2017年01月09日

toujyouka016.jpg 連合・労働運動と野党共闘

1月4日エントリの続き。

中野晃一氏による「連合」の解説記事を見ると、
「総がかり行動実行委員会」について触れられています。

「連合ってなに?(上智大学教授:中野晃一)」
(はてなブックマーク)

安倍政権のもたらした平和憲法の危機に際して、
その確執を乗り越えるようになってきました。
こうして2014年12月に発足されたのが、
「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」なのです。

 
「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」は、
連合左派が支援する「1000人委員会」、
共産党系の諸団体が構成する「憲法恊働センター」、
無党派市民の平和運動「解釈で憲法9条壊すな!実行委員会」が、
連携して作られた委員会です。

「総がかり」って?

概略図を見ればわかるように、民進、共産、自由、社民の
立憲4党による野党共闘の基盤となる構造となっています。
「総がかり行動実行委員会」ができた時点で、
立憲4党の共闘の素地はできたことになります。

労働組合が労働問題以外の市民運動に関わるのは、
労働者は同時に一般の市民でもあるので、
一般市民を代弁するべく、市民運動一般に関わることになります。

実際には市民の多くが同時に労働者でもあることから、
狭い意味での労働運動だけでなく、平和運動など、
より広い市民運動を支えていることがあります。


連合左派と共産党系の全労連は、かつて分裂したあいだがらであり、
おたがいに確執もあったのでした。
それでも重要政策のスタンスが近いこともあって、
その確執を乗り越えて、共闘しているということです。

共産党はご存知のように、従来はずっと他党との
共闘をかたくなに拒絶してきたのでした。
その共産党が共闘に参加するのは(安倍政権のもたらす危機が
それだけ強いということでもありますが)、
きわめて画期的なことになるでしょう。


現在「総がかり行動」や野党共闘に反発するのは連合右派です。
重要政策のスタンスが、共産党から離れているので、
相容れないということだと思います。

だからこそ「総がかり」の動きは、連合右派の反発と警戒を招いています。
右派出身の連合会長をはじめ、「連合」が野党共闘に反対し、
横やりを入れるような言動を繰り返すのはこのためでもあります。

神津里季生連合会長のインタビュー記事を見ても、
共産党とは「共闘」はできないことを、かなりくわしく話しています。

──やはり共産党とは手を結べない。
そこは一線を画します。
共産党は連合に対して、歴史的に攻撃してきたとか、
あるいは強い影響を与えようとしてきた存在ですから。

連合結成の時も「共産党を支持したい」と離れていった人たちがいる。
そうした人たちが「統一戦線促進労働組合懇談会(統一労組懇)」
という(共産党系の)組織に合流してできたのが
「全国労働組合総連合(全労連)」。
僕ら連合の路線とまったく違うのです。
僕はね、“共闘”という言葉に違和感をもっている。
“共闘”というのは文字通り政策も合わせていくことでしょう。
しかし、共産党と同じ政策なんてできるのか。

消費税とか社会保障、さらに言えば、天皇制や自衛隊への考え方。
国の在り方に関わる根本がまったく違うでしょう。
なのに、形だけ協定を結んで、お互いに推薦し合うのは
欺瞞だと思っている。それが“共闘”なんですか、と。

この期におよんで、こんなことを言っている
「余裕」はあるのかと、わたしは思います。
共産党は向こうから歩み寄ってきたし、
直接分裂しあった関係である連合左派は、共産党との共闘に積極的です。
選挙に勝てなければ、どんな立派なことを言っても、
「口先だけ」に終わることになります。


連合右派は共闘候補の選挙に「協力」することは、
候補者によってはありますが、現在のところはこれ以上、
野党共闘に接近する見込みはないようです。
それならどうしたらいいか、中野晃一氏は次のように述べています。

