林陽子氏の解任を求めて活動していることがわかりました。
「やめてほしい「女性が輝く」はずの日本で、
国連の女性差別撤廃委員会委員長・林陽子氏の解任求める個人攻撃」
(はてなブックマーク)
具体的には、岸田文雄外務大臣あてに即時解任を求める
署名を手わたしたというものです。
理由は慰安婦に関する勧告と、皇室典範にも議論が
およんだことが気に入らなかったようです。
産経の記事を見ると、藤岡信勝、片山さつきと名前が並んでいて、
「ああこの人たちか」という感じです。
「国連日本人委員長を「即時解任せよ」慰安婦問題「不当見解」
「国民運動」が外相宛に署名提出」
「慰安婦の真実国民運動」(加瀬英明代表)は28日までに
同委員会の林陽子委員長(日本弁護士連合会所属)の
即時解任を求める1万1532筆の署名を、
岸田文雄外相宛てに提出した。
「林氏を、同委員会の委員に推薦したのは日本政府に責任がある。
国民の怒りは大きい。即時解任していただきたい」
国民運動の幹事である拓殖大学の藤岡信勝客員教授はこう語った
注目の署名は、自民党政調会長代理・国際情報検討委員会委員長代行である
片山さつき参院議員の立ち会いのもと、
外務省の北郷恭子女性参画推進室長に手渡された。
慰安婦に関する勧告が、2015年12月の日韓合意に
批判的だったことで、日本右翼たちが不満を表していたこと、
それに関係して、林陽子氏を辞めさせろと
騒いでいたのは、多少知ってはいました。
こんなふうに具体的な活動をするところまで
来ているとは思わなかったです。
人権活動をしているNGO関係者が、国や企業から
不当な圧力を加えられたり、暗殺をくわだてられたりする
ということは、国際的に見ても珍しくはないようです。
それでも人権条約機関の現職の委員長に対して
こうしたこと起きるのは、かなり異例なことです。
今回のように人権条約機関の現職の委員長に対して
こんなことが起きるとはあまり例を見ません。私も大変驚きました。
林陽子氏に対する女子差別撤廃委員の委員長解任要求は、
動機の独善性と事態の異例さもさることながら、
法的手続きの上でも、無茶苦茶な言いがかりです。
ひとつは国連の各種委員会の委員は、
出身国の審査には、加わらないことが決められています。
これは審査の公平性を保証するためのもので、
ガイドラインによって定められてもいます。
各国の報告審査については、すべての人権条約機関は、
公平性を維持するため、当該国出身の委員は審査に
関わらないことを慣例とし、かつその作業方法を明文で確認しています。
現在では、このような人権条約機関の作業方法は、
「人権条約機関の委員の独立性及び不偏不党性に関する指針
(アジスアベバ・ガイドライン)」としてまとめられ、
女性差別撤廃委員会もこれに従って行動しているのです。
よって林陽子氏は、日本の審査には参加できないです。
日本の審査でどんな勧告が出ようと、
林陽子氏はいっさい関係がないということです。
これはこれまでにも話題になったことがあるので、
ご存知のかたもいらっしゃると思います。
2015年11月11日の東京新聞でも、次のように言及があります。
「夫婦別姓 頼みは最高裁 4日に大法廷弁論」
委員長は現在、日本人の林陽子弁護士が務める。
自身は出身国として日本の審査に関わらないが、
「人権条約を締結したことで、国はその人権を充足させる義務がある。
憲法と条約に沿った民法改正を即した」と話す。
もうひとつは女子差別撤廃条約の委員は、
締結国会議の選挙で選ばれているので、
日本政府は選出や解任には関われないことがあります。
外務省に女子差別撤廃委員会の委員長の即時解任を
求めたところで、そんな権限はないということです。
権限もないのに、日本の外務省が辞任しろなどと
ものをもうせば、国連の人事に対する不当な口出しとなり、
国際問題に発展する可能性があります。
林委員は女性差別撤廃条約の締約国会議で
選挙により選出されているのであって、
そもそも日本政府は林委員を解任できる立場にはありません。
もし、外務省が国連人権条約機関の人事に口出しすることになれば、
深刻な外交問題と言えるでしょう
日本右翼たちは、女子差別撤廃委員からの勧告が気に入らないので、
