2016年12月07日

toujyouka016.jpg 非正規雇用と安倍政権の支持

「アベノミクス以後に職に就けた人は安倍政権を支持する」
などとという主張をするかたがいらっしゃります。
これがどのくらい当たっているか、見てみることにします。


 
「アベノミクスで増えた雇用は非正規」ということは
よく言われることなので、異議はないだろうと思います。
厚生労働省が発表した2014年の『就業形態調査』によると、
非正規の割合は40.5%で、2010年より1.8ポイント増えています。

「非正規雇用、ついに4割に」

総務省の『労働力調査』の統計を見ても、非正規の割合は
安倍政権以前からですが、ちゃくちゃくと増え続けています。

正規雇用と非正規雇用の推移



増えた非正規雇用は、ジェンダー別に見ると女性が多くを占めています。

「金融緩和と非正規雇用」
また、男女別にみると、男性が6万人増の56万人、
女性が13万人増の79万人となっており、女性の派遣社員が増えていることがわかる。
非正規社員を性別ごとに見ると、女性が36万人増と増加分の4分の3を占めた。

厚生労働省が発表した2015年の国民生活基礎調査によると、
子どものいる女性の68.1%に仕事ありますが、
そのうち半分以上の54.6%が非正規です。

「女性の労働力率と非正規率」
「平成27年 国民生活基礎調査の概況」

末子の年齢階級別にみた母の仕事の状況

男性との比較を見ると、とくに既婚者において、
女性の正規雇用率が低くなっています。
これは2012年の総務省『就業構造基本調査』のデータなので
安倍政権になる前のものです。

「アベノミクスで増えた雇用は非正規」なら、
女性の正規雇用率はもっと低くなっている、
つまり非正規雇用率が高くなっていると考えられます。



安倍政権の女性からの支持率は、男性と比べるとずっと低めです。
2015年10月9日の日本経済新聞の世論調差では、
男性の支持率51%に対して、女性の支持率は38%です。

「女性に不人気な安倍政権」

安倍内閣の支持率

自民党、安倍政権はそもそもが家族やジェンダーに対して
因習・反動的なので、女性から信用されないことがあるのでしょう。
「アベノミクス」で景気が回復したといっても、
自分たちには低賃金の非正規雇用ばかりなので、
それが不満ということもあるのかもしれないです。


これらを組み合わせると、
1. 安倍政権で増えた雇用は非正規
2. 非正規雇用を得るのは女性が多い
3. 女性は安倍政権を支持しない
ということになります。

「アベノミクス以後に職に就けた人は安倍政権を支持する」
ということはなさそうです。


女性や若年層は低賃金の非正規雇用という、労働市場の周辺部に
追いやられるのは、年功序列、終身雇用、長時間労働といった、
既婚男性に有利な労働文化が温存されるからです。
中高年男性の安定した雇用や収入を維持するために、
女性や若年層にしわ寄せが回っているということです。

「日本はどうして賃金が上がらないのか」
終身雇用制と年功序列が完全にはなくならず、
さらに正規雇用と非正規雇用が固定化したため、
低賃金の労働力が生産性の低い分野に流入した。
日本は若者や女性を虐げ、外国人労働者を排除してきたため、
時代の変化とグローバル化に完全に乗り遅れてしまった

「「日本の非正規雇用はアメリカから見てもヒドイ!」
アベノミクス失速でも安倍首相は捨て身で憲法改正に挑むはず」

戦後の高度成長期を作った体制があまりにもうまく行き過ぎて、
その結果として生まれた既得権益のおかげで、
日本は若い人があまり活躍できない社会になってしまったという点。
団塊世代の雇用を守るために若い世代が
非正規雇用になるといったしわ寄せが生じている。

既婚男性がいかに優遇されるかを示すのが以下の図です。
男性は結婚するときゅうに年収が高くなります。
手当てが増えたり、高収入の役職につきやすくなるからです。



アベノミクスが作り出しているのは、中高年男性の既得権は維持したまま、
女性や若年層を不安定な非正規雇用にまわすという、
従来の状況の維持や強化ということになります。

そして「非正規でも職につけたのだから、
女は安倍政権を支持する」とか、「非正規でも女にも
職があるのだからはるかにまし」という意味のことを、
雇用の安定した既得権の側の中高年男性が言うわけです。

posted by たんぽぽ at 22:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

はてなブックマーク - 非正規雇用と安倍政権の支持 web拍手
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック