7月13日エントリの続き。
博報堂生活総合研究所が行なった、「こども20年変化」という
子どもたちの意識や行動についての調査です。
「大人に「ぶたれた」経験のある子どもの数、過去最低に」
(はてなブックマーク)
「博報堂生活総合研究所、「こども20年変化」 調査結果を発表」
「博報堂生活総合研究所、「こども20年変化」 調査結果を発表」(PDF)
今回は暮らしぶりについて見てみたいと思います。
暮らしに対する実感ですが、幸せを感じる子、
豊かだと感じる子は、この20年間でどんどん増えています。
「失なわれた20年」が続いていて、中位層の所得も
下がり続けているので、経済的には苦しくなっている
家庭が増えているのではないかと思われます。
「ユニセフ調査 日本の「子供いる世帯」 所得格差が深刻」
子どもには負担をかけないようにしている
家庭が増えているということかもしれないです。
もしくは金銭的な部分以外で、子どもに充実感を持たせている
親が増えている、ということかもしれないです。
結婚して子どもが持てる家庭は、
現在も一定の経済力のある人たちと思われます。
配偶者のいる女性にかぎった出生率は、
近年も上昇傾向にあるからです。
「有配偶者女性ベースの出生率」
子どものいる家庭にかぎると、
むかしと比べても貧しくなっていないし、
結婚していない人と比べれば相対的に豊かになる、
ということかもしれないです。
子どもの貧困率はこの20年のあいだに
上昇を続けているので、格差上位の子どもたちが
幸せで豊かになっている反面、格差下位の子どもたちの
暮らしの困窮がひどくなっているのではないか、
という心配はあります。
「子どものいる世帯の所得格差」
「上昇を続ける日本の貧困率」
お小遣いをもらう子どもも、この20年間で減っています。
調査対象は小学4年生-中学2年生ですから、
アルバイトしている子はいないでしょう。
よってこれは、自分のお金を持つ子どもが
減っているということだと思います。
「失われた20年」が続いて、経済的に苦しくなる
家庭が増えているので、子どもにお小遣いを
あげなくなっている親が増えていることは考えられます。
同じグラフを見ると、流行に関心がある子や、
新商品が欲しくなる子も減っています。
いまの子どもはむかしと比べて物欲自体が
減っているということだと思います。
子どもの幸福度は上昇し、流行に流されにくくなって浪費傾向が薄くなり、
親に対する秘密も減って親子関係は良好、友人の数も増加し、交友関係も良好になり
遊びより勉学を重視し、人に依存するより自己解決を目指すようになり、向上心も高まっていますね。
明らかに質の向上が見られます。
私も中年になってきたためか、後世の指導に当たる機会がありますが、
私が新入社員だった頃より若年層の質は向上していると感じることが多いです。
ただし、当ブログでしばしば指摘されている母子家庭の貧困、
フランスなどと違って女性が子どもを持つことによるキャリア断絶リスクや教育費増大などは
碌に対策されず放置されたままなので、こちらを早急に改善する必要がありますね。
配偶者のいる女性に限った出生率上昇についても、
以下記事に書かれている統計マジック(出産年齢上昇過程で一時的に見かけの出生率が落ちる)
があるので要注意です。
http://totb.hatenablog.com/entry/2016/05/03/221809
※なぜか↑記事の書き手はフランスの少子化対策への批判ネタにしていますが、
社会成熟化に伴う完結出生率低下を「産めば産むほど経済的に有利になる政策」で
相殺し、常に2以上、土着フランス人に限っても概ね1.8くらいを維持しているので、
無策のまま完結出生率が1.4水準で低迷している日本から見ればとても立派です。
実質的な出生率については、見かけの出生率ではなく
以下社人研データP22の「完結出生率」で見るのが妥当です。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000138824.pdf
みずほ総研「近年の出生率上昇は統計マジックの可能性」
http://www.dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3509679_po_r090801children.pdf?contentNo=1
あるいは世代別累積出生率で、上の世代との比較で見ます。
いずれにせよ、現政権が根拠もなく心配している家庭の絆などは
むしろ好転している様子なので、夫婦別姓、子ども手当増額、教育費援助など
