2016年11月20日

toujyouka016.jpg 女性に対する社会の過剰要求

男性中心の社会の中で、働く女性に過剰に多くの
要求がなされることを指摘した記事です。
10月7日に労災認定された、電通の社員の自殺を踏まえています。

「高学歴女子にシワ寄せされる社会の過剰期待」
(はてなブックマーク)

 
安倍政権がスローガンとして唱える「女性活用」は、
家事、出産、育児、介護といった「家族イデオロギー」にもとづく
女性の「伝統的役割」を維持しつつ、女性から労働力も欲しいという
ご都合主義ではないか、という懸念があります。

それによって家庭と仕事の両方を女性に要求することになり、
女性に対して過剰な負担がかかることになります。

一億総活躍の旗印の下、「女性も輝け」との大号令がかかる現代。
女性も労働力として貢献せよ、アシスタントの立場に甘んじず
専門性の高い”立派な”社会人たれ、そして既に結婚も出産も
可能性の絶たれたアラフォーおばさんたちを反面教師として、
いずれ適齢期を逃さぬうちにしっかり産み育て出生率上昇にも寄与せよ。
「あれもこれも社会に貢献せよ」しかも「みっともないのはNG」、
それがいまの若い女性に要求される生き方の”ボトムライン”だ。

「女性活用」は、疑う余地のない正義として響く。
それは冷静になって考えてみれば「女は働け産め育てろ介護せよ」の
”無理ゲー”な内実を集約した呪文であっても、だ。
いま社会人として成長過程にある若い高学歴女子たちは、
前人未踏の「女性活用」の戦場へと歩を進めていかざるを得ない
自分たちが、360度全方向から放たれる、無責任で容赦なく
「求めすぎ」な社会的要請の標的となっていることに
薄々気づき、反発し、防衛を始めている。

こうしたことは、これまでにも何度か指摘されていました。
電通社員の自殺の労災認定は、それをあからさまにしたと言えます。

「女性の生きざまの現実」
「女性に対する過剰な要求」
「女性を取り巻く理不尽な環境」

以前にもご紹介したことのある以下の図は
「360度全方向から放たれる、無責任で容赦なく「求めすぎ」な
社会的要請」という状況を端的に示していると思います。



日本には長時間労働という企業文化が定着していて、
専業主婦の妻に家のことを任せて、会社に専念できる
男性社員ばかりという前提になっています。
そうした会社に専念できる社員ほど、
昇進や昇給で有利になるシステムになっています。

「WLBと女性管理職の割合」
「女性管理職と長時間労働」

それゆえ家のことを自分でやらなければならない
女性社員は男性社員と同様の働きかたができず、
管理職になれなかったり、みずから管理職を望まなかったり
といったことになるのでした。

並の(?)企業なら「男は奥さんがいていいわね」くらいで、
なんとかなるのかもしれないです。
電通くらい長時間労働が常態化していると、
管理職にならなくても「仕事も私生活も充実した超人」に
ならないかぎり、女性は生き残れないもののようです。

なんだ、どっちに進んだって袋小路ではないか。
仕事も私生活も充実したイイ女という
”解”以外、存在は許されていないじゃないか。
そう言うあなたたちがどれだけのものなのか。
若い女を追い詰めて何がしたいんだろう。
それは、世間ぐるみのパワハラではないのだろうか。


記事では化粧や身だしなみの問題が槍玉に挙がっています。
これはまさに女性にばかり要求されることの代表格でしょう。

人前に出るのなら相手に不快感を与えぬよう、
身だしなみとしてちゃんと薄化粧するのも
社会人女性としてのマナーだと教えられた。
そのくせ、化粧するなら場所をわきまえろ、ちゃんと年齢や塩梅も
わきまえて大人のいい女を目指せと、世間は若い女性に
化粧する場所や仕方まで講釈を垂れてくる。
それは親切なのか、いやお節介なんじゃないか。

化粧したらしたで、厚いの、派手だの。
場所をわきまえろだの、どうこう言われ、しなかったらしなかったで
「女子力低いよ」「モテないよ」「女の子でしょ?」と皮肉られる。
人の仕事を酷評した上司が、その舌の根も乾かぬうちに、
「もっと身だしなみに気をつけろよ。
女子力低い、仕事だけの女の人になっていいの?」と、
仕事もできない(そう言ったのはその上司だ)若手女性に
「仕事のできない女」「仕事だけの女」と、
2本ともデッドエンドの道を示して意地悪く笑う。

男性は朝のグルーミングでやることは、女性より少ないし、
身だしなみもほとんど構わずに入られます。
そうした男性社員ばかりを前提にした環境で、
女性にだけ時間のかかる化粧や身だしなみが要求されるので、
女性にとって異様に負担が重くなることになります。

