2017年05月27日

mar0006.gif2050年に先進国から脱落?(2)

2012年4月なので5年前、まだ民主党政権だったころですが、
2050年までに日本は先進国から脱落するという予測を、
「21世紀政策研究所」という経団連のシンクタンクが発表しました。
これを見てみたいと思います。

「グローバルJAPAN−2050年シミュレーションと総合戦略−」

「日本、2050年までに先進国から転落の恐れ 経団連シンクタンク」
「日本の名目GDPがOECDで20位になったことに様々な意見」

「2050年に日本は先進国から脱落するという予測を見て思ったこと」

 
人口減少や少子高齢化、生産性の伸びの減速による経済の縮小により、
日本は2050年までに先進国から転落するかもしれないと
警告する報告書を、日本経済団体連合会(経団連、Keidanren)が
設立したシンクタンク、21世紀政策研究所
(The 21st Century Public Policy Institute)が発表した。


このシミュレーションは、以下の4つのケースを仮定して、
日本の経済が将来どうなるかを予測しています。

1. 生産性が先進国の平均並みまで向上
2. 生産性が現状(失なわれた20年)の水準を継続
3. 成長率が下振れ
4. 女性労働力がスウェーデン並みに向上

日本経済4つのシナリオ

3.の成長率の低迷は、財政悪化を原因としていて、
財政健全化のために消費税の増税を主張しているところは、
大企業の団体のシンクタンクだと思います。
これについても言いたいことはありますが、
いまは置いておくことにします。


1. 基本1:生産性先進国平均並み⇒
生産性は回復するものの、人口減、投資減によりGDP成長率は
2011-2020年は平均0.43%、2030年代以降はマイナス成長。
この結果、GDPは世界第4位へ、一人当たりGDPは韓国に抜かれる
2. 基本2:「失われた20年」継続⇒
日本の過去20年間の生産性上昇率0.5%が継続した場合、
GDP成長率は2011-2020年は平均0.17%であるが、
2020年代はマイナス成長となり、2041-2050年は▲0.86%。
GDPは世界第5位へ、一人当たりGDPは世界第21位へ転落
3. 悲観:財政悪化による成長率下振れ⇒
2010年代以降マイナス成長になり、GDPは世界第9位、
一人当たりGDPは2010年より減少し世界第28位に転落、
世界のトップグループから完全に転落
4. 労働力率改善:2040年までに女性労働力率がスウェーデン並みに⇒
GDPは基本シナリオ1と比べ2.8%増加し、世界第4位へ


4つのシナリオを仮定した場合について、
GDP成長率の変化は以下のようになっています。

GDP成長率(実質) 2030年代以降、すべてのシナリオでマイナス成長

生産性が現状(失なわれた20年)のままという2.のケースでも、
2020年代にはGDP成長率がマイナスになります。
成長率が先進国平均になるという1.と、
女性労働力率がスウェーデン並みになるという4.のケースでも、
2030年代以降はマイナス成長になります。


日本の労働生産性はOECD平均以下ですし、
その原因である賃金格差や長時間労働が
改善される見込みは、いまだにあまりないですから、
1.でさえ「絵空事の世界」と言えます。
(報告書では「基本1」となっていますが、
どこが「基本」なんだよ?と思います。)

「労働時間と労働生産性の関係」
「賃金格差と低い労働生産性」
「労働生産性と男女共同参画の論文を読んで思ったこと」

日本の女性の労働力率がスウェーデン並みになるなんて、
とうていありえないとだれもが思うでしょう。
4.はなおさら「絵空事の世界」だと思います。
実際は2.に近くなりそうだと、予想することになるでしょう。

「労働力率と就業率の男女差」
「女性の労働力率・国際比較」
「M字カーブ緩和の原因」

2020年代と2030年代は「4.のケース>1.のケース」ですが、
2040年代は4.と1.がほぼ同じになっています。
いわゆる先進国においては、女性労働力率が高いのは
当たり前ということなのかもしれないです。


総GDPの推移は以下のようになります。
悲観的な3.のケースを除き、2010年->2030年にかけては、
総GDPは少しですが増加しています。
2030年->2050年にかけて大きく減少していて、
1.と4.のケースで2050年は2010年と同程度であり、
2.の現状維持のケースでは落ち込みが顕著です。

GDP規模 2050年の経済規模は労働力改善シナリオを除き、2010年を下回る


1.や4.のような、ありそうにない理想的な状況を
仮定しても、2030年以降はなぜにこんなにも
経済が低迷するのか、その大きな原因は人口減少です。
前世紀の末から続く少子高齢化の「つけ」が、
この時期にきて急に回ってくるということでしょう。

