯の貧困に
ずっと無関心だったし、既婚男性優遇の賃金体系や雇用体系を
作り出し温存してきたのも自民党政権です。
同一労働同一賃金なんて、それこそ「口先だけ」で、
本当に実現するのか懐疑する意見もいくつもあります。
「「同一労働同一賃金」なんて本当にできるのか」
「「同一労働同一賃金」で企業が恐れる「給与差」立証責任」
安倍政権が「リベラル」な政策を訴えたところで、
「なにを取ってつけたように」とか、
「選挙対策で心にもないことを言っているのだろう」と、
わたしやこれをご覧になっているかたなら、思うところでしょう。
それでもふだんジェンダーや格差、雇用問題に関わっていない
一般の有権者が相手であれば、「自民党はジェンダー問題や
再分配問題に積極的になっている」と思わせるのに、
じゅうぶんなのだろうと思います。
かくして安倍首相の側から憲法は争点から隠され、
社会保障や経済でも「お株」を取られることになります。
そこへもってきて、野党、とくに民進党は批判対象が
「アベ政治」という漠然としたものになったことは、
その主張をさらに霞ませることになります。
「アベ政治」とは具体的にはなんなのか、
訊かれたら答えられる程度にしておく必要はあるでしょう。
有権者の支持や関心が野党、民進党に集まらなかったのは、
野党の主張が不明瞭だったということです。
では、止めてほしい「アベ政治」とは何を指すのか。
私の質問に対し、岡田代表は一瞬、間を空けてこう答えた。
「まぁ、それは……、人によっていろいろあると思いますので
簡単には言えませんけど、私は国民に不正直な政治だと思います。
憲法も争点から隠す。党首討論もやらない。一番の問題だと思います」
結局、何を指しているのか、よくわからない。空虚な言葉に感じる。
今後はどうしたらよいか、こういうのは有権者の資質や
メディアの報道姿勢もあるので、一概には言えないですが、
野党が直接的にできることは、やはり主張を明確にして、
有権者に訴えるものにすることだと思います。
主要な主張を明確にすることで、一般有権者やメディアからも
注目されるようになり、憲法その他の争点も
聞いてもらえるということではないかと思います。
メインの主張は、やはり経済政策がよいと思います。
国民の関心が強く、また「アベノミクス」の対案を提示することで、
安倍政権と対抗する際に、もっともインパクトがあるからです。
民進党に別のマクロ経済政策があれば、まだ対抗軸が打ち出せたかもしれない。
経済政策の中身はどうしたらよいかもさんざん議論されています。
金融緩和アレルギーや緊縮財政主義からは脱却する必要があります。
「経済政策と民進党の今後」
「野党のために・経済政策の提示」
お大事になさってくださいね。