「保育園落ちた日本死ね」がユーキャンの流行語に
入賞したことに反発する人たちは、審査委員の俵万智氏に、
批判を集中させているというニュースです。
「「日本死ね」トップテン入りで、審査委員の俵万智さんに「残念で仕方ない」と批判・炎上」
「流行語大賞にノミネートされ、トップ10入りをした「保育園落ちた日本死ね」。
「反日的だ」などとバッシングの矛先が向いた歌人がいる。」
最初に指摘したいのは以下のツイートです。
バッシングに興じる人たちは、審査委員は6人いるのに、
俵万智氏に批判を集中させていることです。
好感度の高い女性という叩きやすくて、萎縮させたとき
効果の大きそうな相手を狙うということです。
ここからすでに「ミソジニー」が始まっています。
6人いる審査委員の中で、ひとりを生贄にするなら俵さんという、いつもの手口。
— Kazuko Ito 伊藤和子 (@KazukoIto_Law) 2016年12月9日
女性で好感度の高い人をあえて叩き、周囲を萎縮、沈黙させる。卑劣です。負けないで
「日本死ね」議論 流行語大賞の審査委員・俵万智氏に批判相次ぐ #ldnews https://t.co/p9lP3KdIx8
猛烈な批判に対する俵万智氏のコメントは次のようです。
「保育園落ちた日本死ね」に共感し、支持したかたたちの考えも、
おおむねこれと同様だと思います。
「死ね」が、いい言葉だなんて私も思わない。でも、その毒が、ハチの一刺しのように効いて、待機児童問題の深刻さを投げかけた。世の中を動かした。そこには言葉の力がありました。お母さんが、こんな言葉を遣わなくていい社会になってほしいし、日本という国も日本語も、心から愛しています。
— 俵万智 (@tawara_machi) 2016年12月10日
「流行語=よいことば、きれいなことば」である必要はないでしょう。
いわゆる悪いことばであっても、インパクトがあったとか、
社会を動かす影響力があれば、よいということです。
俵万智氏のコメントに対する反響ですが、
百田尚樹氏が「「日本しね」は世の中を少しも動かしていない」
などと言ってのけています。
俵万智氏は35文字以内なら、素晴らしい文をお書きになるのだろう。しかし少し長い文を書くと、中学生の作文並になる。「日本しね」は世の中を少しも動かしていないし、深刻さを投げかけるのがいいなら、「土人」の方がインパクトがあったのでは?https://t.co/4b1cVcSizP
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2016年12月11日
「保育園落ちた日本死ね」がおよぼした影響については、
12月4日エントリでお話しています。
「保育園落ちた・流行語受賞」
ネットの匿名の記事が発端で、国会の審議で取り上げられ、
署名がなされ、集会が開かれ、待機児童や保育士の待遇について
多くの人たちが議論をし、その後も国会でも議論となり
まがりなりにも政権が対応することになったのでした。
ネットの無名人のことばが政治を動かしたのでした。
それまで政治課題のすみに押しやられていた待機児童問題を、
一躍重要課題として注目させることになったのでした。
そして待機児童問題で不満を持ち続けていた人たちには、
ひとつの希望となったのでした。
「1年の間に軽妙に世相を表現している“言葉”、
広く大衆の目や口、耳をにぎわせた“言葉”の中から選出」
という受賞の基準に合致していると言えます。
「保育園落ちた日本死ね」は流行語に選ばれたあとも、
百田尚樹氏やつるの剛士氏をはじめ、ネットでもリアルでも
ごちゃごちゃと難癖をつける人たちが続出です。
おかげでもう一度議論をせざるをえなくなったのですが、
ふたたび話題になるくらい、影響力は大きいことになります。
選ばれた流行語の中で、受賞のあとも議論になっているのは、
「保育園落ちた日本死ね」だけだろうと思います。
「世の中を少しも動かしていない」という百田尚樹氏は、
(ご自分ももう一度流行語にしている一員という
皮肉にもかかわらず)、いったいどこを見ているのかと思います。
さすがに「流行語=よいことば」でなくてもよい、
というのは、反対できなかったのかもしれないです。
それで「世の中を動かしていない」と
影響力のほうを否定にかかったのですが、
根拠がまったくなかったということです。
国粋主義者は露骨に「反日的活動」とレッテルを貼ってきます。
日本を愛して欲しいならよい政治をすることです。
保育園問題にろくに対処しない劣悪な政治を続けていれば、
日本の社会や政治が批判されるのは当然です。
釈明や説明がいる時点で流行語ではありません。
— ぴー (@piijpn) 2016年12月10日
保育園落ちた日本◯◯には思い通りにならなかったから吐き捨てた言葉にしかお見受けできませんが?
