11月6日エントリでお話した国立青少年教育振興機構の調査は、
若年層の子どもの希望についても調べています。
これを見てみたいと思います。
「結婚願望20代で低下=子供の希望も、「経済格差影響」−青少年機構」
(はてなブックマーク)
「若者の結婚観・子育て観等に関する調査[結果の概要] 」
はじめに全体の子どもの希望についてを見てみます。
「子どもは欲しくない」は24.8%で、約4分の1です。
この数字を見るかぎり「みんな結婚して子どもを持つ」という
「標準家族」思想は、やや崩れていると言えそうです。
「結婚したいと思わないが子どもは欲しい」は2.7%だけです。
結婚願望の設問で「結婚したくない」と答えたかたの相当数は、
「子どもは欲しくない」と答えていることになると思われます。
「結婚したくない」は20.3%なので、結婚したくないわけではないが、
子どもは欲しくないかたは7ポイント程度と考えられます。
やはり日本の家族観は結婚と子どもを持つことが、
リンクしているということなのでしょう。
ジェンダー別に見ると、全体的には女性のほうが
男性より子どもが欲しいかたが多くなっています。
「子どもは欲しくない」かたは男性は25.6%、女性は24.0%です。
「結婚したくない」は男性は23.3%、女性は16.0%なので、
「子どもは欲しくない」のジェンダー差は小さいことになります。
女性のほうが「結婚はしたいけれど、子どもは欲しくない」
というかたが、男性より多いということだと思います。
世代別に見ると、「子どもは欲しくない」は
年代が上になるほど多くなる傾向があります。
割合は「結婚したくない」より一回り多い程度です。
世代が上がるほど、結婚も子どもも興味がなくなる
もしくはあきらめる人が多くなる、ということでしょう。
特徴的なのは、「結婚したらすぐにでも欲しい」は
世代が上がるほど多くなるということです。
「早く結婚したい」は、世代が上がるほど減るので対照的です。
子どもに関しては、欲しくなくなる人と欲しくなる人が、
二極化するということだと思います。
また年齢が上がるとともに「結婚はあきらめているけれど、
もし結婚できたら子どもが欲しい」というかたが
増えてくるということだと思います。
次はいよいよ2008年と2015年との比較を見てみます。
「子どもは欲しくない」と答えたかたは、
2008年は11.1%でしたが、2015年は21.9%でほぼ2倍です。
子どもに対する希望が減っていることが顕著です。
「子どもは欲しくない」と答えたかたは、
ジェンダー差がほとんどないです。
男性は2008年の10.9%から2015年は22.7%、
女性は2008年の11.3%から2015年は21.0%です。
ほぼ同じ割合と考えてよいでしょう。
「結婚願望」の調査では、「結婚したくない」の割合は、
ジェンダー差がもっと大きく、女性のほうが男性より
増えかたが小さかったのでした。
女性に「結婚はしたいけれど、子どもは欲しくない」かたが
より多いことが、ここでも示されていると思います。
子どもに対する希望は2008年と比べて
2015年は大きく低下していて、それは雇用や年収の不安定といった
経済的事情によるところが大きいことはあるでしょう。
安倍政権の経済政策は「雇用を増やした」といっても、
女性と若年層を賃金の低い非正規雇用に回しています。
彼らには「アベノミクス」の恩恵が薄いのであり、
暮らし向きがあまり改善されないので、結婚や子どもへの
希望が持てなくなることが考えられます。
「女性の労働力率と非正規率」
「「増えた雇用は非正規」の実態」
「安倍政権・経済効果が薄い理由」
「日本の非正規雇用はひどい」
子どもの希望にジェンダー差があること、
とくに女性に「結婚したいけれど、子どもは欲しくない」と
いうかたが多いと考えられることは、
経済的事情以外の理由もあることが考えられるでしょう。
これは「子どもを持つと仕事を続けられなくなる」
「仕事と子育ての両立」といった問題が、女性にとくに多く
のしかかってくることが原因ではないかということです。
「ジェンダー別の正社員の割合」
「女は結婚で年収が減る」
「出産でパートに回される」
「子を持つと仕事をやめる」
「家事をしない日本の男性と家族思想信仰」