というシミュレーションをした記事があります。
結論は、これをご覧の多くのかたは予想していると思いますが、
ちょっとありえないくらいの高収入でないと難しいです。
「日本という国で、子供2人を育てる適正年収をレポート」
(はてなブックマーク)
住宅金融支援機構が提供する「資金計画シミュレーション」
という、アプリケーションを使っています。
住宅ローンを組むことを考えている人のためのサイトです。
シミュレーションの条件は、詳しくは記事をご覧いただくとして、
子どもはふたりいて、ひとりが私立理系、
もうひとりが私立文系に進学するとしています。
奨学金はいっさい受けないとしています。
長男が私立理系大学へ進学すべく東京へ
長女は私立文系大学へ進学すべく大阪へ
本人に関しては、男性が主たる家計を支えていて、
以下のようにかなり理想的な労働条件としています。
妻はパートで家計を支えているとします。
年収上昇率は一般的と言われる1%が30年間継続
退職金は1000万円
年金額は現行の支給平均額
ほかの暮らしぶりとして、一般的な住宅ローンを組んで、
老後はふつうに暮らせるだけの貯蓄ができるとしています。
年収の5倍程度の住宅ローンを完済する
子供2人を奨学金を借りることなく大学を卒業させる
必要とされる老後資金3000万円が貯蓄できる
ようは「夫が働き妻が専業主婦で子どもはふたり」という
高度経済成長期以来の「理想の家族」です。
これは多くの人が「ふつうの暮らし」と意識するものだろうと思います。
結果は以下の図を見れば一目瞭然です。
男性が30歳で年収550万円だと、すでに大きな赤字となり、
年収は不足していることがわかります。
30歳のときの年収が650万円でようやく、
このような暮らしができることになります。
【分析その1】30歳で年収550万円のケース

【分析その2】30歳で年収650万円のケース

30歳で年収が650万円というのはかなり高収入です。
上述のサイトにも出ていますが、DODAのサイトを見ると
30歳男性の年収分布は次のようになっています。
平均は400万円、年収650万円以上は5%程度です。
一握りの裕福層と言わざるを得ない収入ということです。
「平均年収/生涯賃金 > 年齢別 > 30代」

前述のように、このシミュレーションは、
年収の上昇率や退職金、年金の条件が理想的です。
今後経済が後退して年収が上がらなくなったり、
少子高齢化で年金の受給額が減ることがあれば、
必要な年収はさらに高額ということになります。
『クレヨンしんちゃん』の野上ひろしは、
30代で子どもがふたりいて、マイカーがあって
住宅ローンを組んでマイホームを持っているという、
このシミュレーションに近い暮らしをしています。
野上ひろしの年収は650万円程度と推測するかたもいますが、
本当にそれくらいと考えられます。
作品では「平凡なしがない庶民」と描かれていますが、
実態は庶民から逸脱した裕福層ということです。
「「信仰としての家族思想(2)」
「野原ひろしはハイスペックな係長!年収600万円以上で家持ち車持ち」
かつての野原ひろし=子持ちでマイホームとマイカー持ってる
— KAKERU (@BARKAKERU) 2014年12月16日
出世の目が出ないショボイおやじ
今の野原ひろし=子持ちでマイホームとマイカー持ってる
ちゃんと職を持った立派なお父さん。勝ち組
この20年
一体どれほどの経済的損失が発生したのかがうかがわれる。
「日本では子どもを持つとお金がかかる」ということを
改めて確認したと言えるでしょう。
経済的事情で子どもを持たない人が増えるのも
ごもっともということになると思います。
「子ども増やさない本音」

「妻が専業主婦」というのも、現在の経済事情では
難しいということも、改めて示されたと思います。
夫婦共稼ぎでなければ家計を支えられなくても当然、
共稼ぎの割合が高くなり続けるのもごもっともということです。
子どもを持って大学まで入れるならなおさらです。
「共稼ぎと専業主婦の推移」
「増える共働き・減る専業主婦…共働き世帯の増え方をグラフ化してみる」

シミュレーションがあらためてよく示しているのは、
大学教育にやたらお金がかかるということです。
子どもが大学に入ったことによって、
年収550万のケースは赤字になっているし、
年収650万のケースでも大きく貯金を減らしています。
これはとりもなおさず日本は大学教育に対する
公的支出が少ないことが原因です。
学費が高騰を続けて異様に高く、それでいて給付の奨学金がない
OECD加盟国唯一の国であることの反映です。
「学費は高いわ援助はないわ・・・日本の高等教育@OECD」
「私の社会保障論 奨学金という名のローン=中央大教授・山田昌弘」

社会でお偉いポストについてる人が「俺らの頃は大学の授業料なんか自分で稼いだもんだ」と言い出したときのためのグラフを置いときますね。60歳のおっさんが大学時代の学費は物価も考慮すると現在の8万円です。月に7千円稼いだと自慢してるのです。 pic.twitter.com/mPa5KGhEsU
— 小迎ちゃんパパ18歳 (@nakamukae) 2014年10月16日
高等教育への公的助成総額のうち,家計対象の援助費目の割合。日本は3割くらいで平均よりは高いけど,そのほぼ全てが「学生ローン」じゃん。日本では奨学金といわれているけど,国際統計では「ローン」にしっかり直されている。 pic.twitter.com/raNvm67mLs
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2014年1月5日
シミュレーションでは子どもが大学に入っても
奨学金を受けないことを前提にしています。
奨学金がないとなかなか大学生活を送れないことも明らかです。
利子が高いとわかっていても、奨学金を借りざるをえず、
大学卒業後返済が負担になるかたが多いのも、
ごもっともということになるでしょう。
年収550万のケースでも赤字になるくらいです。
一般的な年収で暮らしをしている庶民にとっては、
子どもを大学に入れるための経済的ハードルは
かなり高いと言わざるを得ないです。
8月18日のNHKの番組で、進学を断念した
母子家庭の高校生が登場したのでした。
貧困層の子にとって大学進学はいっそう厳しく、
あきらめる子が多くても無理もないことがわかります。
「子どもの貧困とバッシング」
「子どもの貧困とバッシング(2)」
(貧困バッシングに興じる人は、ランチ1000円が贅沢とか
叩いていましたが、その程度の目先の「倹約」で
なんとかなるようなレベルではないでしょう。)