2016年11月19日

toujyouka016.jpg 日本会議の理想はサザエさん

日本会議が憲法24条の改正に意欲的だというニュースと、
それに対して危機感を示しているという記事です。

「憲法公布70年 「24条改正への布石ではないか」批判も」
(はてなブックマーク)

「日本会議 「理想はサザエさん一家」啓発 24条改正巡り」
(はてなブックマーク)

 
日本会議の本質は「反フェミ」「ミソジニー」であり、
彼らにとって9条よりも24条のほうが大事なくらい
ではないかと言われています。

「日本会議・ミソジニーの本質」

そして一般の日本社会は、「オンナコドモのことはくだらない」
と思って、まともに取り合わない傾向が強いです。
よってこうした動きについては、ときどき話題にして
喚起しておくのがよいだろうと思います。

「話題にならない憲法24条」


ここで話題にしたいのは、日本会議は『サザエさん』を
理想の家族として引き合いに出していることです。

「サザエさんが今も高い国民的人気を誇るのはなぜでしょう」。
日本会議の関連団体が制作した啓発DVDの一場面。
ナレーターは24条により家族の解体が進んだ結果、
さまざまな社会問題が起きているとして、
3世代同居のサザエさん一家を理想と持ち上げた。

『サザエさん』は波平とマスオは平凡な会社員であり
家計を支えていて、フネとサザエは専業主婦です。
「夫が外で働き妻が専業主婦」という
高度経済成長期に定着した「標準家族」に合致します。
彼らの家族思想に対する「信仰」を体現しているわけです。

「フィクションに見る家族思想信仰」

またサザエさんの家庭は3世代が同居しています。
「3世代同居」を「伝統的家族」と称して、
安倍政権は出生率回復のために推進していますが、
3世代同居も彼らの「理想の家族」に合致するので
日本会議としてはポイントが高いのでしょう。

「3世代同居で少子化対策?」
「伝統的家族で出生率回復?」

批判的に取り上げる場合でも、『サザエさん』は
因襲・反動的な家族の典型として、よく引き合いに出されます。
因襲・反動的な家族を理想とする人たちなら、
肯定的に取り上げるのはごもっともだと言えます。

「サザエさんに見る日本の“家族信仰”は異常 
『シングルマザーの貧困』著者が語る、標準以外を無視する社会」



こうした意見に対しては、「人気が高いからといって、
それが現実にありえるとはかぎらない」ことがあると思います。
現実に存在しないから憧れることも、いくらでもあるでしょう。

理想はあくまで理想であって、現実に存在しないこと、
ましてや現実に対して押し付けてはならないことは、
じゅうぶん理解する必要があることです。

憲法公布70年:理想「サザエさん一家」 24条改正巡り - 毎日新聞

理想の彼女はエロゲのヒロインみたいな発言。趣味嗜好は自由だけど、現実には存在しないし、人に押し付けたらダメですよ。

2016/11/03 10:33


長く人気番組だった『サザエさん』ですが、
最近視聴率が下がっているという衝撃の(?)事実があります。
今年の7月3日に視聴率10%未満を記録したのでした。
2012年でも20%以上の視聴率でしたから、
人気が陰ってきたのは、ここ数年ということだと思います。


「サザエさんの視聴率が急降下した本当の理由とは。」

3日に放送された「サザエさん」の視聴率が
9・9%と2ケタを割ったことが分かった。
常に高視聴率をキープしている人気長寿番組「サザエさん」。
今年に入って1ケタとなったのは、5月22日の7・7%のみ。
サザエさんはご長寿番組でありながら、常に高視聴率を保っている。
1972年の世帯視聴率は33.1%であり、以降アニメ番組では
視聴率1位をキープし続けながら、2012年の同率は21.3%である


その原因として『サザエさん』で描かれている
家族や日常生活が、現代のそれらから乖離しているので
共感できないということを考えています。

3世代家族が希少価値なのは言わずもがなです。
専業主婦世帯もちゃくちゃくと減り続けています。
意識の点でも2016年10月の内閣府の世論調査を見ると、
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えの人は減って、
共働き志向が強まっていることがわかります。

「共稼ぎと専業主婦の推移」
「世帯数の推移・単独と三世代」

共働き等世帯数の推移(万世帯)

「世帯数の年次推移・核家族(2)」

世帯構造別にみた世帯数の構成割合の年次推移

「世論調査・共働き志向増加」

「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考え方への反対が増えた

日常生活という面でも、記事では
1. 知らないおとなが叱りつける。いまなら児童虐待になりかねない
2. 球技が子どもたちの遊びの中心。現在では禁止しているところが多い
3. スマートフォン、PC、コンピュータゲームは出てこない。
4. 屋号のつく個人商店が多い
5. 大型ショッピングモール、コンビニ、ネット通販が出てこない。
といったことが挙げられています。