心置きなくやってもらいたいですね。
こちらにコメントありがとうございます。
>こちらは希望の持てる記事ですね。
>明らかに質の向上が見られます。
「失われた20年」が続いて、社会は斜陽化しているのに、
子どもたちだけは立派になっているのですよね。
ひとりのおとなとして不甲斐ないやら、もうしわけないやらです。
なにがよかったのかわからないです。
社会インフラではっきり変わったのは
インターネットの利用くらいでしょうし。
社会のせいというより、子どもたちは自分の力で
立派になっていったのかもしれないです。
>母子家庭の貧困、フランスなどと違って女性が子どもを
>持つことによるキャリア断絶リスクや教育費増大などは
>碌に対策されず放置されたままなので、
教育のインフラも、日本は劣悪なほうですね。
これをなんとかしないと、格差がさらに広がり
経済成長の足を引っ張ることにもなるでしょう。
劣悪さが問題になるのは大学、高等教育なので、
この調査の対象になっている小・中学生には
あまり影響がないのだろうとは思いますが。
>配偶者のいる女性に限った出生率上昇についても、
>以下記事に書かれている統計マジック
>(出産年齢上昇過程で一時的に見かけの出生率が落ちる)
>http://totb.hatenablog.com/entry/2016/05/03/221809
こちらはご紹介ありがとうございます。
フランスの出生率の年次推移は、全部が一時的に
見かけの出生率が下がったことによるものかを、
上の記事の人は証明する必要はありますね。
>※なぜか↑記事の書き手はフランスの少子化対策への批判ネタにしていますが、
「反フェミ」で有名なブログのようですね。
>日本から見ればとても立派です。
フランスの保育環境はこんなですからね。
日本と隔絶の差です。
「フランスにいたから産めた」
http://pissenlit16.seesaa.net/article/452217416.html
https://twitter.com/manna2010able/status/886829413731450880
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娘の妊娠を診断したフランス人医師に祝福されても
喜べなかった私が「でも未婚だし就職前でお金もないし」と言うと
「それが何?」と怪訝そうに言われ彼我の差を痛感!
検診も出産も全て無料な上出産前から多額の児童手当を受給。
あの時フランスにいたからこそ産めた娘も24歳!フランス万歳
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>以下社人研データP22の「完結出生率」で見るのが妥当です。
>http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000138824.pdf
こちらもご紹介ありがとうございます。
「完結出生児数」は2002年まではほぼ一定で、
減り始めたのは最近のことのようですね。
子ども3人の家庭が減って、一人っ子が増えたことが原因のようですが。
2002年はすでに少子高齢化が取りざたされていましたが、
それまでずっと一定を保っていたのが、わたしにはむしろ意外です。
このあとさらに減るかどうか、2010年->2015年の減少は
変動範囲内なのか、実質的に減っているのかが問題ですね。
>みずほ総研「近年の出生率上昇は統計マジックの可能性」
>http://www.dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3509679_po_r090801children.pdf?contentNo=1
日本の出生率は2006年が谷底で、
そのあとじりじりと上昇傾向にはありますが、
それこそ晩産化の影響ということになりそうです。
「反フェミ」サイトがフランスのことだと言っていたことは、
日本にこそ当てはまりそうです。
世代別の累積出生率は、あとの世代になるほど減っていますから、
晩産化とそれにともなう子どもの数の減少はありますね。
>現政権が根拠もなく心配している家庭の絆などは
>むしろ好転している様子なので、夫婦別姓、子ども手当増額、
>教育費援助など心置きなくやってもらいたいですね。
まったくもってごもっともです。
彼らにとっての「家族のきずな」はいわば宗教のようなもので、
「近年は家族のきずなが薄れている」というのも
宗教活動のうちなのかもしれないです。
(不安をあおるのは一種のカルト的手口ですし。)