11月5日エントリでお話した、内閣府の世論調査では、
旧姓使用の希望についても調査しています。
自分が結婚して戸籍の苗字が変わったとき、
働くときに旧姓を通称使用したいかという質問です。
「男女共同参画社会に関する世論調査」
「4.旧姓使用についての意識について」
「(1) 旧姓使用の希望」
この結果について見てみたいと思います。
全体では「旧姓を通称使用したい」は31.1%、
「旧姓を通称使用したいとは思わない」は62.1%です。
男女両方、全年齢層を含めての数字なので、あまり情報はなさそうです。
女性にかぎると「旧姓を通称使用したい」は23.9%、
「旧姓を通称使用したいとは思わない」は70.4%です。
これも全年齢層を含めてですし、高齢層ほど通称使用したいと
回答する人は少なく、また総回答者数も多くなるので注意が必要です。
女性のみを年齢階層別に見ると次のようになります。
20-40代は「旧姓を通称使用したい」が3割以上です。
50代までを平均すると31.1%となります。
2015年3月の日本経済新聞が行なった、
20-50代の働く既婚女性対象の世論調査では、
事実婚のかたが2.4%、仕事で旧姓使用しているかたが25.3%です。
両方合わせて27.7%になります。
「実際に旧姓使用している<旧姓使用を希望している」という、
予想される結果は、反映されていることになります。
「働く既婚女性に別姓の調査(2)」
この日経の調査からから補助ブログの10月27日エントリで、
結婚改姓に不満を持っているかたは
42.5%であると、わたしは推測したのでした。
「既婚女性の7割が戸籍姓?」
結婚改姓に不満を持っているかたが
かならずしも旧姓使用を希望するとは限らないことを考えると、
この42.5%はいちおう妥当なのかと思います。
(ちょっと多く見積もっている気もするので、「いちおう」付き。)
内閣府の調査は、旧姓使用の希望について
男性にも聞いているところが特徴的で貴重だと思います。
この問題に関して、男性を結婚改姓する当事者として
扱っている調査はほとんどないからです。
ジェンダー別に見ると、女性より男性のほうが、
「旧姓使用の希望」をするかたが多くなっています。
全体では女性は23.9%ですが、男性は39.5%が希望しています。
特定の年齢層に限っても、男性のほうが多いです。
これは男性のほうが「結婚しても自分は苗字を
変えないもの」という認識が強いので、
結婚して戸籍の苗字が変わっても、旧姓を使い続けたい
という希望がより強くなるものと思います。
「旧姓使用は男性にやってもらったほうがいい」という
選択的夫婦別姓問題に関わる人たちのあいだで、
ときどき言われることは、ここでも示されていると思います。
男性に通称使用してもらうほうが、要求する人が多くなるので、
社会もそれだけ通称使用を受け入れざるをえなくなるからです。
「旧姓使用は男性にやってもらって(^-^)」
「戸籍名の使用は合理性がある」とか
「通称使用はうその名前」なんて、こないだの中高一貫校の
教師が訴えた訴訟のような扱いが起きるのも、
「通称使用は女の問題」と思っていることもあると思います。
「オンナのことだから切り捨てても問題ない」と、
オトコたちは考えるということです。
通称使用する男性が増えて、通称使用が「男の問題」となれば、
「女の問題」のときは切り捨てていた彼らも、
通称を使用する権利を認めようとして、
尽力するようになるのではないかと思います。
いくら望んでも出来ない背景があり、大方の人は諦めながら生活しているのが現実だと思います。
逆に離婚で名字を戻し、婚姻時の姓を旧姓使用したいひともこのデータの中の一定程度はいらっしゃるでしょう。
私の知ってる人はそれを会社が認めず、やむをえず離婚で「名字がかわりましたので」とあちこちに報告したら「ご結婚おめでとうございます」とあちこちに祝福されたという笑うに笑えない話もあります。
改姓時の不利益は結婚の時だけではないのですよね。
>いくら望んでも出来ない背景があり、
>大方の人は諦めながら生活しているのが現実だと思います。
>逆に離婚で名字を戻し、婚姻時の姓を旧姓使用したいひとも
>このデータの中の一定程度はいらっしゃるでしょう。
そういうかたは結構いそうですね。
結婚改姓に不満があるかた42.5%という推測は、
じつはまだ少ないのかもしれないです。
やっかいなのは、通称使用を希望しながら諸般の事情で
諦めているかたを「通称使用していないから
結婚改姓に満足している」とみなす人がいることだと思います。
選択的夫婦別姓に反対する理由を探しているような人は、
そういう「認識」をすると思います。
先日の旧姓使用裁判の「旧姓使用が戸籍名の使用と同様であることが
社会で根付いているとは言えない」という結論も、
このような「認識」もあるだろうと思います。
被差別マイノリティは、みずからその存在を隠す傾向にある、
ということは、つねづね注意がいることだと思います。
>笑うに笑えない話もあります。
離婚したのに結婚したと思われるというのも、ままあることですね。
そちらの「思い込み」もなんとかするところだと思います。
あまりに恣意的でフェアでなく、はじめに正解ありきな選別と方法と内容の調査に見えるのは、自分の偏向でしょうか?
日経はともかく、内閣府調査はなんですでに現場を離れたロートルを中心に調査しているんだろう?
なんで設問に「そもそも結婚ごときで名前を変えたくなかった(ない)」という選択肢がないんだろう?
じつにイヤラシイし気持ち悪い。
>内閣府調査はなんですでに現場を離れたロートルを中心に調査しているんだろう?
70代以上の高齢層まで訊いているのが、引っかかりますよね。
しかも高齢層ほど回答者の数が多くて、
これから使う可能性がある、もしくは現在使っている世代が
相対的に少ないので、回答に偏向が出るのが眼に見えています。
高齢層に訊いてはだめとは言わないけれど、
現役世代にかぎっての分析は必要だと思います。
全世代を合わせた数字で議論しても、
あまり意味のある結論は出ないだろうと思います。
>設問に「そもそも結婚ごときで名前を変えたくなかった(ない)」という選択肢がない
それは「旧姓使用の希望」という趣旨だからと思いますよ。
選択的夫婦別姓問題全般の世論調査は別にやっているので、
そちらを参照してくれということなのでしょう。
この調査は、女性だけでなく男性にも同じことを訊いていて、
「女の問題」にしていないところは、「良心的」だと思います。