このような『サザエさん』の世界が因襲的で、
現在の現状とは乖離していることは、前世紀から言われていたことです。
それでも『サザエさん』は人気番組の地位を維持し続けたのでした。

近年の人気の陰りが、かかる現実との乖離が原因だとすれば、
それが視聴率に反映されるようになったのは、
わりあい最近になってから、ということになるでしょう。
2012年でも21.3%という高視聴率だったからです。

そういう世代がアニメの視聴者に多くなったということでしょうか?
あるいはようやく高度経済成長期以来の「家族思想」を、
社会が受け付けなくなり出したということかもしれないです。

posted by たんぽぽ at 21:52 | Comment(7) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
こんな記事があります。
家父長制復活狙う日本会議が「サザエさん」を使い家族条項新設を喧伝! でも「サザエさん」ってフェミなんですけど

http://www.excite.co.jp/News/column_g/20161105/Litera_2673.html?_p=8

「サザエさん」の放送開始は1969年、私が子どもの頃なんですが、当時の子どもの目から観ても「古臭いアニメ(なんて言葉も当時は無くテレビマンガと呼ばれていたんですが)だなあ」と感じましたが、原作の連載は昭和20年代にスタートなんですよね、そりゃ、古いわ。
 当時はマンガは「鉄腕アトム」も「はだしのゲン」も、マンガというだけで教育上悪だった時代ですが、なぜか「サザエさん」だけは良いという家庭が結構あって、それは、当時の親世代が唯一理解できたマンガが「サザエさん」だったんでしょうねえ。

 その後、アニメオタクになった私は、だからこそか「サザエさん」のアニメは殆ど見なかったので、実はあんなに長く続いていたことも知らなかったです(^^ゞ
ましてや、そんな高視聴率っていうのもへえ、って
感じですが、あれは「水戸黄門」と同じかなあ、と。つまり予定調和の時代劇。
 少し昔、だけど、具体的にいつの時代かは隠しつつ、ほのぼのもゆかいな一家を描くファンタジーが、永遠のワンパターンだったのかなあと思ったりします。

 ただ、リンク先の記事とか読むと、連載当初は「新しい女性像」というかな、現代っ子的なキャラとしてサザエさんを設定したんでしょうね、少なくとも長谷川町子先生は。
 また、当時の主婦や主婦予備軍の目から見ると「サザエさん」の境遇は夢・理想です。
 舅姑とは別居の新婚生活のスタート(最初は夫婦二人暮らしだったんですよね、家主とトラブルを起こして追い出されてサザエの実家に同居するハメになった)子供が出来たら実親と同居。実家なんで気を使わず、自由奔放に振舞える。
 アニメが、サザエさんのそういった奔放さを描けなかったのは、放送当時でも時代がずれてしまったせいで、ほのぼのホームドラマにするしかなかったんだろうなあ、と。

 日本会議は「同居」と「専業主婦」だけで理想化してますが、あれを今リアルでやろうとしたら、資産家令嬢をものにして逆玉ですよ。
 だって、世田谷で二世帯同居できるほどの広い戸建てを持ってて、しかも母親が専業主婦で子ども三人って、どんだけ?
 波平さんが上場企業の取締役とかじゃないと無理です。
Posted by イカフライ at 2016年11月20日 00:05
イカフライさま、こちらにコメントありがとうございます。

>家父長制復活狙う日本会議が「サザエさん」を使い家族条項新設を喧伝!
>でも「サザエさん」ってフェミなんですけど
>http://www.excite.co.jp/News/column_g/20161105/Litera_2673.html?_p=8

ご紹介ありがとうございます。
『サザエさん』はアニメとコミックでは、こんなにキャラが違ったのですね。
これは知らなかったです。

コミックをアニメにするとき、キャラを変えることは、
それほど珍しいことではないですが、
このくらい変わっていると「別物」と言えると思います。


>連載当初は「新しい女性像」というかな、現代っ子的なキャラとして
>サザエさんを設定したんでしょうね、少なくとも長谷川町子先生は。
>また、当時の主婦や主婦予備軍の目から見ると「サザエさん」の境遇は夢・理想です

サザエのキャラは多分に突き抜けていますよね。
結婚して子どもができても、娘時代の感覚が
あまり抜けていなくて、それでもぜんぜん問題がない。
当時はもちろん、いまでもなかなかないことだと思います。