おおかたの男性なら朝のグルーミングは洗顔と歯磨きと
整髪(ここまでは男女共通)にヒゲ剃りで済む。
でも、女性はヒゲ剃りの代わりに、”みっともなくないように”、
洗顔後の何重ものスキンケアと下地づくりに始まる、
ちょっとした建設作業を行わなきゃいけない。

営業の飲み会に付き合い、しこたま飲んだけれど
とりあえず1回吐いて持ち直し、上司に突き返されていた
企画書を徹夜で全編書き直した翌朝、肌も髪もガサガサ、
どうにかシャワーと着替えだけは済ませ這うようにして出社、
というわけにはいかない。


これも長時間労働と同様、男性中心の企業文化に
女性が「アウトサイダー」として入り込んだ結果だと言えます。
大半の女性にとってはそんな環境で生きながらえるのは困難で
脱落せざるをえず、たまたま男性中心社会に
適応できた女性だけが、生き残るということです。

そこでは女性を正規のメンバーとは認めず、
多様性のない旧態依然な社会や文化をそのまま維持して、
「生産性の向上のためのダイバーシティ」とは、
おおよそ対極的な位置にあると言えます。



とくに化粧や身だしなみに関しては、
東洋経済の記事では次の指摘があります。
日本社会は、若い女性に対してこと細かく口出しして構わないと
思っている部分がある、それは相手が弱者であると
思っているからだ、ということです。

日本の社会は、若い女の一挙手一投足には、
どんな口を出してもいいと思っている部分がないだろうか。
明らかに自分より弱い立場にある、御しやすい若い女たちを
無遠慮に眺め回しながら、その容姿をあれこれ批評して、
その生き方に「結婚しなきゃダメだよ」
「子供は持たないと、女の人は何か欠けてるよね」と注文をつける。
そうかといって「カワイイだけじゃダメだよ」
「いつか需要なんかなくなるんだからさ」と
見も知らぬ赤の他人がダメ出しして、追い詰め、焚き付けて
ほくそ笑んだり悦に入ったりしていいと思ってはいないだろうか。

かかる「こと細かく口出しして構わない弱者」という扱いは、
女性を「アウトサイダー」とみなしている表れだと言えます。

posted by たんぽぽ at 22:58 | Comment(9) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
昭和野郎って陰口言われているのに気づいてなさそう。
Posted by あいうえお at 2023年11月02日 23:45
自分は家事も何一つできないような男子力低い昭和のオッサンなのに恥ずかしくないんですかね?
Posted by イト at 2023年11月03日 01:22
あいうえおさま

とくに中高年男性は、社会的地位もあるので、
まわりが顔色をうかがって気を遣うと思います。

なのでそのような男性の悪口なんて
なおさら本人の耳に入らないよう、
まわりは注意するだろうと思います。

かくしてかかる男性は自分の陰口に、
いつまでも気づかない可能性はあると思います。
Posted by たんぽぽ at 2023年11月03日 22:49
イトさま

家事は女性にやらせて当然と
思っているので、「恥ずかしい」と
思ってはいないだろうと思います。

むしろ男性の自分が家事をしたら
「恥ずかしい」とさえ、
思っているかもしれないです。


言ってみれば、館の主人が使用人に
仕事をさせるのと、同じような
感覚ではないか、ということです。
Posted by たんぽぽ at 2023年11月03日 22:50
平成末期に曽祖父が「最近の昭和2桁の男はわきまえない」と言ってましたが昔からそうなのでしょうか?アホなことしゃべる男の大半が昭和2桁のように思います。(もちろんマトモな昭和2桁の男性が多い事は承知です)
Posted by イト at 2024年12月24日 00:54
今も昭和二桁の男性はわきまえない人が多いと思います。我々世代や女性の意見を聞いてほしいと思います。
Posted by イト at 2024年12月24日 01:21
昭和ふたけたは、平成時代の反知性主義を
になった世代で、いまも社会の中枢を占めているので、
よくも悪くも目立つと思います。


それと、曽祖父がどういう意味で
「最近の昭和ふたけたの男はわきまえない」と
言ったのかは、わたしにはわからないです。

若い世代や女性の意見をろくに聞かない、
という意味ではないかもしれないです。
Posted by たんぽぽ at 2024年12月31日 15:15
僕の中では昭和一桁以上の男性は老害的行動をしない、昭和二桁が老害的行動をするイメージがありますが、よく考えると昭和一桁以上の男性は僕が高校生になった10年代には老害的行動をする元気を無くしただけですね。
Posted by イト at 2025年01月07日 02:36
バブル崩壊の前後は昭和ひとけたは
「老害」でしたし、昭和のころは、
「大正生まれ」や「明治生まれ」が老害でしたよ。

というか「老害」ということばが
よく使われるようになったのが、
昭和の終わりごろからだと思います。
Posted by たんぽぽ at 2025年01月08日 22:34
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