もらわない大きな理由として、離婚した相手と関わりたくない
ということがあるという調査です。
「シングルマザーの約8割が養育費をもらっていない
「相手と関わりたくない」「支払能力がない」から」
株式会社リングオフの「離婚後の生活に関するアンケート調査」と、
新宿区の「ひとり親家庭等アンケート調査」を参照しています。
「「離婚後の生活に関するアンケート調査」
離婚後に生活費が必要も7割以上の人が教育費をもらってない現状」
「平成28年度ひとり親家庭等アンケート調査結果がまとまりました」
「認知・養育費など」
はじめに株式会社リングオフの「離婚後の生活に関する
アンケート調査」を見てみたいと思います。
「離婚しても養育費をもらっているか」という
設問に対して、「もらっている」は26%です。
離婚後のシングルマザーのうち、養育費を受け取って
いるのは全体の4分の1程度ということです。
「もらっていない」は54%ですが、
これは「途中で支払われなくなった」の20%と分けていますから、
最初からもらっていない、ということになると思います。
半分以上のシングルマザーが、最初から養育費を
ぜんぜんもらっていないということになります。
養育費をもらわない理由は、「元夫と関わりたくない」34%、
「子供に会わせたくない」13%で、両方合わせて47%です。
半数近くがなんらかのかたちで、自分か子どものどちらかが、
元夫と関わりたくないことが理由になります。
続いて新宿区の「ひとり親家庭等アンケート調査」を見てみます。
これは「認知・養育費など」の節にある問9と問10です。
「養育費の支払い」は、「定期的」17.8%、「不定期」3.9%で、
両方合わせて21.7%が支払われていることになります。
全体の2割程度であり、前述の株式会社リングオフの調査の
「もらっている」26%にも、近い数値となっています。
新宿区では養育費に関する家庭相談の制度があります。
「相談したことがある」4.9%、「相談したい」8.4%で
希望を含めても家庭相談の利用は13.8%にとどまっています。
「相談したくない・不要」は65.9%で、3分の2程度が
家庭相談の制度を利用していないことになります。
あまり使われない制度と言えることになります。
家庭相談を利用しなくない理由として
もっとも多いのは「相手と関わりたくない」40.4%です。
株式会社リングオフの調査結果と同様、
元夫と関わりたくないから養育費をもらわない、
という実情が現れていると思います。
日本の母子家庭は元夫から養育費をもらえていないというのは、
よく言われることですが、こうして数字を見ると、
その実情を改めて実感するところです。
2年半ほど前ですが、2014年8月31日エントリでも、
養育費の不払いについてお話したことがあります。
「養育費の高い未払い率」
厚生労働省による「全国母子世帯等調査2011」によると、
「現在も養育費を受けている」は2013年に19.7%で、
上記ふたつの調査に近い数値になっています。
「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」
「17 養育費の状況」
株式会社リングオフの調査を見ると、養育費をもらわない
理由のうち、「元夫に経済力がない」が39%もあります。
養育費が払えない男性はそんなに多いのかという
気になりますが、年収500万円以上の離別父親でも、
4分の3は養育費を払っていない事実があります。
「なぜ離別父親から養育費を取れないのか」
年収の高い父親ほど、養育費を払っている割合は確かに高い。
同JILPT調査によると、離婚母子世帯の養育費の受取割合は、
離別父親の年収が500万円以上の層では25.9%(注i)となっており、
200万円未満層(4.7%)よりその割合は20ポイント以上高い。
しかし一方、この数字の裏返しは、年収500万円以上の離別父親ですら、
その74.1%は養育費を支払っていないというショッキングな事実である。
よって養育費を払える経済力がない元夫は、実はそれほど多くは
ないのではないかと、考えておいたほうがいいのかもしれないです。
より深刻なのは、養育費をもらわない理由として
「元夫と関わりたくない」が多いことです。
別れた相手ですから会いたくないことが多くて当然ですし、
中にはDVのように、関わるわけにいかない理由もあります。
元夫と直接関わることなく養育費の請求ができる、
もしくは養育費が支払われる仕組みが必要だろうと思います。
養育費の支払いを法律で義務付け、滞納に対する罰則を
設けたり給料から天引きするなどして、
確実に支払わせる方法を強化することが考えられます。
また滞納者に対して、行政が立て替える仕組みを
導入するという案もあるでしょう。
http://lacrima09.web.fc2.com/figs/poverty-there3.html
米国では養育費は収入の1割にのぼる。
滞納者には自動車運転免許の停止などの強力な措置がある。
スウェーデンには養育費を政府が建て替え払いする制度もある。
日本の現行法では、家庭裁判所の調停があれば、
養育費の支払いを義務付けることができるし、
滞納した場合、法的手続きによって請求することができます。
2011年の民法改正で、離婚の際に夫婦が取り決める事項として
養育費の分担が明文化され、親による養育費の支払い義務が明確にされた。
それでも養育費の支払いが滞った場合には、法的な手続きを経て請求できる。
その方法は手続きにより異なり、取り決めを口約束や文章で
交わしていた場合には、直ちに強制的な支払いを求められないため、
あらためて家庭裁判所に養育費請求の調停・審判を
申立てて決め直さなければならない。
家庭裁判所で養育費の支払いが決まっている場合には、
家庭裁判所から相手に履行勧告をしてもらえる。
履行勧告でも支払われず、公正証書で決めたのに支払わない場合には、
地方裁判所に強制執行を申し立て、相手の財産を差し押さえることができる。
日本では家庭裁判所の調停によらない協議離婚が9割ほどあり、
養育費の取り決めを行わないことが多いです。
こうした場合、改めて家庭裁判所の調停を受けることで、
養育費についての取り決めができるようになっています。
裁判で調停を受けようとすると、当然負担がかかるし、
「元夫と関わりたくない」のであれば、
裁判をしたくないと考えるかたも多いでしょう。
家庭裁判所を通さなくても、なんらかのかたちで
養育費の支払いを義務付ける制度も整える必要があると思います。