詳しく解説した対談記事があるので、見てみたいと思います。
「オルタナ右翼を考える」
(はてなブックマーク)
今月20日、共和党のドナルド・トランプ氏による新政権が発足した。
そんな中、トランプ氏の大統領就任に反対するデモは各地で行われ、
人種差別、女性蔑視、移民排斥に対する危機感を訴える声が広がっている。
大統領選において早くからトランプ氏を支持し、
ネット上で過激な発言を繰り返している「オルタナ右翼」とは一体何なのか。
記事はいささかわかりにくいかもしれないです。
対談記事なので、いろいろなお話に飛ぶことに加えて、
「オルタナ右翼」の描像がすっかりとらえきれていなくて、
「こういうものあるしああいうのもある」という
論調になっていることもあるでしょう。
日本のネトウヨとの違いについてもさかんに問題にしています。
日本で生活している人たちには、とても気になるところですし、
またアメリカのオルタナ右翼をイメージするためにも、
よく知っているものとの差異を見ることは有効だからです。
>「オルタナ右翼」、新しいタイプの右翼
「オルタナ右翼」の基本イデオロギーは、
反マイノリティ、反フェミニズム、反リベラルです。
白人優越主義を標榜し、優生思想を信奉するレイシズムでもあり、
反ユダヤ主義や、反イスラム、黒人差別も展開します。
経済政策は「小さな政府主義」で、「税金はもうたくさん」の
あの「ティーパーティ」に萌芽があったと言えそうです。
対外的には孤立主義(反「外部」主義とでも言えるか?)で、
保護貿易主義、排外主義、移民排斥主義を展開します。
黒人差別の内容もあって、今もアメリカでは黒人が警察に
不当に扱われるような事件が多発していますが、
「黒人はみんな犯罪者だ」「黒人がまた犯罪を起こした」
という記事をどんどんアップするんです。
サム・ハイドというalt-rightの男性が深夜に
「ミリオン・ダラー・エクストリーム・プレゼンツ・ワールド・ピース」
というコント番組を放送しているんですが、
たとえば、女性をつまづかせて、ガラスのコーヒーテーブルの
上に転ばせて、女性が顔を怪我して血だらけになるのを見て
「ブスだからやったんだ」と言う。
全然笑えないんですが、YouTubeには「ざまあみろ」
「笑った」とかの「いいね」コメントがならんでますからね
アメリカ共和党の支持者や、キリスト教右派でイメージする、
従来のアメリカの保守・右翼と「オルタナ右翼」とはべつものです。
旧来の保守や右翼にとってかわるから、「オルタナ」ということです。
これまでなかった「新しいタイプの右翼」と言えます。
従来のアメリカ合衆国の保守や右翼は、対外的にはグローバル主義で、
民主主義を世界に広めるためなら、戦争も辞さない「タカ派」です。
新イスラエルで反ユダヤ主義とは無縁、キリスト教の原理主義的で、
進化論を前提とする優生思想も標榜しないです。
これくらい違いがあるので従来の保守や右翼も、
「オルタナ右翼」の攻撃の対象になることになります。
彼らは主流派を蔑称で「寝取られ保守(コックサバティブ)」などと言うんです。
保守の魂をリベラルに寝取られたような情けない男、
女みたいな男、というような意味で馬鹿にしているんです。
そもそもミソジニー(女性蔑視)が染みついているんですね。
「寝取られ保守」という言葉にオルタナ右翼の要素が詰まっていると思います。
主流派は「腐った連中」で、自分たちは彼らとは違う、という自己規定ですね。
「新しいタイプの右翼」と言われて、わたしが連想するのは、
ワイマール時代のヒトラー・ナチスです。
帝政回帰を標榜する従来のドイツの保守や右翼とは、
彼らヒトラー・ナチスは異質で、それまでにないタイプの右翼でした。
ナチスの台頭は、当時のドイツ社会が、リベラル、左翼だけでなく
保守、右翼のあいだでも、かかる「新しいタイプの右翼」に対する
警戒がふじゅうぶんだったことも、原因のひとつです。
ヒトラー・ナチスとの関連で言えば、「オルタナ右翼」は、
いまのアメリカ合衆国の社会でいちばん票が取れると
思われていて、トランプ陣営が彼らを利用したことを、
わたしは指摘したいと思います。
今アメリカでは選挙産業が活発なんです。常に新しい層から票が取れないか、
その中で今「一番とれるのはここだ」と思われているのがオルタナ右翼。
今回の大統領選で、トランプ陣営がオルタナ右翼を
プラットフォームにした、つまり政治利用されたんです。
トランプ陣営は、オルタナ右翼の思想は滅茶苦茶だけど、
自分の味方にできると考えたんですね
ヒトラー・ナチスも、当時のドイツ社会では、