次のように1.と2.のケースでは、労働人口のGDPヘの寄与は、
2030年代からきゅうにマイナスで大きくなります。
4.の女性労働力率をスウェーデン並みに高めたケースでも、
やはり2030年代から、労働人口のGDPへの寄与は
マイナスで大きくなります。
少子高齢化で労働人口がそれだけ減るということです。

GDP成長率の寄与度 人口減少による労働・資本減が大きなマイナス要因

もうひとつ「資本寄与度」も、2030年代からマイナスです。
これは貯蓄が減ることで投資活動が停滞し、
資本蓄積が鈍化することによる寄与です。
貯蓄が減る原因はやはり高齢化社会と考えているので、
これも少子高齢化の「つけ」のうちになります。

A資本高齢化とともに貯蓄減少=
投資が減少し、資本蓄積が鈍化することを想定
日本は2030年まで日本経済研究センター「第38回中期経済予測」の
資本ストック伸び率を外生的に付与


ひとり当たりGDPは、次のようにシナリオ1.と4.は
順調に増加を続け、日本の世界順位は2010年と比べると、
2030年は高くなり、2050年も2030年よりは下がりますが、
それでも2010年よりは少し高くなっています。

一人当たりGDP 悲観シナリオは一人当たりGDPも減少

現実味のあるであろうシナリオ2.も、
1.と4.よりは鈍いですが、ひとり当たりGDPは増え続け、
2050年まで世界順位はほぼ横ばいになります。
悲観的なシナリオ3.にならない限り、
ひとり当たりGDPは増加し続けるということです。

ひとり当たりのGDPはわりあい順調に増え続けるのに、
日本の総GDPがマイナス成長となるのは、
少子高齢化にともなう人口減少が原因、
ということにほかならないです。


この予測を見ると2030年ごろから、日本経済は急速に
凋落を始めると考えられることになります。
原因は少子高齢化にともなう労働力人口の減少です。
前世紀の終わりから続いている少子高齢化の「つけ」は、
2030年ごろから顕著に出てくるということです。

いずれ日本は、少子高齢化が原因で
落ちぶれるであろうことは、2050年には世界一の
悲惨な国になるという、『エコノミスト紙』の予測を始め、
さんざん言われていることです。
具体的にいつごろから衰退が目立ってくるかが、
この報告書ではっきりしてきたと思います。

「2050年の世界一悲惨な国」
「世界で最も悲惨な2050年迎える国は日本 英の経済誌予測」

1.の労働生産性が先進国平均並みになるとか、
4.の女性の労働力率がスウェーデン並みになるといった、
日本の現状からはとてもありそうにない仮定をしても、
今後の日本経済の凋落は必至ということです。

少子高齢化によって失なったものは、
もう取り返しがつかないところまで来ているということです。
少子高齢化の「つけ」がいかに大きいか、
ということに、いまさらながらなるでしょう。

posted by たんぽぽ at 14:10 | Comment(2) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
ひどいジェンダー後進国だと思ってましたけど、経済的にも先進国から脱落して本当の後進国になるんですね・・!どうでもいい細かいことにこだわったり、精神論ばかりの長時間労働と男社会の女性差別国家じゃあ、国が衰退するのも必然ですね。。
儒教の影響もあるのか、大半の日本の男は自分たちの下らない優越感を支えるために女が能力をつけるのを必死で阻止しようとしてますから、ずーっとこの腐ったホモソーシャルな男社会のままでしょうね。


Posted by カメ at 2017年05月28日 02:16
カメさま、いらっしゃいませ。
こちらにコメント、ありがとうございます。

>経済的にも先進国から脱落して本当の後進国になるんですね・・!

「日本は経済だけ発達しか開発途上国」と言われる
ことがあるけれど、その「経済」もなくなって、
名実ともに開発途上国になるのでしょう。

「日本は経済大国」というのは、
保守派の自尊心の大きなよりどころだと思いますが、
かかる精神的支柱がなくなるということです。


>精神論ばかりの長時間労働と男社会の女性差別国家じゃあ、
>国が衰退するのも必然ですね。。

日本社会はジェンダー差別によって、
女性を生産性の低い非正規雇用に回すことで、
全体の生産性を引き下げ、さらに子どもを産み育てにくい
社会を作ることで人口を減らして生産性を下げるという、
2回カウンタを受けていることになります。


>ずーっとこの腐ったホモソーシャルな男社会のままでしょうね。

20年以上前から警告され、対処法まで示されていたのに、
ほとんど顧みないで来たのは、国力が衰退している実感が
なかったからではないかと思います。
2030年代になって、国力の低下が眼につくようになると、
きゅうに慌て出すのかもしれないです。

問題は慌て出してどうなるかですね。
なんとかしてジェンダー差別を解消しようと必死になるか、
それともさらなる差別強化で落ちぶれた社会を
維持しようとするか、あるいはなにもできずに
手をこまねいているだけか、いずれかですね。
Posted by たんぽぽ at 2017年05月28日 20:53
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