解説記事があります。これを見てみたいと思います。
ひとつ目は『民主党政権 失敗の検証』の
日本再建イニシアティブの中野晃一氏による解説です。
ふたつ目は現在の連合会長、神津里季生氏へのインタビュー記事です。
「連合ってなに?(上智大学教授:中野晃一)」
(はてなブックマーク)
「「連合」は誰の味方なのか 神津里季生会長に聞く」
(はてなブックマーク)
「連合」は労働者の権利を守るための日本最大規模の組織であり、
また民進党の支持基盤として政治に強い影響を与えています。
もっと詳しく知っておく必要のあることだと思います。
連合=日本労働組合総連合会は、労働者側の権利を主張する
日本最大の労働組合の組織である。
おもに大企業の労組が加盟しており、賃上げや労働環境の改善などで
労働者を代表して経営者(使用者)側と交渉するのが大きな役割だ。
毎年1〜2月、連合は労働者の意思を代表して、
経営者団体の日本経済団体連合会(経団連)と賃上げについて話し合い、
加盟労組が各企業と賃上げ交渉をする。
春季労使交渉(春闘)という毎年恒例の行事だ。
「連合」の発足は1989年、それまであった「総評」「同盟」という
大きく二つの労働組合が合併してできました。
「総評」は官庁や国鉄などの公務員が中心で、
政治的にはリベラルで、社会党を支持していました。
「同盟」は民間企業の労働組合が中心で、
政治的には中道寄りで民社党を支持していました。
連合が発足したのは1989(平成元)年。
総評(日本労働組合総評議会)、同盟(全日本労働総同盟)、
中立労連(中立労働組合連絡会議)、新産別(全国産業別労働組合連合)の
4労働組合が、「労働戦線統一」として集結するなど
1980年代初めからの動きを経て結成した。
合併したのは労働組合の弱体化が大きな原因です。
高度経済成長期に労働組合の組織率が下がり続け、
さらに日本三公社の民営化で「総評」が弱体化していきました。
それで労働組合の再編が必要と感じるようになり、
ひとつの組織にまとまることになりました。
このときこれを「右寄りの再編」だとして反発した
「総評」の中の勢力が、共産党支持の全労連という
別の労働組合を作ることになりました。
「連合」は組織自体も大規模ですし、成り立ちがそもそも
複数の組織を統合してできたものなので、
内部は「一枚岩」とはとても言えない状況になっています。
旧総評系の「左派」と旧同盟系の「右派」とがあり、
それぞれリベラル系と保守系の民進党議員を支持しています。
民進党内にリベラル系と保守系が混在して、
統一感のない政策や意思決定をしばしばしますが、
それと同様の混在が、支持基盤の連合にもある感じです。
民進党のリベラルと保守の議員が混在するのは、
支持基盤の反映でもあるということです。
「連合」内部では「右派」が優位に立っていて、
トップや幹部は右派が占めているという問題があります。
もともと左派系の「総評」が弱体化したゆえの統合でしたし、
組織率はエネルギー関連産業がもっとも高く、
公務員は減っていることがあります。
連合トップが、ともすると右派のなかでも使用者べったりの
「御用組合」出身の「労働貴族」で占められていることがあげられます。
実は労働組合の組織率を業種別でみると、電力を含む
エネルギー関連産業がもっとも高く、いまだに6割を超えています。
他方、公務員は職員数自体がここ20年以上
減りつづけているうえに、組織率の下落も進んでいます。
このことと、連合内で右派が優位に立っていることは無縁ではありません
「連合」が野党共闘で共産党と組めないと言ったり、
電力総研が力を持って、原発推進の候補者を支援しようとするのは、
「右派」が強く意思決定を左右しやすいこともあります。
インタビュー記事の神津里季生氏も「右派」出身です。
「選挙で民進3連敗 野田幹事長と連合はまるで“減票マシン”」
ご存知のように「連合」の組合員数は減り続けています。
