2016年08月08日

toujyouka016.jpg 結婚・ジェンダーと雇用問題

日本は家族問題やジェンダー問題と労働問題が、
とくに強く結びついているという指摘です。
わたしのブログをご覧になるかたは、常識的にご存知と思いますが、
改めて指摘しておくことはよいでしょう。

「非正規雇用の待遇 性別と働き方にジェンダーバイアス」
(はてなブックマーク)

性別と働き方の関連性が日本は特に強いことを、
岩上真珠氏の論文は海外との比較によって明らかにしている。
韓国やイタリアは性別規範の強い国として有名だが、
これらと比べても日本は性別と雇用形態の結びつきが強い。
男性は未婚、女性は既婚に非正規雇用が多い
といったように婚姻と雇用形態の結びつきも強い。

 
日本で雇用とジェンダーやマリッジステートが強く結び付くのは、
高度経済成長期に広まった家族観とジェンダー観が原因でしょう。
企業利益のために「男性従業員の生産性向上のために、
専業主婦の妻に家庭のことを任せたほうがよい」という
家族とジェンダー観を定着させたことによります。

女性の管理職登用を阻む大きな原因である「長時間労働」も、
「家庭のことは専業主婦の妻に任せて、自分は会社に
専念できる既婚男性」中心の雇用環境が定着しているためです。

「女性管理職と長時間労働」
「WLBと女性管理職の割合」

このようなジェンダー役割は、どこの国にもあるのですが、
なぜ日本はとりわけ強いのかという問題があります。
記事ではイタリアと韓国が引き合いに出されていて、
これら2国はジェンダーに関して因習的であることは、
多くのかたが認めることだと思います。
日本の因習の強さはそれ以上ということです。

日本の場合、「夫が働き妻が専業主婦」という役割分担が、
「家族思想信仰」と呼べる宗教のようになっているからだと思います。
高度経済成長期の成功体験がかかる「家族思想信仰」を
強固なものとし、既得権益層として現在にいたるまでに、
社会の中で支配的な立場にあるということです。


日本の雇用が既婚男性中心であることをとてもよく示すのは、
ジェンダーとマリッジステート別の平均年収だと思います。
これは正社員に限ったデータですから、このほかにさらに
低年収が多いであろう、非正規雇用があるわけです。

「男は結婚で年収が増える」



雇用とジェンダーやマリッジステートが強く結びついていることを
示すほかの事例として、女性は結婚すると結婚前の仕事を
続けられない人が多いこと、出産とともにパートに回す事業主が多いこと、
女性は結婚すると年収が減ることなどがあります。

「子を持つと仕事をやめる」
「出産でパートに回される」
「女は結婚で年収が減る」

結婚前の仕事を続ける女性の割合

https://twitter.com/tmaita77/status/419665311353143297




記事中で指摘される「男性は未婚、女性は既婚に非正規雇用が多い」
というのは、次の調査で示すことができます。
男性の未婚率は「非正規雇用>正規雇用」ですが、
女性の未婚率は「正規雇用>非正規雇用」となっています。

「就労形態と未婚率の関係」


男性は生活の不安定な非正規雇用は結婚の機会が少ないことと、
女性は結婚すると非正規に回されることが多いことの反映でしょう。



男性に非正規雇用が増えてから、はじめて非正規雇用が
社会問題となり出したことも、よく指摘されることです。

アルバイトはもともと学生の働き方であったが、
フリーターが増えても正社員の賃金が低い若年期はあまり問題にならなかった。
しかし、年齢を重ねてなお低賃金に留まる年長フリーターが増え、
若い男性の「派遣切り」が社会的関心を集めたことを機に
非正規雇用は政策的な問題となった。

主婦パートの低賃金・不安定雇用が問題にならないのも
男性の年長フリーターや派遣切りが問題になるのも、
ともにジェンダー・バイアスに満ちた話なのだ。

パートなどの非正規雇用が「主婦の働きかた」だったときは、
問題にならなかったのでした。

「非正規雇用と女性の問題」


問題にならないのは、「夫が働き妻が専業主婦」という
家族・ジェンダー観を信仰していたこともあるでしょう。
この信仰のもとでは、女性は専業主婦でいることが本来なので、
家計の補助的なパートで働くことが当然とされて、
それが社会問題にならないことになります。

55年体制時代は、専業主婦の妻を養うだけの
経済力が多くの男性にあったので、経済的に破綻しなかったことも
問題化しない理由として大きかったと思います。

男性に非正規雇用が増えて社会問題になり出したのは、
「夫が働き妻が専業主婦」という信仰に抵触することもありそうです。
この信仰のもとでは男性は家計を支える必要があるので、
家計を支えられない経済力しか持たない男性が
増えたことが「社会問題」となるということです。

posted by たんぽぽ at 22:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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