2017年04月30日

toujyouka016.jpg 男性の家事と仕事のバランス

日本の男性有業者は、家事時間、家庭内の無償労働の
時間が短い
ことを、何度かお話しています。
今回は仕事時間との比較で、それを見てみたいと思います。

3年前のエントリですが、舞田敏彦氏の『データえっせい』で、
男性の家事時間と仕事時間の比率を調べています。

「仕事・家事時間の国際比較」

 
まず上記エントリにある、男性の仕事時間と家事時間の比についての
OECDの調査『Balancing paid work, unpaid work』を見てみます。
仕事時間が家事時間の何倍かについて破線を入れてあります。

1日あたりの仕事・家事時間の国際比較(男性)

日本と韓国が最も仕事時間が長く、家事時間の6倍です。
ほかのOECD加盟国は長いところでも、3倍程度です。
日本と韓国の2国は、いかに男性が仕事に偏重しているかと
示していると思います。

プロットのほとんどは1.5倍から2倍程度です。
イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ合衆国、
そして北ヨーロッパの国ぐにも、この領域に入っています。

ヨーロッパの中では家族やジェンダーに関して
因襲・反動的なイタリアでも、1.5倍と2.0倍のあいだです。
男性でも仕事と家庭のバランスは、これくらい取っている
というのが「国際常識」なのでしょう。


4月26日エントリでご紹介した、男性有業者のうち、
家事時間が仕事時間より長いかたの割合の
国際比較の図を、また見てみたいと思います。
出典はISSPの『家族と性役割の変化に関する調査』(2012年)です。


日本はわずか2.3%で調査対象国の中で最下位です。
男性の勤め人で、家事や家族ケアに使う時間のほうが、
仕事時間より長い人は、日本にはほとんどいないということです。
これは世間的な印象とも合っていると思います。

世界に眼を向けると、家事時間が、仕事時間より長い
男性の勤め人は、もっとたくさんいます。
調査対象国38カ国のうち23カ国で10%以上です。
20%以上の国もあって、中国、ベネズエラ、フィリピン、インドの4カ国です。


OECD加盟国の中でも、ばらつきが見られます。
アメリカ合衆国は17.2%、スウェーデンとイギリスは15%程度、
フランスは10%、ドイツは東西にわけていますが、
平均すると6-7%程度になりそうです。

韓国は5.2%で調査対象国の中では下から5番目です。
仕事時間と家事時間の比では日本と似たり寄ったりですが、
仕事時間より家事時間が長い男性の割合では、
日本よりはひとまわり多いと言えます。


日本の男性の有業者がかくも「仕事人間」で、家庭に時間を
使わない理由は、日本はジェンダーやマリッジステートと
雇用が強く結びついていることがあるでしょう。

「結婚・ジェンダーと雇用問題」
「非正規雇用の待遇 性別と働き方にジェンダーバイアス」
(はてなブックマーク)

性別と働き方の関連性が日本は特に強いことを、
岩上真珠氏の論文は海外との比較によって明らかにしている。
韓国やイタリアは性別規範の強い国として有名だが、
これらと比べても日本は性別と雇用形態の結びつきが強い。
男性は未婚、女性は既婚に非正規雇用が多い
といったように婚姻と雇用形態の結びつきも強い。

これは家族やジェンダーに因習・反動的な国の特徴です。
イタリアや韓国も家族やジェンダーに因習・反動的ですが、
日本はこれらの国以上ということです。


日本の場合、とくに高度経済成長期に雇用とジェンダー、
マリッジステートが結びついた「家族思想」が広まったのでした。
これは「男性従業員の生産性向上のために、
専業主婦の妻に家庭のことを任せる」という、
企業利益のための家族観とジェンダー観です。

これで「家庭のことは女性の仕事」ということになり、
男性は男性は家事をやらなくなって「仕事人間」となるので、
家事時間に対する仕事の時間が長くなることになります。

さらに「家庭のことは専業主婦の妻に任せて、
自分は会社に専念できる既婚男性」が
従業員であることを前提とした「長時間労働」が
多くの企業で労働文化として定着することになり、
いよいよ男性の家事時間を短くすることになります。

実際の原因はともかく、高度経済成長期以降、
日本の経済力はどんどん向上していきました。
それゆえかかる家族・ジェンダー観は正しかったのだ
という「成功体験」がとくに強くなり、
それが現在まで続いているということです。

posted by たんぽぽ at 23:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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