2016年10月10日

toujyouka016.jpg 子どもふたりの適正年収

日本で子どもふたりを育てると、必要な年収はいくらか
というシミュレーションをした記事があります。
結論は、これをご覧の多くのかたは予想していると思いますが、
ちょっとありえないくらいの高収入でないと難しいです。

「日本という国で、子供2人を育てる適正年収をレポート」
(はてなブックマーク)

住宅金融支援機構が提供する「資金計画シミュレーション」
という、アプリケーションを使っています。
住宅ローンを組むことを考えている人のためのサイトです。

 
シミュレーションの条件は、詳しくは記事をご覧いただくとして、
子どもはふたりいて、ひとりが私立理系、
もうひとりが私立文系に進学するとしています。
奨学金はいっさい受けないとしています。
長男が私立理系大学へ進学すべく東京へ
長女は私立文系大学へ進学すべく大阪へ

本人に関しては、男性が主たる家計を支えていて、
以下のようにかなり理想的な労働条件としています。
妻はパートで家計を支えているとします。
年収上昇率は一般的と言われる1%が30年間継続
退職金は1000万円
年金額は現行の支給平均額

ほかの暮らしぶりとして、一般的な住宅ローンを組んで、
老後はふつうに暮らせるだけの貯蓄ができるとしています。
年収の5倍程度の住宅ローンを完済する
子供2人を奨学金を借りることなく大学を卒業させる
必要とされる老後資金3000万円が貯蓄できる

ようは「夫が働き妻が専業主婦で子どもはふたり」という
高度経済成長期以来の「理想の家族」です。
これは多くの人が「ふつうの暮らし」と意識するものだろうと思います。


結果は以下の図を見れば一目瞭然です。
男性が30歳で年収550万円だと、すでに大きな赤字となり、
年収は不足していることがわかります。
30歳のときの年収が650万円でようやく、
このような暮らしができることになります。

【分析その1】30歳で年収550万円のケース

【分析その1】30歳で年収550万円のケース

【分析その2】30歳で年収650万円のケース

【分析その2】30歳で年収650万円のケース

30歳で年収が650万円というのはかなり高収入です。
上述のサイトにも出ていますが、DODAのサイトを見ると
30歳男性の年収分布は次のようになっています。
平均は400万円、年収650万円以上は5%程度です。
一握りの裕福層と言わざるを得ない収入ということです。

「平均年収/生涯賃金 > 年齢別 > 30代」

「平均年収/生涯賃金 > 年齢別 > 30代」

前述のように、このシミュレーションは、
年収の上昇率や退職金、年金の条件が理想的です。
今後経済が後退して年収が上がらなくなったり、
少子高齢化で年金の受給額が減ることがあれば、
必要な年収はさらに高額ということになります。


『クレヨンしんちゃん』の野上ひろしは、
30代で子どもがふたりいて、マイカーがあって
住宅ローンを組んでマイホームを持っているという、
このシミュレーションに近い暮らしをしています。

野上ひろしの年収は650万円程度と推測するかたもいますが、
本当にそれくらいと考えられます。
作品では「平凡なしがない庶民」と描かれていますが、
実態は庶民から逸脱した裕福層ということです。

「「信仰としての家族思想(2)」
「野原ひろしはハイスペックな係長!年収600万円以上で家持ち車持ち」



「日本では子どもを持つとお金がかかる」ということを
改めて確認したと言えるでしょう。
経済的事情で子どもを持たない人が増えるのも
ごもっともということになると思います。

「子ども増やさない本音」

「子どもを増やさない理由、または、増やせない理由」

「妻が専業主婦」というのも、現在の経済事情では
難しいということも、改めて示されたと思います。
夫婦共稼ぎでなければ家計を支えられなくても当然、
共稼ぎの割合が高くなり続けるのもごもっともということです。
子どもを持って大学まで入れるならなおさらです。

「共稼ぎと専業主婦の推移」
「増える共働き・減る専業主婦…共働き世帯の増え方をグラフ化してみる」

共働き等世帯数の推移(万世帯)


シミュレーションがあらためてよく示しているのは、
大学教育にやたらお金がかかるということです。
子どもが大学に入ったことによって、
年収550万のケースは赤字になっているし、
年収650万のケースでも大きく貯金を減らしています。

これはとりもなおさず日本は大学教育に対する
公的支出が少ないことが原因です。
学費が高騰を続けて異様に高く、それでいて給付の奨学金がない
OECD加盟国唯一の国であることの反映です。

「学費は高いわ援助はないわ・・・日本の高等教育@OECD」
「私の社会保障論 奨学金という名のローン=中央大教授・山田昌弘」

Average tuition fees (USD) vs. the percentage of students receiving public subsidies for higher education, 2008-09



シミュレーションでは子どもが大学に入っても
奨学金を受けないことを前提にしています。
奨学金がないとなかなか大学生活を送れないことも明らかです。
利子が高いとわかっていても、奨学金を借りざるをえず、
大学卒業後返済が負担になるかたが多いのも、
ごもっともということになるでしょう。


年収550万のケースでも赤字になるくらいです。
一般的な年収で暮らしをしている庶民にとっては、
子どもを大学に入れるための経済的ハードルは
かなり高いと言わざるを得ないです。

8月18日のNHKの番組で、進学を断念した
母子家庭の高校生が登場したのでした。
貧困層の子にとって大学進学はいっそう厳しく、
あきらめる子が多くても無理もないことがわかります。

「子どもの貧困とバッシング」
「子どもの貧困とバッシング(2)」

(貧困バッシングに興じる人は、ランチ1000円が贅沢とか
叩いていましたが、その程度の目先の「倹約」で
なんとかなるようなレベルではないでしょう。)

posted by たんぽぽ at 19:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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