ご指摘の通り、家族に因襲的な日本会議の面々とは
別の意味で「理想」だったのでしょう。


リテラの記事に指摘がありましたが、
サザエさんは「専業主婦」ではあるけれど「嫁」ではないですね。
自分の親と同居しているのであって、
マスオさんの親と同居しているのではないし、
マスオさんの親を介護するシーンもぜんぜんない。

一時期「マスオさん現象」なんてことばがはやったですが、
結婚して妻の親と同居するのは、当時はなおさらでしょうが、
いまでも比較的少ないのではないかと思います。
(それ以前に同居しないでしょうが)、同居するとしたら
夫の親のケースが多いだろうと思います。

この点に関しては、サザエさんの家族形態は結構特殊なのですが、
家族やジェンダーに因襲的な人たちは無視しますね。


>あれを今リアルでやろうとしたら、資産家令嬢をものにして逆玉ですよ。

『サザエさん』のような暮らしは、現在では経済的に無理ですよね。
『クレヨンしんちゃん』でさえ、野上ひろしはなかなかないような
かなりの高収入で「勝ち組」と言われるくらいです。
サザエさん一家は現代人には不可能なレベルでしょう。

経済事情というのは、家族やジェンダーに因習的な人は、
必ずと言っていいほど顧みないことだと思います。
しょせん「信仰」なので、教義を呪文のように唱えていれば、
お金はどこからともなくわいてくる、程度の感覚なのかもしれないです。

>波平さんが上場企業の取締役とかじゃないと無理です

アニメではサザエさんの一家はしがない庶民ですし、
波平は上場企業の取締役でないどころか平社員ですね。
Posted by たんぽぽ at 2016年11月20日 18:45
>「サザエさん」の放送開始は1969年、私が子どもの頃なんですが、

1969年というのは、案外遅いなという印象です。
もっと前からやっていたように思っていたです。


>当時はマンガは「鉄腕アトム」も「はだしのゲン」も、
>マンガというだけで教育上悪だった時代ですが

アニメ黎明期のアニメの見られかたはそんなですね。
とにかく否定的に扱われた。

いまでは「文学作品」としてもっと肯定的に扱われていますね。
時間が古典を作ることはいくらでもあるから、
このような評価の変化を一概に否定する気はないですが。
当時の子ども世代がおとなになったのが、
いちばん大きいのでしょうけれど。

>なぜか「サザエさん」だけは良いという家庭が結構あって、
>それは、当時の親世代が唯一理解できたマンガが「サザエさん」だったんでしょうねえ

そのあたりはおとなのご都合主義的ですね。
おとなたちがアニメを否定したのは、自分が入り込めない世界だから
というのもあったのだろうと思います。


>実はあんなに長く続いていたことも知らなかったです(^^ゞ
>ましてや、そんな高視聴率っていうのもへえ、って

それは意外でした。
(『サザエさん』はオタク向けのアニメという感じではないけれど。)


>あれは「水戸黄門」と同じかなあ、と。つまり予定調和の時代劇

それはわたしも感じています。
安心できるワンパターンとでも言うのか。
内容も小市民の平凡な日常ですから、
繰り返されても不快になることがないですからね。

『水戸黄門』は多少惜しまれる状況で番組終了になったけれど、
『サザエさん』もそうしたほうがいいのではないかと思います。
Posted by たんぽぽ at 2016年11月20日 18:48
幼少のころ、サザエさんの次にやってたこち亀はほぼ毎回見てたんですが、サザエさんはほとんど見た覚えがないのになぜか家族構成だけを知っています。
Posted by あいうえお at 2023年08月17日 20:36
あらあら、そうだったのですね。
『サザエさん』なんて無理して観なくても
いいだろうとは思います。

『サザエさん』は『ドラえもん』と並んで、
日本の「国民的アニメ」なので、
あまり観たことがないかたでも、
ある程度内容を知っていることも
あるのだろうと思います。
Posted by たんぽぽ at 2023年08月18日 22:22
幼少のころ、母の実家にあったサザエさんの単行本を読んだことを思い出しました。だから家族構成をなんとなく覚えているのだと思います。テレビでは皆無と言っていいほど見ていません。
Posted by あいうえお at 2023年08月21日 13:16
こちらにコメントありがとうございます。

>サザエさんの単行本を読んだ

原作をご覧になったのですね。
それはそれで結構なことだと思います。

一般にはアニメだけ観たことがあって、
単行本を読んだことない、
というかたが多そうですが。


それにしても『サザエさん』は、
日本の家族を語るときに、
引き合いに出されることが多いと思います。

どのような家族観を持つかにかかわらず、
引き合いに出すかたがいると思います。
Posted by たんぽぽ at 2023年08月21日 22:06
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