トランプ当選の警告と教訓についての記事を見てきました。
スティグリッツ氏のインタビュー記事には、
最後に日本についての言及が少しあります。
これを見てみたいと思います。
「スティグリッツ氏警告「トランプは危険人物」>人口減で悲観するな」
人口減少とデフレについては、楽観しすぎていると思います。
日本の過密さを考えると、人口減少は、たぶんいいことだ。
低成長は気にならない。成長率(国内総生産=GDP)に目が行きすぎている。
デフレは、低成長、つまり総需要の不足によって
生み出される症状だから、総需要が増えればプラスになる。
人口減少の楽観論は、「日本は人口がかなり多いから、
少し減ったくらいが適正」というものですが、
高齢者の人口比が今後どんどん高くなっていくことを、
あまり意識していないと思います。
「人口減少社会に向けて」
「2050年の世界の少子高齢化」
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— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2016年5月29日
このあたりは日本を専門に研究しているわけでない
外国人なので、日本の内情についての考察には限界がある、
ということもあるのでしょう。
デフレも少子高齢化が大きな原因となっている以上、
容易に解消しないだろうと思います。
従属人口が多く、生産年齢人口が少ないのは、
社会福祉予算が大きくなり、かつ経済成長を阻害することになり、
相当に負担があることだと思います。
日本は高度経済成長期からバブルの時代にかけて、
人口が増え続けたことが、経済発展の原動力となったのでした。
「失われた20年」の時代になってからは、
少子高齢化が経済成長を阻害することになったのでした。
第二次世界大戦後の日本経済は、
人口構造に強く依存しているのだと思います。
この点については、2050年に日本は世界一の悲惨な国になる
という『エコノミスト』の予想のほうがあたりそうだと思います。
「2050年の世界一悲惨な国」
格差や生産性が問題というのは、わたしも同感です。
私が重視するのは、生活水準や失業率、格差、貧困、時間当たりの生産性だ。
日本の失業率は高くないが、格差は大幅に拡大している。
デフレのような「症状」と違い、こうした点を注視している。
格差が増大し続けていることは、たとえばユニセフの
イノチェンティ・レポートの調査が示しています。
「子どものいる世帯の所得格差」
中位(中央値)の所得と下位10%の所得を比較したとき、
格差がだんだん広がっていることがわかります。
格差拡大は経済成長していたバブルの時代から
起きていることも、注意が必要でしょう。
「失われた20年」が直接の原因ではないことを示唆するからです。
日本の労働1時間あたりの労働生産性があまり高くないことは、
労働問題に多少くわしいかたならご存知でしょう。
OECD加盟国34カ国のうち、日本は21位です。
しかも「先進国」と言われてイメージする国は、
ほとんどどこも日本より労働生産性が高く、
日本より労働生産性の低い国は、OECD加盟国の中では
中進国や開発途上国に近い国がほとんどです。
日本の労働生産性が低い大きな理由のひとつに、
女性の人材登用や、ワークライフバランスが遅れていることがあります。
12月31日エントリで、ジェンダー・エンパワーメント指標と
労働1時間あたりのGDPに相関があることを示しています。
「女性の活躍度と労働生産性」
スティグリッツ氏は、生産性の向上のためには、
基礎研究への投資を増やせと言っています。
これも大事なことだと思います。
気掛かりがあるとすれば、時間当たりの生産性が高くないことだ。
生産性向上には、大学や研究機関への投資を増やし、
より付加価値の高い産業を育成する必要がある。
日本は少子高齢化ですでに人口オーナス期に入っています。
人口が増え続ける時代のように、物量に任せた生産では
かなわなくなり、「質」を高める必要が出ています。
「人口ボーナス・オーナス(2)」
それはつねづね新しい技術革新や、商品、サービスを
生み出していく必要があることになります。
そうなると技術のインフラである基礎研究の水準を
高くしておく必要があるということです。
基礎研究への投資というのは、女性の人材登用と同じくらい
日本人はやりたがらないことだったりします。
こちらでも先行きは暗雲たるものがあります。