2050年に日本は先進国から脱落するという、
「21世紀政策研究所」の予測で考えている仮定は、
どのくらい実現可能かを見てみたいと思います。
「グローバルJAPAN−2050年シミュレーションと総合戦略−」
「2050年に日本は先進国から脱落するという予測についてのエントリ」
今回は
1. 生産性上昇率が先進国平均並みの1.2%に回復
という仮定について検討してみたいと思います。
予測ではこの水準に回復するのは2030年までとしています。
日本の労働生産性はOECD加盟国の中では低いほうです。
1時間当たりの労働生産性で見ると、
日本は41.3ドルで、34加盟国中21位です。
OECDの平均は48.8ドルで、日本は7ドル以上下回っています。
上昇率1.2%をどのように算出したかわからないです。
1時間当たりの労働生産性とすると、2010-15年の平均上昇率は、
OECD平均は0.7%で、日本は0.5%です。
よってOECD平均よりはだいぶ高い上昇率まで回復することを、
この予測は想定していると考えられます。
「労働生産性の国際比較」
「労働生産性の国際比較」(PDF)
上の表を見ると労働生産性の上昇率が1.2%は、
OECD加盟国内の順位は9-10位くらいになります。
2030年まであと13年ですが、それまでに順位を
10以上引き上げることになります。
労働生産性の上昇率が1%以上の国は、
OECD加盟国の中でも開発途上国に近い国が多いです。
いわゆる「先進国」でイメージする国は、
ほとんどが1%以下の低成長ですが、
それはそれだけ社会が成熟していることになります。
日本は社会が成熟しているほうでしょうから、
そこから労働生産性を開発途上国に近い国並みに
引き上げるのは、きわめて困難だと言えます。
日本のOECD加盟国内における労働生産性の順位は、
かなりむかしから20位前後で、ほとんど変わっていないです。
「労働生産性の国際比較2016年版」
この統計は、あとからOECDに加盟した国のデータを、
可能なかぎり過去のデータに加えているので、
調査対象国の数が現在と同じになったのは2000年以降です。
2000年以降にかぎっても、日本の順位はやはり
20位前後を変動していることがわかります。
労働環境や企業文化が現在と同じ状況が今後も続くと、
労働生産性が目立って上昇することはなく、
現在とほぼ同じ順位を続けると考えられます。
現在の労働環境や企業文化を、早急に抜本的にあたらめないと、
2030年までに労働生産性の上昇率が1.2%に到達するのは
ほとんど不可能になるでしょう。