ひとつは産業構造の変化で、製造業が減って来たこと。
もうひとつ非正規雇用が増えたことです。
──1990年に808万人だった「連合」の組合員数は、
2015年に682万人まで減少していますね。
組合員が減ったのは、いくつか理由があります。1つは産業構造の変化。
労働組合は昔からサービス業よりも製造業のほうが多いのですが、
その製造業が産業構造の変化で減ってきた。
次に、労働者全体ではこの20年で正規労働者が減ったのも要因です。
その分、非正規労働者が増えた。
ここ10年ほどは、連合も非正規雇用の
組合員を増やす努力を続けています。
そうしないと組織率が上がらず、先細っていくからです。
それでも非正規雇用の組合員は全体の15%というのは、
だんだん増えているとはいえ、じゅうぶん多いとは言えないです。
連合も特にこの10年ほど、非正規労働者の組合員の加盟に
重点を置いて取り組んでおり、その結果、連合の中で
非正規労働者の組合員は約15%まで占めるようになりました。
2007年には「非正規労働センター」を設置し、
パートタイムなど非正規労働者の抱える課題を解決する
取り組みを今まで以上に推進しています。
以前は連合本部自体が組合員を増やす活動を直接的に
あまりしてこなかったのですが、今はかなり力を入れてきています。
「連合」というと、大企業の正規雇用の中高年男性中心で、
非正規雇用の若年層や女性の権利を代弁していない、
というイメージがあると思います。
これは連合の幹部を「右派」が占めていることや、
非正規雇用の組織率が低いことによるのでしょう。
これらは表裏一体の関係にもなっていて、
ひとつの問題として考えることもできると思います。
この大きな原因に、非正規雇用(派遣労働や契約社員、
臨時職員など)の増加があります。つまり従来の労働組合は、
若者や女性に特に多い非正規労働者の受け皿として、
充分に機能を果たすことができていないのです。
このことと表裏をなしている問題が、
「労働貴族」や「御用組合」と批判される、
一部の特権的な労働組合幹部の使用者や政府との癒着です。
2016年の4月-9月の半年は、組合員が13万5000人増える
という、これまでにない組織率の上昇がありました。
最近は増加傾向に反転しています。
今年4月から9月までの半年間で13万5000人。
この短期間でこれだけ増えたのは、連合が始まって以来のことでね。
すごく大きな変化だと思っています。
これは次のように非正規雇用や女性労働者の権利のために
力を入れるようになったことが大きいです。
労働問題で相談に来てサポートを受けたかたが、
組合に加入するというケースが多いようです。
──組合員が半年で13万5000人増えたのはなぜですか。
それぞれの組織の努力の賜物です。
連合本部や地方連合会(都道府県単位の連合の地方支部)の
取り組みとして有効だったのは、“労働相談ダイヤル”です。
この電話にパワハラ、セクハラ、マタハラといった相談が
いっぱい来るわけです。昨年は年間1万6000件。
たとえば不当解雇と思われるケースなら、地方連合会が
「これは不当解雇だから、ちゃんと権利を主張すべきです」と助言をし、
一緒に問題解決を図りましょうと働きかけた。
そうしたサポートをする中で組合員が増えています。
こうしてみると、労働組合は労働者の権利を守る手段として、
依然としてもっとも強力かつ効果的であり、
その存在意義はぜんぜん失われていないどころか、
もっと活用する必要があると思うところです。
上述の「連合」の最近の傾向から考えれば、
従来の正規雇用の男性中心から脱却して、
非正規雇用や女性労働者の権利を代表するよう、
今後変化する可能性はじゅうぶんあることになります。
非正規雇用や女性の組合員が増えれば、
「連合」の左派の発言力が増して、幹部を右派が占めたり、
連合が原発推進や共産党との共闘拒否といった
右派中心の政策や、選挙対策を取りたがる体質から
脱却する可能性もあると思います。