保守・右翼からめちゃくちゃだと思われていたけれど、
政治利用できると思って利用した保守・右翼がいたのでした。
彼らから政治のメインストリートに取り立てられるたびに、
ヒトラー・ナチスは勢力を得ることになったのでした。
実はヒトラー・ナチスこそ、旧来の右翼や保守を利用し続け、
最終的に政権を掌握したことになります。
現在のアメリカ合衆国の「オルタナ右翼」も、
利用できるからと思って利用していると、
近い将来とんでもないことになるかもしれないです。
>「オルタナ右翼」の被害者意識
「オルタナ右翼」の精神構造は、自分たちは追い詰められている、
割りを食っているという、被害者意識です。
これはむかしからあることで、ヨーロッパでもネオナチが
展開してきたことですし、さほど珍しくないでしょう。
オルタナ右翼の人々で共通しているのは、
追い詰められている、割を食っている、という意識です。
「白人にもかかわらず」という前置きがつきますが、
白人の特権意識があるのに、フェミニストや外国人、
リベラルに追い詰められている、という感情、それが彼らの絆になっている。
「移民が職を奪う」とか「移民がテロを起こした」
というのは、かかる被害者意識の典型だと思います。
自分たちの社会に対する不満を、被差別マイノリティに
転嫁して攻撃することで、晴らそうということです。
一方で、アメリカでは移民が実際に問題として存在しているので、
「移民のせいで職が奪われた」「移民がテロを起こした」
というような直接的な不満がある。
「被差別マイノリティの脅威」という被害者意識は、
「憎悪をあおる人」たちの典型ですが、
彼らの「仮想加害者」はリベラルにもおよんでいます。
「オルタナ右翼」は自分の不満のはけ口として、
リベラルを攻撃することもあるということです。
このような「被差別マイノリティ」に対する被害者意識は、
「「白人にもかかわらず」という前置き」が
あることが示すように、本来自分たちは特権階級であり、
その特権が失われることを「被害」と見立てている
ということがあるだろうと思います。
またどこかで自分たちは被差別マイノリティを
迫害してきたという潜在意識があり、
彼らが力を持つことで旧来の抑圧者である自分たちに
復讐をするのではないか、という意識もあるかもしれないです。
かかる被害者意識は、日本のネトウヨにもあるでしょう。
彼らの動機には、日本が「失われた20年」で凋落を続けて、
日本の優越性が損なわれることへの焦りがあります。
そしてこれまで差別を続けてきた韓国や中国が
国際的な発言力や影響力を高めていくことへの
危機感があるだろうと思われます。
日本のネトウヨの場合、アメリカの「オルタナ右翼」と違って、
彼らのいわゆる在日韓国人から受けた「被害」は
「あたまの中で作った観念」であることが特徴かもしれないです。
日本のネトウヨの場合、あまり在日韓国人によって
自分が何かの被害を被ったとか、そういった皮膚感覚なしで
差別的な主張をしているように思います。
>「オルタナ右翼」の優生思想
「オルタナ右翼」は白人優越主義で、それを支える
「科学的根拠」として「優生思想」を信奉しています。
ヒトラー・ナチスが、「アーリア人はもっとも優れた
民族である」と主張するための「根拠」にした思想です。
スペンサー氏は「アイデンティティが大事なんだ」という
概念を打ち出した人ですが、その源泉はヨーロッパです。
フランスの右派、マリーヌ・ル・ペン氏も
似たような思想を持っているのではと思います。
テイラー氏は白人主義、レイシズムの思想ですが、
人種間には優劣がある、それには科学的な根拠があるんだ、
といったことを言っています。優生思想ですね。
オルタナ右翼が今までの保守派と違うのは、反宗教という点です。
アメリカの保守勢力の中核を成してきたキリスト教保守に対して
「進化論を信じないで聖書ばかり読んでいる馬鹿」と言う。
進化論はオルタナ右翼の優勢主義思想と結びついてもいるんですが。
キリスト教の原理主義的で、聖書の記述に反する
進化論を受け入れない旧来のアメリカ合衆国の保守・右翼と
「オルタナ右翼」とは、ここでも一線を画するわけです。
自分たちはもっとも優れているという優越主義は、
日本のネトウヨにももちろんあるでしょう。
彼らは「日本はこんなにすごい国」という話題がとても好きで、
入り浸って「現実逃避」をするからです。
そこに「優生思想」という「科学的に見える根拠」を
持ち出せるのは、アメリカ合衆国の「オルタナ右翼」をはじめ
白人社会の特徴だと言えそうです。