2017年02月07日

toujyouka016.jpg オルタナ右翼の政治的手法

2月5日エントリの続き。

今回は「オルタナ右翼」の政治的手法について、見ることにします。

「オルタナ右翼を考える」
(はてなブックマーク)

 
>「オルタナ右翼」の活動の場所

「オルタナ右翼」の活動の舞台はネットです。
リアルに出てくることはめったにないです。
発展の場所はそもそもが「4chan」という、
日本の「2ちゃんねる」にならって作った電子掲示板です。

オルタナ右翼と呼ばれている人々はリアルでは行動しませんね。
彼らはもともと日本の2ちゃんねるを模倣した
4chanという電子掲示板で差別的なジョークなどで
盛り上がっていた人たちですが、その存在が目立つようになったきっかけは
去年7月 にトランプ氏が予備選に出てきたときです。
共和党主流派に対してネットで攻撃を始めたからです。
オルタナ右翼はネットラジオやネットテレビで
差別的なジョークなどをやって拡散しているだけで、
オフで会うことは滅多にないですね。
ネオナチやKKKや日本の在特会などとは違って、
今のところデモやヘイト犯罪のような行動をする組織化はされていません。
ネット上に存在するコミュニティです。


ネットで活動し、ネットで発展したというところで、
日本のネトウヨとの類似性を感じさせます。
日本のネトウヨも「2ちゃんねる」が培養基となって、
ネットの一大世論となったのでした。

「もはや首相自体が「ネトウヨ」である──安倍“ヘイト”政権が誕生した日」

完全匿名を実現した大規模な掲示板システムである
2ちゃんねるが1999年にオープンしてからだ。
この連載のタイトルが「15年」となっているのは、
ネット右翼の思想史の起点を2ちゃんねるに設定しているからである。

ネット上は2ちゃんねるのようなBBSだけでなく、
ありとあらゆるSNS上において匿名ユーザーによる
ヘイトスピーチと悪意が蔓延するディストピアとなった。
ネット右翼は、この悪意のシステムを利用して伸長してきたのである。

匿名の発言場所というのは、発言が野放しにされやすく、
ひずんだ思想や意見が育まれやすいということでしょう。


日本の大物ネトウヨ、ヨーゲンの裁判(レイシズムとは
関係ないが)に、支持者のネトウヨがぜんぜん
集まらなかったことがあったのでした。
基本的に「ネット弁慶」というのも、日本のネトウヨと
アメリカの「オルタナ右翼」に共通した特徴と言えるでしょう。

「ネトウヨのネット弁慶」
「ネトウヨ・ヨーゲンの正体」

それでも日本のネトウヨの中には、在特会のように、
ネットを飛び出してリアルで活動する集団もあります。
こうしたリアルの集団が「オルタナ右翼」にはないので、
この点に関しては、日本のネトウヨのほうが
数段進んでいることになるでしょう。


>「オルタナ右翼」のニヒリズム

「オルタナ右翼」にはニヒリズムという特徴があります。
日本のネトウヨにも、逆張りや冷笑傾向があって、
やはりニヒリズムなところがあり、共通していると言えます。

ただ重要なのは、彼らは半分ジョークでやっているということです。
ネタなんですよ。共和党議員の写真を面白おかしい
コラージュにしたり、基本的にふざけています。
熱狂的で狂信的なところは全くなくて、ニヒリスティック。
「真剣に信じるべきものなんてないんだ」というスタンスで、
ポリティカル・コレクトネス、政治的正しさ
というものも上から見ている感じです。

「真剣に信じるべきものなんてない」というスタンスは、
あらゆるものを相対化し、みずからはメタな視点に立つ
(あるいは立てると思っている)という点で、
日本のネトウヨにもあい通じると思います。
それで自分は冷静で理性的で賢くなった気分になるのでしょう。


日本のネット世論(これはネトウヨに限らないと思う)は、
議会制民主主義や、基本的人権の正統性、歴史修正主義否定や、
科学的事実に対してまで、「真剣に信じるべきものなんてない」
という、ニヒリズムで否定することがあります。

「反知性主義者の多様性」

この点については、「ポリティカル・コレクトネス、
政治的正しさというものも上から見ている」という
「オルタナ右翼」とあい通じる特徴だろうと思います。


「半分ねた」でも積極的に批判するなど、対処は必要だと思います。
日本のネトウヨや「オルタナ右翼」のような
ひずんだ思想や意見は、野放しにすることで成長するし、
「半分ねた」というのは、自分たちを野放しにさせる
方便としてしばしば使われるからです。

