世帯の種類別の世帯数の年次推移についてです。
今度は「単独世帯」と「三世代世帯」を見てみたいと思います。
「核家族と一人身世帯が増加中…種類別世帯数の推移を探る」
「厚生白書(平成10年版) 第1部 少子社会を考える−
子どもを産み育てることに「夢」を持てる社会を−」
「平成7年度 国民生活白書(要旨)」
これを見ると「単独世帯」は1968年以降ずっと増え続けています。
とくにバブルが始まった1985年ごろから、
増加のペースが早くなっています。
1968年は569万世帯でしたが、1996年に1000万世帯を超え、
2015年は1352万世帯まで増えています。
「三世代世帯」は1985年ごろまでは、550万世帯程度で
ほぼ一定でしたが、1985年以降減少を始めています。
2015年には326万世帯まで減っています。
次のグラフを見ると、このあたりはもっとはっきりすると思います。
1985年ごろから単独世帯の増加が早まり、
三世代世帯が減り始める様子がわかります。
バブルの時代は、日本の家族のありかたが変わる
ひとつの契機だったと言えそうです。
9月4日エントリでも増えましたが、
「戦後になって核家族化が進んだ」というのは、
1960-70年代は核家族がもっとも増えかたが大きいことが
目立っていることによるのでしょう。
この時代は単独世帯も少ししか増えなかったのでした。
1960-70年代は未婚率が低く「国民皆結婚」の時代でした。
独り暮らしというのは、親元を離れてから結婚するまでの
一時的な家族形態、という感覚だったのかもしれないです。
それで単独世帯はあまり増えなかったものと思います。
「非婚・未婚と経済問題」
「未婚率が低かった時代」
バブルの時代から、単独世帯と核家族が
ほぼ同じペースで増えるようになります。
ちょうどこの時代から生涯未婚率が高まりだしたのでした。
「年齢別未婚率の推移」
経済事情の変化で、男性が女性を専業主婦にして
養えなくなったことや、ジェンダー観の変化で、
女性が望まない結婚に甘んじなくなったことがあるのでしょう。
バブルの時代に三世代世帯が減り始めたのも、
経済力が高まったことが大きいと思います。
三世代世帯は、それまで生活してきた環境がまったく異なる
配偶者の両親と同居するので、心理的負担が大きくなります。
「3世代同居の住宅政策」
「3世代同居の住宅政策(2)」
家庭のあり方というのは、人それぞれなので、配偶者でも違うことがある。姑舅なら尚更です。
— 斗比主閲子 (@topisyu) 2015年9月25日
結婚したからいきなり良い家族になれるわけじゃない。どのような家族になりたいか、ある程度理念が共有された個々人が努力して、お互いが理想とする家族関係を構築しようとして、徐々に出来上がっていく。
同居する前には、お互い、どこまでエゴがぶつかり合うのか、それは調整できるのか、考えた方がいい。
— 斗比主閲子 (@topisyu) 2015年9月25日
無理そうなら、二世帯にしない。二世帯にしても可能な限りキッチンやお風呂や玄関を別にする。
相手が自分を分かってくれるとは期待しない。お互い違う人間だと認識してからが本番。
経済力の向上によって、一般市民の生活水準が高くなると、
心理的負担の大きい三世代同居をしないですむかたが増えてきた、
それで三世代世帯が減り始めたものと思います。
一般に経済力がふじゅうぶんで、市民一般の暮らしが貧しいと、
大家族が多くなりがちです。
貧しいゆえに大勢で寄り添わないと、生きていけないからです。
「危機と貧困が作る大家族」
「曽野綾子氏の言い分について」
日本だって1950年代までは世帯構成員数は平均5人以上だったのである。
核家族になったのはつい最近のことであり、日本の伝統社会は大家族であった。
曽野氏のような保守派が回帰したいであろう、「かつての日本社会」である。
黒人社会を構成員数で特別視する根拠はどこにもない。
貧困に喘ぎ、小児死亡数が多い国では
人種とか文化と無関係に大家族になるのは当然だ。
付記:
経済企画庁の「平成7年度 国民生活白書」には、
戦前の1920年のデータが出ています。
「拡大家族」「その他の親族世帯」(棒グラフの白い部分)で
もっとも多いのは三世代世帯でしょうから、戦前や戦後まもなくは、
三世代世帯がいかに多かったかがわかります。
「平成7年度 国民生活白書(要旨)」
これに対して単独世帯は、戦前や戦後まもなくは
ほとんどなく「希少価値」のレベルです。
かつての日本は、それだけ大人数で身を寄せ合わないと
生きていけない、貧しい社会だったということです。
高度経済成長による経済の向上によって核家族化が進み、
さらにバブルの時代に単独世帯が増え始めたことになります。
日本社会は経済発展によって2回、
家族の構成人数を減らしたということだと言えます。