2016年10月16日

toujyouka016.jpg 配偶者控除の廃止・今後の予想

10月9日エントリで、配偶者控除の廃止が
今回も見送りになったことをお話しました。

ここでは10月6日の日経新聞の次の記事を見たいと思います。
見出しの通り、配偶者控除を廃止しないのは、
「女性活躍」という安倍政権の方針に反する、というものです。

「「「女性活躍」はウソですか」」

 
これは当然の批判と言えます。
配偶者控除は配偶者の年収が103万円以下の世帯に対して
適用されますから、専業主婦世帯に対する優遇措置です。
控除を受けるために、年収の上限額以下になるよう
就労を自発的に抑制する女性も出てくることになります。

配偶者控除はその制度設計が、「女性の労働は家庭に差し支えない
範囲にとどめる」ことを推奨しているということです。
これが女性にももっと積極的に働いて欲しいという、
安倍政権が掲げる「女性活躍」の方針と
まったく反することはいうまでもないです。


このような制度の廃止がいつまでもなされないのは、
それだけ「夫が働き妻が専業主婦」という
高度経済成長期に定着した「家族思想」に対する
「信仰」が強いということだと言えます。

配偶者控除の廃止に反対する当人たちが、
「夫が働き妻は専業主婦という家族のありかたを
維持するべきだ」と臆面もなく言うくらいです。
因習・反動的な家族観の標榜にまったく遠慮がなく、
「女性活躍」という方針に反する家族思想を公言することを、
彼らはぜんぜん気にしていないということです。

https://flic.kr/p/M4LKCP
菅義偉官房長官は6日午前の記者会見で、配偶者控除について
「配偶者の労働意欲を抑制するとの指摘がある一方で、
家族の助け合いや家庭における子育てへの配偶者の貢献を
積極的に評価すべきだとの声があることも事実だ」と指摘。

そのうえで「家族のあり方に関する国民の価値観に深くかかわることで、
幅広く丁寧な国民的議論が必要だ」との考えを示した。


今回は配偶者控除の適用範囲を現行の年収103万円から
150万円に拡大する案まで出ていたのでした。
どれだけ既得権益層が強いのかとも思います。

ところがフタを開けてみれば、廃止見送りどころか、
年収150万円へ優遇措置を拡大する案まで飛び出した。
控除の恩恵を受けず働く世帯から疑問の声が上がるのは必至だろう。

控除廃止に逆行しようとするくらいですから、
ますます「女性活躍」が信用できなくなるということです。
安倍政権の「女性活躍」が信用できないのは、
いまに始まったことではないですが。)


今年は多少は配偶者控除の議論が活発になったようです。
自民党内に配偶者控除の廃止に前向きな論調があったからです。
それでも今年は、少し景色が違っていた。
税制改正でカギを握る自民党の税制調査会などが
廃止に前向きだったからだ。

これは安倍首相がじきじきに配偶者控除の廃止を検討するよう、
税制調査会に指示したことがあるでしょう。
トップが動くと全体もそれなりに動くということだとは言えます。

「首相、配偶者控除の見直し指示 政府税調が検討へ」


今後のわたしの展望ですが、配偶者控除の廃止は、
安倍政権では実現しないのではないかと思います。
自民党政権では実現しないと言っていいかもしれないです。

上述のように廃止の推進派の動きが、
ある程度は活発になることはあるだろうと思います。
それでも反対の既得権益層が強すぎて、
彼らを押し切るにはとてもいたらないことと思います。

10月9日エントリで示した議論も、毎年くりかえしているようです。
既得権益層がどこも自分の利益を譲らないので、
議論が少しも進まないということだと思います。

日経記事の冒頭にもあるように、配偶者控除の廃止の議論を
するけれど、反対が強くで結局断念するというのは、
毎年秋の年中行事のようになっていると言えます。

「ああ、また。やっぱりね」。
政府が配偶者控除の廃止を見送ると知った
働く女性の多くは、こう感じたのではないか。
配偶者控除の見直し議論は、毎年、年末が近づくと
繰り返される恒例行事と化していたからだ。


選択的夫婦別姓が自民党政権下で実現しなかったことと、
似たようになっていると、わたしは思います。
選択的夫婦別姓も、自民党内で推進派がある程度
活発になることがあっても、最後は頑迷極まりない
反対派に潰されるというのが、いつものパターンだからです。

自民党のお歴々が信奉する「家族思想信仰」は、
1. 戦後民法で定められた家族のありかたを維持する
2. 夫が働き妻が専業主婦というライフスタイルを維持する
という大きくふたつの「教義」があります。
選択的夫婦別姓の阻止が1.の象徴なら、
配偶者控除の維持は2.の象徴だと思います。

配偶者控除に関しては、神道政治連盟や日本会議のような
家族イデオロギーを最前面に出す圧力団体はとくにないようです。
そのかわりお金が関係するので、
イデオロギーでない利害関係が絡みやすいです。
とくに財務省という利害関係者は、やっかいだと思います。

posted by たんぽぽ at 17:42 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
配偶者控除廃止の見送りは予想されていたとはいえ、
見送りが決定すると改めて強い落胆を覚えますね。

これで年収103万円以下に抑えられていた女性や、
年収150万円を超える女性が103〜150万円の領域に
ある程度の割合でシフトしそうですが、
これではとても女性活躍にはなりませんね。

たんぽぽさんが補助ブログで紹介されている、
専業主婦を奨励する家族信仰に基づく女性の就労を阻害する
巨大な壁がまだまだ健在ということですね。
この壁はベルリンの壁より早く壊すべきだった。

女性の就労の3つの壁
http://pissenlit16.seesaa.net/article/442833487.html

そもそも、私は控除税制や保険料などの支払い免除などはすべてやめて
累進課税率強化や給付型に変更すれば良いと思っています。
Posted by ritiarno at 2016年10月16日 21:19
ritiarnoさま、こちらにもコメントありがとうございます。

>配偶者控除廃止の見送りは予想されていたとはいえ、
>見送りが決定すると改めて強い落胆を覚えますね

イデオロギー重視の人たちとお金が大事という人たちの
両方の利害が入り込むので、余計に廃止が困難になっていると思います。

>ある程度の割合でシフトしそうですが、
>これではとても女性活躍にはなりませんね

制度拡大で、むしろ逆行になるでしょうね。


>この壁はベルリンの壁より早く壊すべきだった。
>女性の就労の3つの壁
>http://pissenlit16.seesaa.net/article/442833487.html

こちらもご覧くださりありがとうございます。
「106万の壁」は最近できたものですし、
むしろ壁の数が増えているくらいですね。

「専業主婦の囲い込み」なんて、雇用均等法施行の時代に
やめてしかるべきですし、ベルリンの壁より早く壊して
ちょうどいいくらいですね。


>私は控除税制や保険料などの支払い免除などはすべてやめて
>累進課税率強化や給付型に変更すれば良いと思っています

累進課税の強化や給付のほうが、再分配になりやすいので、
低所得層にとっても公平ですしね。
Posted by たんぽぽ at 2016年10月17日 22:03
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