2017年03月11日

mar0006.gif三世代同居は伝統的家族か?

家族やジェンダーに因習・反動的な人たちが好きな
「伝統的家族」は、実は伝統ではないということは、
いろいろな観点から指摘がなされています。

それについて書いた記事がまたあります。
ここでは「3世代家族」について見てみることにします。

「「家庭教育支援法」成立目指す自民 「伝統的家族」なる幻想 
家族の絆弱まり、家庭の教育力低下−−!?」

(はてなブックマーク)

 
「3世代家族」「二世帯家族」というのは、
なぜか因習的な家族観を持った人にとって、
「伝統的家族」と感じるようで、やたら回帰したがる
彼らの人気のあるライフスタイルとなっています。

安倍首相らが目指す家族像とはどのようなものか? 
気になる発言があった。
第1次政権時の07年5月17日、衆院教育再生特別委での答弁だ。
「かつては大家族、2世代、3世代同居という家族がたくさんあった。
その中で親から子に受け継がれた知恵や工夫、
地域の規律やモラル、そういうものが家族や地域の中で、
教育に対する支援がなされたと言っていい」

日本最大級の右翼団体、日本会議がサザエさんを
「理想の家族」として引き合いに出したときも、
サザエさんの家庭が3世代同居だったことがあります。

「日本会議の理想はサザエさん」

3世代同居の家族は出生率が高いというデータを都合よく解釈して、
「伝統的家族が少子化対策になる」などと考え、
3世代同居を推進する政策も実際に行われています。

「3世代同居で少子化対策?」
「伝統的家族で出生率回復?」


記事では3世代家族は、実際にはどれだけあったかを調べています。

国会図書館で調べると、1937年の古書「家族構成」に行き着いた。
家族社会学者の草分け、戸田貞三氏が大正期の
第1回国勢調査(20年)を分析した労作だ。
この時代、核家族は既に54%(2015年は57・4%)に上り、
3世代以上の同居家族などは31%(同10・1%)に過ぎない。

ここで言及されている、戸田貞三氏の労作というのは、
以下のサイトに出ている図が参照している資料だと思います。

「平成7年度 国民生活白書(要旨)」

これはわたしのブログの、2016年9月4日エントリと
9月25日エントリで、取り上げたことがあります。

「世帯数の年次推移・核家族」
「世帯数の推移・単独と三世代」

ここに次の図が出ています。

核家族化は頭打ちで単独世帯が増えている


図中の「拡大家族」は、そのほとんどが3世代家族なので、
これが3世代家族の割合を示していることになるでしょう。
1920年の第1回の国勢調査では、3世代家族は31.0%です。

1990年には3世代家族の割合は20%以下ですし、
2015年には10.1%ですから、これらと比較することで、
「むかしは3世代家族が多かった」と言うことはできそうです。

それでも1920年には核家族は54.0%でしたから、
当時から三世代家族は多数派ではなかったことになります。
2015年の核家族の割合は57.4%なので、
1920年の54.0%は現在と比べても、
それほど少ないわけではないということです。


「むかしは3世代同居が多かった」となぜ感じるかですが、
戦後、核家族が増え続けたことが大きいだろうと思います。
1980年代の中ごろまで、ほかのタイプの世帯は
数がほとんど増えなかったのですが、
核家族だけはどんどん増えていったのでした。

それで「戦後、核家族がたくさん増えた」
→「核家族は戦後の新しいライフスタイル」
→「むかしは3世代家族が多かった」と感じるように
なったのではないかと思います。

「核家族と一人身世帯が増加中…種類別世帯数の推移を探る」

種類別世帯数推移


「世界的に見れば高い数字ですが、大正期ですら3割しかない。
そもそも日本で3世代同居が増えるのは幕末以降。
むしろ地方によっては複数夫婦の同居はタブーでした」と話すのは、
日本やアジアの家族事情に詳しい京都大の落合恵美子教授だ。
安倍首相や日本会議の唱える家族像は
「日本の伝統を誤解している」と強調するのだ。

現在の保守本流は、明治維新体制の継承者です。
それゆえ現在の因習・反動的な人たちが考える「伝統」は
明治時代以降に限られることになります。

「伝統回帰論への懐疑」

江戸時代は彼らの継承する体制が否定する時代なので、
彼らにとっての「伝統」もそこまでさかのぼらないわけです。
よって「3世代同居が増えるのは幕末以降」という事実は、
当然のように無視されるのでしょう。

ところが大正時代にも3世代同居の割合は3割程度であり、
因習・反動的な人たちが「むかし」と考える時代においてさえ
「伝統」ではなかったことになります。


いつの時代にも存在しなかったのなら
そんなものを「伝統」と呼ぶことはできないです。
このような「いつわりの伝統」を捏造するのは、
現在に対する不満があって「美化された過去」に
逃避をしたいことが考えられます。

