大学教育にかかる負担が大きいことが「貧困の連鎖」を作り出し、
貧困率を高める原因となることに触れました。
さらに記事では、貧困層にとって大学教育を受けることが
経済的に困難な状態が続くことが、社会全体の経済的損失を
もたらすことに触れています。
「子供の「6人に1人が貧困」 40兆円の社会的損失」
貧困層が大学教育を受けられないことによって、
年収の高い専門的な知識や技術を必要とする職種に就けず、
年収の低い職種にしか就けないことになります。
彼らが負担する税金は必然的に少なくなります。
さらに貧困層が年収の低い職種にしか就けないことにより、
「貧困の連鎖」をもたらすことになります。
「貧困の連鎖」が繰り返されて、貧困率が高くなると、
負担される税金も少なくなり、かつ社会福祉に頼らないと
生活できない人が多くなることになります。
貧困層に対する福祉を縮小させると、目先の負担は減るのでしょうが、
中長期的には税収が減って、福祉の負担が増えることになるし、
それだけ経済成長が停滞することにもなるということです。
貧困の子供たちをそのまま放置すると学習の機会が少なくなり、
就職も不利になって低所得の状態が続く可能性が高まります。
その子供たちが結婚して、子供を授かった場合、
さらに低所得の家庭で学習の機会も失われるという
「貧困の連鎖」が繰り返されることにもなりかねません。
その貧困家庭が、生活保護を受ける状態になると、
社会保障の負担も当然増えることになります。
こうした「貧困の連鎖」は、私たちの社会に莫大な
損失をもたらすことになるのです。
日本財団の「子どもの貧困の社会的損失推計」レポートでは、
15歳(中学3年生)の1学年だけでも、経済的事情で進学できない
貧困層を放置することで、所得の減少は2.9兆円、
税や社会保険料の負担増は1.1兆円になると推計しています。
合わせて4.0兆円の損失です。
「子どもの貧困対策」
「子どもの貧困の社会的損失推計 レポート」
これは中学3年生だけですから、赤ちゃんから高校生までの
すべての年齢層において貧困を放置すれば、
もっと莫大な額の損失が出ることはもちろんです。
15歳以下のすべての子どもたちの、教育を受けられない状態を
放置すると、社会的損失は10倍の約40兆円になります。
(日本財団のサイトを見たけれど、出展を見つけられなかったので、
ご存知のかたは教えていただけたらと思います。)
日本財団の『子供の貧困対策に関する大綱』によると、
15歳以下の貧しい子供たち全員の
「教育を受けられない状態(中退・進学の断念)」を放置すると
約40兆円の所得が失われると試算しています。
OECDの報告でも、格差が存在することによって
経済成長が阻まれることが、示されています。
「格差が経済成長を阻害」
「OECD「トリクルダウンは起こらなかったし、
所得格差は経済成長を損なう」という衝撃の報告について」
オレンジの棒は格差の存在が経済成長を阻害したぶん、
水色の棒は格差がなかったときの経済成長率です。
水色からオレンジを引いた藍色のダイヤが、実際の経済成長率です。
貧困を放置していると、オレンジの寄与はどんどん大きくなり、
ますます経済成長が阻害されるということです。
貧困層に対する社会福祉をじゅうぶん増やせば、
税収の増加と福祉予算の軽減をもたらして、
オレンジの寄与が小さくなるということです。
「貧困バッシング」をするような反反貧困の人たちは、
ようは貧困層のための税負担や社会保障負担が増えるのが
気に入らないのだろうと思います。
それなら積極的に貧困層に対する公的支援を増やせ、
ということになります。
「子どもの貧困とバッシング」
「子どもの貧困とバッシング(2)」
貧困層をバッシングして、貧困層への公的支援を
減らすなんてとんでもないことです。
将来の貧困層に対する社会負担が増えることになって、
自分自身への負担として跳ね返ってくるからです。
彼らは「貧困の連鎖」が経済成長を阻害して、
さらなる公的負担を増やすことになることを理解できず、
目先の負担が増えるという近視眼的な損得だけで、
攻撃的になっているのだろうと思います。
日本社会全体が、貧困による経済的損失を
じゅうぶん認識していないように、わたしは思います。
少子高齢化による経済的損失は多少は認識されていると思います。
(それでも危機感はたいしたことないと言えます。)
「日本は経済大国で公平な社会だから貧困はない」
なんてうぬぼれているからでしょうか。
それとも「貧困層に再分配してもなにも残らない」という
高度経済成長時代の意識が残っているのでしょうか。
弱者に再配分しても未来に何も残らない。その予算をインフラに投資すれば未来の日本の血になりホネになる。
— Oricquen (@oricquen) 2016年6月11日
といった高度経済成長期の保守の思想が再興隆しているのでは?
民主党政権の逆張「人からコンクリート」が支持されやすい空気 https://t.co/WZJuWkCX3C
少子高齢化の危機感さえたいしたことないですから、
貧困の連鎖や格差の拡大に対する危機なんて、
なおさら希薄でも無理もないことかもしれないです。