愚劣な発表の場を使い反日的な活動をするのはお辞めください!@tawara_machi https://t.co/ClKshWyb9O
よい政治をする気がまったくなく、劣悪な政治を批判されても
「反日的」とレッテルを貼るだけというのは、
もっとも嫌われ憎まれてしかるべき態度です。
アンリ・バルビュス作『クラルテ』の一節、
「狂気じみた愛国心はうじ虫」というのは、
いまでも当たっていることになりそうです。
「待機児童問題は以前から対策していた」と、
「後出しじゃんけん」のような言い訳をする人もいます。
保育問題に対する日本社会の理解のなさは、
この人を含めて「保育園落ちた」に猛烈なバッシングを
する人たちが多いことが、よく示しています。
@tawara_machi 言い訳したいのは分かります。でも愛している国を「日本しね」と言われて流行語に選ぶ・・・意味不明です。
— ぴんくくま (@MinominoMtm2000) 2016年12月10日
そもそも待機児童問題は以前からあるし、あの憎悪の言葉が出たことをきっかけに対策がなされたわけではありません。
それ以前からずっと放置していた保育士の給与を
2%引き上げる案を、安倍政権が実行しはじめたのは、
「保育園落ちた」によって議論がなされたためであること、
これだけ話題になっても、安倍政権による保育士の待遇改善対策は
ふじゅうぶんであることを、ここでは挙げておきます。
「保育士給与2%引き上げ案」
「保育士の賃金は女性の平均?」
「保育園落ちた」は家族・ジェンダーに関する問題です。
そして匿名記事の作者は女性であり、
国会で取り上げて話題にした山尾志桜里議員も女性です。
日本社会の「ミソジニー」が「くだらない」と
軽視してきた「オンナコドモ」による
「オンナコドモ」の問題ということです。
議論を広めた山尾志桜里議員は民進党、野党の議員です。
そして批判対象は日本の社会ないし政治です。
国粋主義者たちが敵視する野党から出て、
自分たちがよって立つ(ともすれば自分と一体化している)、
日本の体制が批判されたことになります。
「保育園落ちた」は、ナショナリズムとミソジニーの両方で、
日本社会が差別と敵視をしてきた対象から
自分たちに突きつけられた批判ということになります。
「保育園落ちた」がこれだけバッシングを受け続けるのは、
ナショナリズム、ミソジニーという日本社会の暗部を
両方えぐったということだと思います。
なんかこういう人たちって、学習能力がないんだろうな、としか感想が出ないですね。論法も言っていることも、いつも通り定型文。
女性専用車両の反対派を連想しましたよ。
木を見て森を見ないどころか、あさっての方向を向いて揚げ足を取ろうとしているような違和感。
こういう人たちと「論戦」できる人は本当にすごいと思います。
>なんかこういう人たちって、学習能力がないんだろうな、としか感想が出ないですね
「受賞したのが匿名記事を書いた本人でないのがおかしい」とか、
枝葉末節ばかりことさらに強調してきますしね。
この問題に関しては、核心を突かれたので、
まともに反論できないということはあるのでしょう。
>論法も言っていることも、いつも通り定型文。
「こういうときはこう言う」というパターンが、
マニュアルのように決まっているのでしょう。
自分で考えられないということでもあると思います。
>こういう人たちと「論戦」できる人は本当にすごいと思います
わたしもすごいと思いますよ。
わたしは「論戦」できないです。
(どうしても「論戦」せざるをえないときは、
できるだけ相手の地の利が使えないところでやります。)