「いつわりの伝統と過去の美化」

不満の多い現在を否定するために、
政治的イデオロギーをもって新しく導入しているという
実態をごまかすために、「美化された過去を取り戻す」
ことにしている、ということになるでしょう。

posted by たんぽぽ at 23:57 | Comment(2) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
興味深いデータですね。

色々と振り返ってみれば、自分が幼少のころ、三世代家族が多かったかといえば、そうではなかったんですね。
「○ちゃんちには、おばあちゃんも一緒に住んでいるんだよね」「へー」みたいな感じでした。
なぜなら、両親世代には比較的兄弟が多かったので、ぜんぶがぜんぶ三世代になるわけがなく、多くは核家族になってしまいますよね。

昭和のなつかしき頃は、大学生の下宿なんていうのもよく見られました。
私が生まれた頃は、家に父の妹が結婚するまで同居してましたし、祖母の家は、血のつながりのない中年の男性が住み込みでいました。
親戚の大工の家には小さな家に弟子がたくさん住み込みで働いていました。

つまり、昭和の複数世帯の構造とは、いわゆる単純な肉親三世代ではなく、もっと色々なカタチだったようにも思います。

一方で、今、単身世帯が増えて、その中で、お年寄り単身世帯が目立つようになり、伝統的家族といった幻想に回顧してるのかなあと思います。
ただし、これは平均寿命が延びたということは大きいでしょうね。終戦時で平均寿命50歳といったところでしたから。毎年どんどん伸びていって、あと10年後には90歳を超えるかもしれません。

逆に言えば、この超高齢化に伴い、今、三世代同居への回顧主義とその推進をしようとすること自体、むしろ無理があるというものです。
周りから漏れ聞く介護の苦労話を聞くにつけ、家族内で収めようとすること自体、ナンセンセンスです。

しかしその回顧主義には、親を敬え、兄弟と仲良くしろ、的な教育勅語礼賛にまで至る政治家がいるのには、辟易します。(そもそもあの文書を読み込めない、おつむの弱さを露呈しているようで恥ずかしい限りではないですか)。また、安部氏の周囲のとりまきには、教育勅語が踏み絵のになってるようにも感じます。

話がずれましたが、色々考えさせられます。
Posted by うがんざき at 2017年03月12日 14:42
うがんざきさま、
こちらにコメントありがとうございます。

>自分が幼少のころ、三世代家族が多かったかといえば、そうではなかったんですね。

1970-80年代は、すでに核家族が当たり前、という状況でしたね。

>両親世代には比較的兄弟が多かったので、
>ぜんぶがぜんぶ三世代になるわけがなく、
>多くは核家族になってしまいますよね。

そう言えばそうですね。
敗戦から少し後くらいまでは、子どもは4-5人が
一般的でしたし、これだけの人数の子がいれば、
全員が親と同居できるはずもないですよね。

それは戦前からそうだったのではないかと思います。
戦前も子だくさんでしたから。
1920年にすでに核家族が3世代世帯より多かったのも、
そういう事情もあるのかもしれないです。


>昭和のなつかしき頃は、大学生の下宿なんていうのもよく見られました

時代が多少くだって、大学生はアパートに一人暮らしすることが
多くなっても、そういう大学生の一人暮らしを
「下宿する」と言いならわしていたと思います。

そのくらい、かつては大学生が「下宿する」のが
一般的だったということなのでしょう。


>昭和の複数世帯の構造とは、いわゆる単純な肉親三世代ではなく、
>もっと色々なカタチだったようにも思います

昭和がすでに「歴史」として語られていますね。

日本の家族はもともと血縁でない人も含まれていて、
「家族=血縁」になったのは、明治民法によって近代家族制度が
整えられてから少しずつなので、その名残りが昭和になっても
まだあった、ということかもしれないです。

「家族は血縁という思想」
http://taraxacum.seesaa.net/article/377437542.html


>今、単身世帯が増えて、その中で、お年寄り単身世帯が目立つようになり、
>伝統的家族といった幻想に回顧してるのかなあと思います

単身の高齢者世帯が増えたのでなんとかしなければ、という意識が、
「伝統的家族」幻想に走らせているのかもしれないです。

>逆に言えば、この超高齢化に伴い、
>今、三世代同居への回顧主義とその推進をしようとすること自体、

福祉を削減したいという政権の基本スタンスと、
彼らの信奉する「道徳」がちょうどすりあったのは、
はなはだやっかいなことだと思います。
Posted by たんぽぽ at 2017年03月12日 21:52
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