ただ「半分ネタ」だった部分は、今はもう真面目になってると思いますよ。
それに本人がネタのつもりであっても、外から見ている人にとっては
やはり白人至上主義の運動に見えてしまうわけです。
リベラル側としては、アメリカ国内にこんな存在がいては
危険だと感じているはずです。


>デマを流す「オルタナ右翼」

「オルタナ右翼」の政治的手法の最大の特徴と言えるのが
「デマを作って大量に流すこと」だと思います。
(「デマ」というだけでなく、「大量に」という
物量にものを言わせることもポイントだと思います。)

ブライトバート・ニュースの内容には、デマが多いです。
にも関わらず、シェアされやすいんですよね。
センセーショナルな見出しであったり、面白い写真が載っていたり。
そういう記事はフェイスブックなどで拡散されるとどんどん広がりますから。
まとめサイトと言いましたが、一つ一つライターが独自記事を書いています。
とくに、ブライトバート・ニュースがメインストリームに
なってしまったことにはものすごく驚きました。
記事の内容は、反移民、反ユダヤ、女性蔑視など、
「これ程うがった見方ができるのか」と驚愕するくらいひどいものです。

トランプ大統領の就任そうそうから、「就任式に来た観客は
過去最高」なんてデマを流して批判されていました。
さらに「クェートがイスラム教徒の多い5カ国に対して
入国禁止にした」というデマを、トランプ大統領みずから、
フェイスブックで拡散したりしています。

「トランプ大統領就任式のデマ」
「トランプ大統領が入国禁止の偽ニュースをFacebookで拡散 指摘にも訂正なし」


「デマを流して大量に広める」ことに関しては、
日本のほうがだいぶ「進んでいる」と思います。
日本にも「保守速報」に代表される、差別的なデマを流すことで
定評のあるサイトや人物が、いくつもあります。

「非実在記者・進藤翔(24)」
「ハイスペックで、礼儀正しい若者がデマサイトを作る 就活の失敗からそれは始まった」
「名誉毀損で訴えられたネトウヨ大学生の本音」

政権与党内にも、片山さつきのような、
デマを流すことが常習となっている議員がいます。
「反TPPは左翼」のように、安倍晋三首相みずから、
デマサイトの情報を拡散させることもあります。

「林陽子への不当解任要求」
「子どもの貧困とバッシング」
「ネトウヨの親分・安倍首相」
「反TPPが左翼と呼ばれる」

アメリカ合衆国の「オルタナ右翼」の場合、
「ブライトバート・ニュース」に代表される三文メディアが、
日本の各種デマサイトの役割を演じています。

アメリカ合衆国のデマサイトは、記者が自分で記事を書くので、
これについては「2ちゃんねる」の投稿をまとめるだけの
日本のデマサイトより、進んでいると言えそうです。


アメリカ合衆国の「オルタナ右翼」の中には、
外国人(日本人)からトランプ支持を表明されるビデオを撮って
ネットで拡散させる人もいます。

リチャード・スペンサーは大統領選の最中に来日して、
原宿の駅前で女子高生に「トランプ大好き!」と
言わせるビデオを撮ってネットで拡散していました。

外国人に「日本はこんなすごい国」と言わせる番組を
せっせと作る日本人と、同じことをしていると思います。
私的なビデオ撮影ではなく、公共のテレビ局が放映するぶん、
日本のほうがはるかに徹底していることになります。


「真剣に信じるべきものなんてない」なんて
ニヒルを気取って自分は賢いつもりなのかもしれないですが、
それで「デマを流す」という反知性主義のきわみというのは、
自己矛盾ぶりにあきれてものも言えなくなります。

むしろ信じるものがないから、どんなきたない手段でも
臆面なく使えるのだろうという指摘もありますが。

オルタナ右翼を考える / 前嶋和弘×八田真行×町山智浩×荻上チキ | SYNODOS -シノドス-

オルタナ右翼がニヒリストだというのが恐ろしい。リベラリストや保守主義者は信じるものによって行動が縛られているが、何も信じていないニヒリストはどんな汚い手でも使うことができる。

2017/01/25 13:20


posted by たんぽぽ at 22:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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