もうこの際、連合も民進党もきっぱり左右に割れてしまったほうが
せいせいするのではないか、という考えもあるでしょう。

しかし残念ながら、ことはそんなに単純ではありません。
というのも、新自由主義が広まるなかで安易な
労働組合バッシングが横行してしまうと、
そのバッシングが労働組合そのものに対する攻撃に
利用される危険性があるからです。昨今の連合批判も、
その意味では気をつけなければならないところがあります。

ただ単に、労働組合や連合全体を「悪」と決めつけてしまっては、
かえって安倍政権とそれにべったりと癒着した
日本経団連の高笑いを誘うだけです。

はじめに、妥協性のあまりない人によくありがちな
「あいつらを追い出せ」は好ましくないと、釘を刺しています。
それは労働組合そのもの対する攻撃に利用される可能性があり、
安倍政権と経団連を結果的に利することになると、
政治的な悪影響について述べています。

このような見解を示せるというところに、
バランスのある政治感覚を感じさせると、わたしは思います。
(左の政治ブログをたくさん見てきたわたしに言わせると、
彼らがすぐ「あいつらを追い出せ」と
言い出す狭量さに、へきえきしています。)


なにをしたらよいかについては、
1. 連合、民進党の右派が改憲勢力に合流するのを防ぐ
2. 連合左派を支援し、彼らの発言力の強化をはかる
3. 女性労働者や非正規雇用の人たちの声を届けるようにする
といったことが挙げられています。

私たちにできることは、連合や民進党の右派が改憲勢力に
合流することをくいとめつつ、連合左派を応援し、
連合内外における発言権の強化を後押しすることです。

そのためには、労働運動全体にもっともっと
女性や若者ら非正規雇用の人びとや、「サービス残業」の蔓延や過労に
追い込まれている働き手すべての声を届けて、
働きかけ、変えていくことが必要条件となります。

大切なことは、あきらめずに(そしてダメだと決めつけずに)
アプローチしてみることです。
ナショナルセンター以下のどこかのレベルで直接働きかけてもいいでしょうし、
それが無理ならツイッターなどSNSで要望や
叱咤激励の声をあげるのも有効です。

これら(とくに3.)については、1月4日エントリで触れたように、
連合は組織率の低下を解消するために、
女性労働者や非正規雇用の権利を守る活動に積極的になっていて、
非正規雇用の組合員は増加する傾向にあります。

非正規雇用の組合員を増やす動きは、神津里季生連合会長が
インタビュー記事でも評価しているように、
連合右派でも積極的であると思われます。
よって将来的には、野党共闘への協力に
連合の方向性がシフトしていく可能性はあります。


労働運動が真の意味で日本のすべての労働者を
代表しようとしないかぎり、経済における労使のバランスも、
政治における与野党間のバランスも、回復しようがないのです。
それでは経済も政治も、未来が描けません。

特に連合は、日本最大のナショナルセンターであり、なおさらその必要があります。
労働運動がより広い市民社会の公益を追求するよう
「体質改善」するために、私たち市民が労働運動の意義と課題を踏まえて、
参加、関与、対話の機会を増やしていくことが重要なのです。

記事の最後の記述を見ると、「連合」ないし労働運動は、
いまもって既婚男性中心の55年体制的な労働文化の意識から、
抜けきっていないということだと思います。
ジェンダーや非正規労働者に関する企業文化は、
経営者側の体質が問題になることが多いですが、
同様の問題は労働組合の側にもあるということです。

非正規雇用や女性労働者を含めたすべての労働者を、
労働運動が代弁するようになってはじめて、
現在の与党・安倍政権と対峙できる市民運動および
野党共闘になるということだと言えます。

この観点から考えると、2009年の民主党政権が頓挫したのは、
労働運動や市民運動が55年体制的体質から
抜けきっておらず、女性や非正規労働者をじゅうぶん
代弁していなかったから、ということになりそうです。


一般市民の多くが同時に労働者でもあること、
連合が最大野党・民進党の重要な支持基盤であることを考えると、
労働運動の意義はとても重要だと、改めて感じるところです。

posted by たんぽぽ at 23:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治活動・市民運動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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