2017年02月04日

mar0006.gif生活保護・威圧のジャンパー

少し前のニュースですが、かなり話題になったことです。
小田原の生活保護を担当する職員が、生活保護の受給者を威圧する
文章を書いたジャンパーを着ていたのでした。

「生活保護「なめんな」、上着にプリント 小田原市職員ら」
(はてなブックマーク)

「「生活保護なめんな」 小田原 市職員、ジャンパーに文言」
(はてなブックマーク)

「生活保護「なめんな」 市職員がジャンパーに文言」
(はてなブックマーク)

「市職員が「不正受給許さない」のジャンパー 厳重注意」
(はてなブックマーク)

 
問題のジャンパーは以下のような文章がプリントされています。
ローマ字で「保護なめんな」と書いてあり、
背中の側は不正受給を糾弾する主旨の文章があります。

ローマ字で「保護なめんな」などとプリントされたジャンパーのエンブレム

小田原市職員のジャンパーの背面。英文で生活保護の不正受給を非難している

「保護なめんな」などとプリントされたジャンパー


生活保護と聞いて不正受給をやたらと問題にするのは、
まさに生活保護に差別意識と偏見を持った人たちの典型です。
行政に携わるものが差別や偏見に便乗する
というだけでも、じゅうぶん問題なことです。

日本の生活保護の不正受給の割合は、0.4%程度でごく低いです。
こんなごく限られた存在が大きく見えるのは、
「生活保護受給者は他人の税金で寄生する悪質な存在」
という偏見がそれだけ強いことになります。

「今、ニッポンの生活保護制度はどうなっているの?」

不正受給件数、額の変化

日本の生活保護の捕捉率は2割もなく、5割から9割以上という
欧米の民主主義国と比べて圧倒的に低いです。
生活保護の捕捉率を高めるべく、管轄内の困窮者を
見逃さないことが、彼ら行政に携わる者の本来の業務のはずです。

利用率・捕捉率の比較(2010年)


このジャンパーを着て受給者の家庭を訪問する職員もいたのでした。
もともとケースワーカーだとわかるいでたちで
生活保護受給者の家を訪問するのはご法度です。
それだけで受給者のスティグマを強化することになるからです。


それだけでなく、「不正受給許すまじ」という
受給者を恫喝するジャンパーを着るというのは、
受給者に対していよいよ威圧的に働くことになります。


問題のジャンパーは10年前の2007年に職員が私的に作り、
職場で着用されていたものです。
一着4400円で希望する職員が自費で購入し、
これまでに64人が購入、現在は28人が所有しています。

このジャンパーはもともと、職場の連帯感を高めるため
10年前の平成19年に有志の職員によって作られ、
職場で着用されていましたが、その後、一部の職員が
受給者の家庭を回って支援に関する相談に
応じる際などにも着ていたということです。

ジャンパーは業者に製作を依頼してまとめて購入したあと
1着4400円で希望する職員に販売され、
これまでに64人が購入したということです。
小田原市では07年、生活保護費の支給を打ち切られた男が
市職員3人を杖やカッターナイフで負傷させる事件があった。
市によると、当時の生活保護担当職員らが事件後、
不正受給を許さないというメッセージを盛り込み、このジャンパーを作った。
その後、担当になった職員らが自費で購入。
現在は28人が所有しているという。


10年前からいままで、ずっと問題にならずにいた
ということが、はじめに大きな問題だと思います。
小田原市の生活保護業務は、不正受給をあげつらうジャンパーが
生活保護に対する差別と偏見であることを
それだけ長いあいだ問題にしなかったということだからです。

購入した人が64人いて、現在の所持者が28人ですから、
このジャンパーはそれなりに大掛かりに広めたと思います。
職場で着ている職員もいて、まわりにいる人たちも
何度となく見ただろうと思います。

職場のある程度以上責任ある地位の人や
ほかの部署の人たちも、それなりに知っていたと思います。
そうした人たちの容認や黙認(もしかすると支持や協力も)が
あったことにもなるでしょう。

(いくつかの記事を見ると、責任ある地位の職員は、
ジャンパーについて事情をはっきり知らなかった
という趣旨のコメントをしていますが、
本当に知らなかったのか、わたしは怪しいと見ています。)


小田原市では、2007年に生活保護の支給を打ち切られた人によって、
職員3人が負傷した事件があったのでした。
これがジャンパーを作るきっかけだったのでした。

ここで貧困者を暴力沙汰に走らせる
日本の福祉の貧しさを問題にするのでもなく、
「暴力は許せない」という主張さえするのでもなく、
生活保護の受給者バッシングに走るのは、
それだけ生活保護に対する差別意識があるからだと思います。

自分たちが差別し偏見の対象としている相手から
負傷を負ったので、とりわけ恨みと憎しみを感じて、
生活保護受給者に対する「報復措置」をした
ということだと考えられるからです。

(そもそも職員に負傷を負わせた人が、
不正受給をしていたかどうかもわからないです。
不正受給をしていたのでないなら、まったくのとばっちりか
言いがかりということになります。)


「われわれは正義であり、正義でなくてはならない」などと
ジャンパーに書いていることも問題です。
差別と偏見を露呈しながら、なにが「正義」かと思います。
自分たちは正義だと確信すると往々にして迷走するという、
まさしく「正義の暴走」だろうと思います。


さすがに問題になったこともあって小田原市では1月16日から、
くだんのジャンパーを着ることを禁止しています。

ところが小田原の関係者の謝罪コメントが、
「日本的謝罪」というか、要領を得ないものとなっています。

小田原市は「市民の誤解を招きかねないうえ、
品位を欠いた表現で不適切だった」として、
ジャンパーの着用を禁止するとともに、上司ら7人を厳重注意としました。

小田原市福祉健康部の日比谷正人部長は
「市民に不快な思いをさせたことを深くおわびします」と話しています。

また、小田原市の加藤憲一市長は「配慮を欠いた不適切な表現であり、
市民の皆様に誤解を与えることのないよう指導を徹底します」
というコメントを出しました。

くだんのジャンパーは生活保護受給者に対する
人権侵害であり、保護を受ける機会の抑制に働き、
貧困が潜伏することになりかねないです。

ケースワーカーの経験がある関西国際大の
道中隆教授(社会保障論)は「前代未聞の事態。
生活保護を受ける機会を抑制する人権侵害にほかならず、
貧困の潜在化を招きかねない」と問題視している。


生活保護に関わる職員の「実施の心得」(職務規定を
示したものと思われる)にも違反するし、
そもそも生活保護法に違反する可能性もあります。



品位を欠いたとか、配慮を欠いたとか、市民を不快にしたとか
そんなレベルのことではないでしょう。


これを小田原だけのことと考えられるか、という問題があります。
日本の自治体の生活保護に対するスタンスは、
「窓ぎわ作戦」が蔓延していることが示すように、
どこも似たようなものだと思います。

ジャンパーという目立つ物的証拠があるから、
小田原が問題になったというだけで、
ほかの自治体も、多かれ少なかれ同じような体質を
抱えているのではないかと思います。

posted by たんぽぽ at 19:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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