2017年01月08日

toujyouka016.jpg 日本死ね・俵万智に批判集中

12月のはじめなのでだいぶ前になりますが、
「保育園落ちた日本死ね」ユーキャンの流行語に
入賞した
ことに反発する人たちは、審査委員の俵万智氏に、
批判を集中させているというニュースです。

「「日本死ね」トップテン入りで、審査委員の俵万智さんに「残念で仕方ない」と批判・炎上」
「流行語大賞にノミネートされ、トップ10入りをした「保育園落ちた日本死ね」。
「反日的だ」などとバッシングの矛先が向いた歌人がいる。」


 
最初に指摘したいのは以下のツイートです。
バッシングに興じる人たちは、審査委員は6人いるのに、
俵万智氏に批判を集中させていることです。
好感度の高い女性という叩きやすくて、萎縮させたとき
効果の大きそうな相手を狙うということです。
ここからすでに「ミソジニー」が始まっています。



猛烈な批判に対する俵万智氏のコメントは次のようです。
「保育園落ちた日本死ね」に共感し、支持したかたたちの考えも、
おおむねこれと同様だと思います。


「流行語=よいことば、きれいなことば」である必要はないでしょう。
いわゆる悪いことばであっても、インパクトがあったとか、
社会を動かす影響力があれば、よいということです。


俵万智氏のコメントに対する反響ですが、
百田尚樹氏が「「日本しね」は世の中を少しも動かしていない」
などと言ってのけています。


「保育園落ちた日本死ね」がおよぼした影響については、
12月4日エントリでお話しています。

「保育園落ちた・流行語受賞」

ネットの匿名の記事が発端で、国会の審議で取り上げられ、
署名がなされ、集会が開かれ、待機児童や保育士の待遇について
多くの人たちが議論をし、その後も国会でも議論となり
まがりなりにも政権が対応することになったのでした。

ネットの無名人のことばが政治を動かしたのでした。
それまで政治課題のすみに押しやられていた待機児童問題を、
一躍重要課題として注目させることになったのでした。
そして待機児童問題で不満を持ち続けていた人たちには、
ひとつの希望となったのでした。

「1年の間に軽妙に世相を表現している“言葉”、
広く大衆の目や口、耳をにぎわせた“言葉”の中から選出」
という受賞の基準に合致していると言えます。


「保育園落ちた日本死ね」は流行語に選ばれたあとも、
百田尚樹氏やつるの剛士氏をはじめ、ネットでもリアルでも
ごちゃごちゃと難癖をつける人たちが続出です。

おかげでもう一度議論をせざるをえなくなったのですが、
ふたたび話題になるくらい、影響力は大きいことになります。
選ばれた流行語の中で、受賞のあとも議論になっているのは、
「保育園落ちた日本死ね」だけだろうと思います。

「世の中を少しも動かしていない」という百田尚樹氏は、
(ご自分ももう一度流行語にしている一員という
皮肉にもかかわらず)、いったいどこを見ているのかと思います。

さすがに「流行語=よいことば」でなくてもよい、
というのは、反対できなかったのかもしれないです。
それで「世の中を動かしていない」と
影響力のほうを否定にかかったのですが、
根拠がまったくなかったということです。


国粋主義者は露骨に「反日的活動」とレッテルを貼ってきます。
日本を愛して欲しいならよい政治をすることです。
保育園問題にろくに対処しない劣悪な政治を続けていれば、
日本の社会や政治が批判されるのは当然です。


よい政治をする気がまったくなく、劣悪な政治を批判されても
「反日的」とレッテルを貼るだけというのは、
もっとも嫌われ憎まれてしかるべき態度です。
アンリ・バルビュス作『クラルテ』の一節、
「狂気じみた愛国心はうじ虫」というのは、
いまでも当たっていることになりそうです。


「待機児童問題は以前から対策していた」と、
「後出しじゃんけん」のような言い訳をする人もいます。
保育問題に対する日本社会の理解のなさは、
この人を含めて「保育園落ちた」に猛烈なバッシングを
する人たちが多いことが、よく示しています。


それ以前からずっと放置していた保育士の給与を
2%引き上げる案を、安倍政権が実行しはじめたのは、
「保育園落ちた」によって議論がなされたためであること、
これだけ話題になっても、安倍政権による保育士の待遇改善対策は
ふじゅうぶんであることを、ここでは挙げておきます。

「保育士給与2%引き上げ案」
「保育士の賃金は女性の平均?」


「保育園落ちた」は家族・ジェンダーに関する問題です。
そして匿名記事の作者は女性であり、
国会で取り上げて話題にした山尾志桜里議員も女性です。
日本社会の「ミソジニー」が「くだらない」と
軽視してきた「オンナコドモ」による
「オンナコドモ」の問題ということです。

議論を広めた山尾志桜里議員は民進党、野党の議員です。
そして批判対象は日本の社会ないし政治です。
国粋主義者たちが敵視する野党から出て、
自分たちがよって立つ(ともすれば自分と一体化している)、
日本の体制が批判されたことになります。

「保育園落ちた」は、ナショナリズムとミソジニーの両方で、
日本社会が差別と敵視をしてきた対象から
自分たちに突きつけられた批判ということになります。
「保育園落ちた」がこれだけバッシングを受け続けるのは、
ナショナリズム、ミソジニーという日本社会の暗部を
両方えぐったということだと思います。

posted by たんぽぽ at 23:04 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
たんぽぽ様、こんにちは。
なんかこういう人たちって、学習能力がないんだろうな、としか感想が出ないですね。論法も言っていることも、いつも通り定型文。
女性専用車両の反対派を連想しましたよ。
木を見て森を見ないどころか、あさっての方向を向いて揚げ足を取ろうとしているような違和感。
こういう人たちと「論戦」できる人は本当にすごいと思います。
Posted by aka21 at 2017年01月12日 15:56
aka21さま、こちらにコメントありがとうございます。

>なんかこういう人たちって、学習能力がないんだろうな、としか感想が出ないですね

「受賞したのが匿名記事を書いた本人でないのがおかしい」とか、
枝葉末節ばかりことさらに強調してきますしね。
この問題に関しては、核心を突かれたので、
まともに反論できないということはあるのでしょう。

>論法も言っていることも、いつも通り定型文。

「こういうときはこう言う」というパターンが、
マニュアルのように決まっているのでしょう。
自分で考えられないということでもあると思います。


>こういう人たちと「論戦」できる人は本当にすごいと思います

わたしもすごいと思いますよ。

わたしは「論戦」できないです。
(どうしても「論戦」せざるをえないときは、
できるだけ相手の地の利が使えないところでやります。)
Posted by たんぽぽ at 2017年01月12日 22:01
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