審査に加わらなかった目立つ人を解任しろと、
人事に対する権限のない機関に訴えたということです。
まったくの不当な言いがかりであり、
八つ当たりとしか言いようがないです。
目先の不満をわかりやすいスケープゴートのせいにして
憂さ晴らしをするということだと思います。
ある意味彼ららしいやりかただとも、わたしは思います。
>片山さつき
林陽子氏の委員長辞任要求に関しては、
あの片山さつきも賛同し、関与しています。
週刊金曜日の記事を見ると、林陽子氏は日本審査に
加われないことを承知で、解任要求しているようです。
「【NGO】「慰安婦」への謝罪勧告に不服の団体、女性差別撤廃委員長解任を求め署名 11月16日」
国連の委員は出身国報告書審査には関われないことになっており、
林委員長も日本政府報告書審査には一切関わっていない。
片山議員はそのことを承知で林委員長の解任を求めており、極めて不当である
現職の与党議員が、言いがかりを承知で日本が批准している
人権条約に対してこんなことをするのは、
かなり深刻な問題と言わざるをえないです。
後述のように日本政府は、人権活動家に対して
不当な圧力から守る責務があるくらいです。
政府与党の国会議員が、日本が批准している人権条約について
このような敵対的な姿勢を取る、誤解と知りつつ不当な攻撃をする、
というのは重大な問題であると思います。
片山さつきというと、すぐにデマを流す印象があると思います。
生活保護バッシングの音頭をとったことや、
御岳山が噴火したときの事業仕分けに関するデマは、
よく知られていることだと思います。
「自民のリテラシーの劣化」
「御岳山・事業仕分けのデマ」
先日もNHKの貧困高校生の特集番組に対して、
貧困バッシングをする人たちに便乗して、
「NHKに説明を求める」とまで言いだしたのでした。
「子どもの貧困とバッシング」
あまりにもデマを流すことが常態化しているので、
片山さつきは、東大出で官僚出身という知的レベルなのに、
なぜにこんなにデマを繰り返すのかと思うところです。
自分がデマに弱いことをかえりみる様子もなさげです。
こうした一連のデマは、実は事実無根を承知の上で、
わざと流しているのではないか、という気がしています。
今回の林陽子氏の委員長辞任問題で、
その可能性が濃厚になったと、わたしは思います。
>日本政府・外務省
日本政府や外務省は、かかる日本右翼たちからの
署名に対してどうするのかという問題があります。
いまのところ黙って署名を受け取っただけで、
とくになにかしている様子はないです。
林陽子氏を解任する法的権限がないので、
アクションしても無駄どころか、国際問題になる
ということは、外務省も承知しているのでしょう。
さりとて署名提出者たちを問題視したり、
彼らの誤解を解くことも、なにもしてないようです。
日本政府や外務省は、本来人権条約に対する
このような誤解を解く責務があるはずです。
前述のように、人権活動家は不当な圧力を加えられるので、
そうした攻撃から守るべきという国連総会の決議に対して、
日本政府はおおむね賛成をしているからです。
国・政府はこうした不当な攻撃から人権活動家を守るべき、
という国連総会の決議がしばしば出されていて、
日本政府はおおむね賛成の態度を示してきました。
人権条約に対する誤解があるのであれば、
その場で、または別途、きちんと誤解を解くべきです。
そして、締約国である以上、人権条約の機構はこういうものである、
ということについて国民の理解をきちんと得る努力をし、
人権条約機関で公正中立の立場から活動している
専門家を守る責務があります。
日本の外務省は、ドイツのメディアの慰安婦問題に関する
記事がお気に召さないようで、しきりに攻撃したことがありました。
「特派員「外務省が記事を攻撃」 独紙記者の告白、話題」
こうした事情から察するに日本の外務省も、
女子差別撤廃委員の勧告は気に入らないのかもしれないです。
林陽子氏の解任要求の署名を提出した右翼たちと、
実は見解が近いことも考えられます。
それで署名提出者の心情は「理解できる」として、
あえて誤解を解いたり批判したりせず、
放置を決め込むことにした可能性も考えられます。