2016年09月05日

toujyouka016.jpg 世帯数の年次推移・核家族(2)

9月4日エントリの続き。

「国民基礎生活調査」の2013年の資料を見ると、
「核家族」のうち「夫婦のみ」「夫婦と未婚の子ども」
「ひとり親世帯」の3つのタイプにわけた推移が出ています。
これを見てみることにします。

「国民基礎生活調査(平成25年)の結果から グラフでみる世帯の状況」

 
世帯構造別にみた世帯数の構成割合の年次推移

「夫婦のみ」の割合は1975年の11.8%から2013年の23.2%、
「ひとり親世帯」の割合は同じく4.2%から7.2%と、
約40年間のあいだにだんだんと増えています。
「夫婦と未婚の子ども」の世帯の割合は、
42.7%から29.7%へと10ポイント以上減っています。

「ひとり親世帯」の増加より「夫婦のみ」の増加が大きいですし、
さらに「単独世帯」も増えていますから、
子どものいる世帯は全体で減っていることになります。
これは出生率が下がって子どもの数が減ってきて、
子どもを持つ家庭が減ったこともあるのでしょう。

ひとり親世帯が増えているのは、離婚率の増加も影響していると思います。
男性が結婚で女性に与える経済的インセンティブが減ってきたので、
男性と結婚生活を続ける女性が減った、ということだろうと思います。
賃金格差など、ひとり親世帯が置かれている状況を考えると、
離婚して子どもを持つ女性がひとりになったときの
経済的自立や生活のしやすさの可能性はほとんどなさそうです。

「若年女性の貧困の深刻(2)」
「ひとり親の子どもの貧困率」
「シングルマザーの実像」


1975年は核家族の4分の3近くが「夫婦と子ども」だったのでした。
「核家族=夫婦と子どもの家庭」と言ってよかったのでしょう。
それくらい家庭に子どもがいるのがあたりまえだったということです。

そして「夫婦と子どもの家庭」は世帯全体の4割以上で
すべてのタイプの世帯の中で最多数派です。
「どこの家庭も夫が働き妻が専業主婦で子どもがいる」という、
「家族思想信仰」はそれなりに現実味があったのでしょう。


これは「国民基礎生活調査」なので、前のエントリでご紹介した、
最初のエントリに出ている図と同じ調査と思います。
よって単純に核家族の世帯数と割合をかけ算して、
3つのタイプの核家族の世帯数が計算できることになります。

核家族の世帯数と割合

「夫婦と子どものみ」の世帯は数の上では、1970年代から現在まで
1500万世帯前後で、ほとんど増減はないことになります。
「核家族」のうち半世紀のあいだに増え続けたのは
ほとんど「夫婦のみ」と「ひとり親世帯」だけになります。
これにともなって相対的に「夫婦と子どものみ」の
世帯の割合が下がった、ということになります。

ほかのタイプの世帯数が増えたのに、「夫婦と子どものみ」の世帯数が
増えなかったのだから、相対的に子どものいない世帯が増えたのであり、
やはり出生率低下の影響が出ていると言うことはできると思います。


>核家族化と福祉

日本では家族依存型の福祉は、21世紀の現在は限界に達していて、
公的なサポートを増やす必要があることは、繰り返し言われています。

「誰が最初の子の世話をするか?」
「育児も介護も家族が背負う、日本の福祉はもう限界」

昔の家族は、消費のみならず生産(家業)、
子育て、介護など、多くの機能を担っていた。
ピラミッド型の人口構成で、数世代が同居する大家族が
多かった時代では、それも可能だった。
しかし現在、家族をめぐる状況は大きく変化した。
かつてのように、様々な機能を家族が一手に担うことは困難になっている。
児童保育や高齢者介護など、日本の福祉は家族(私)依存型の性格が強い。
しかしこれ以上、家族に負担を強いることには無理がある。
家族依存型の福祉が限界に達していることを認識し、
公的サポートを増やすことを本気で考えなければならない段階に日本は来ている。


高度経済成長期や1970年代は「家族依存型福祉」で
問題がなかったかというと、わたしはあまりそう思わないです。
そのころから問題だったのではないかとおもいます。
1970年ごろも、保育を親に頼れない「夫婦と子どものみ」の核家族は、
世帯数だけ見ると現在とさほど変わらないことがあります。

「家族依存型福祉」の「家族」とは、専業主婦の妻だと思います。
「子どもは母親がみる」「年老いた親は嫁がみる」です。
1960-70年ごろは、女性が経済的に自立して生きる余地が少なく、
男性と結婚して養われないと生きていけなかったのでした。
それで保育や介護の役を担わされても文句が言えず、
表面的に不満が抑えられたのではないかと想像します。

「非婚・未婚と経済問題」
「未婚率が低かった時代」

経済状態が変化して、男性が結婚によって女性に与える
経済的インセンティブがなくなり、女性がまがりなりにも
自立できるようになって、男性と結婚する必要性が薄くなってきた、
それにともなって、それまで抑え込まれた不満が
表に出るようになったということではないかと思います。

posted by たんぽぽ at 23:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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