2017年07月16日

toujyouka016.jpg 蓮舫が戸籍を公開する?

民進党の蓮舫代表が、自分の戸籍を公開しようとしている
というニュースが、話題になっています。
わたしに言わせれば、なぜこんなことをするのか、
こんなことをしてなんになるのかと思うところです。

「民進 党内から差別助長危惧の声 蓮舫代表戸籍公開方針」
(はてなブックマーク)
「山口二郎氏が民進・蓮舫代表の戸籍謄本公開を「全体主義国家だ」と猛批判 
八幡和郎氏は「山口先生は何を恐れているのか…」」

(はてなブックマーク)
「「私は多様性の象徴」民進党・蓮舫代表、二重国籍問題で18日に会見」
(はてなブックマーク)
「蓮舫代表 戸籍公開、危惧する声」
(はてなブックマーク)

 
蓮舫が戸籍を公開することにした直接の動機は、
昨年9月の代表選で、二重国籍問題があったためです。
うやむやのうちに終わらせた感があったので、
収拾をつけたいということです。

蓮舫が国会議員となり民進党の代表になっている
ことに関して、法的な問題はまったくないです。
わざわざ戸籍を公表するまでもなく、
議員となる資格を満たすことの確認は取れています。

公職選挙法は候補者に戸籍謄本あるいは抄本の
提出を義務付けているので、候補者になれたということは、
被選挙権の条件である「日本国籍」を有するという
確認を受けているということだからです。

https://mainichi.jp/articles/20170716/k00/00m/010/061000c
蓮舫氏は2004年参院選で初当選し、現在3期目。
公職選挙法は候補者に戸籍謄本または抄本の提出を義務づけており、
蓮舫氏も立候補した時点で被選挙権の要件である
「日本国籍」の確認を受けたのは明白だ。

また、二重国籍を直接の国会議員の失職事由とする法令はない。

そして二重国籍であることで国会議員の資格を
停止する直接な法的根拠はないです。
蓮舫が日本以外の国籍を持っていようといなかろうと、
国会議員の資格には関係ないということです。


戸籍には祖先が外国人とか、同和地区の出身だったとか、
出自がわかる個人情報が含まれています。
スティグマ性のあるプライバシーを含んでいる
きわめてデリケートなものということです。

現在では戸籍は原則として第三者は
閲覧できないようになっています。
これは同和地区出身のかたが、結婚や就職に関して、
戸籍を調べることで身元調査をされると
差別的扱いを受けるので、それを防ぐ必要から、
秘密性を高めることにしたのでした。

最初に戸籍法が改正されて、請求理由によって
閲覧を制限できるようになったのは1976年です。
2008年にも戸籍法が改正され、閲覧制限が強められ、
非公開が原則となり、罰則の強化もなされました。

「部落差別と戸籍の非公開の闘い」
「戸籍と人権 〜個人の尊重、戸籍のあり方〜」
「戸籍の窓口での「本人確認」が法律上のルールになりました」
「改正戸籍法施行を機に考える「戸籍と人権」」

戸籍とはそのくらい慎重に扱うものであり、
おいそれと公開してはならないものだということは、
これをご覧のかたは、よくご存知だと思います。


蓮舫はみずから戸籍の公表に積極的にはなっています。
自分は多様性の象徴だと思っているとも
言っているのですが、それならなおさら戸籍の
公表などしないのが本来だと思います。

この日の会見でも記者から、多様性や共生社会の構築という
民進党の党綱領に反するのではとの質問が出たが、
「私は多様性の象徴だと思っている。
共生社会を目指す方針に一点の曇りはない」と強調。

出自を示す個人情報を公開するということは、
それだけ出自にこだわるということであり、
出自に関係なくすべての人が暮らすという、
多様性や共生社会とは逆行することになるからです。


識者の意見を見てみたいと思います。

山口二郎法政大教授は11日、ツイッターで「政党の消長よりも、
日本における基本的人権にかかわる重要な問題」と指摘し、
「これは絶対に譲ってはならない一線だ。
公的な活動、発言をするときに、自分は真正な
日本人であることをいちいち挙証しなければならないなんて、
全体主義国家だ」と書き込んだ。
名古屋大の日比嘉高准教授(日本近現代文化論)も
党内からの公開要求を「議員として守るべき
一線を越えている」と批判する。
近藤教授は「議員に限らず『本当に日本人なのか』と
ルーツをあぶり出す空気を醸成しかねない」と指摘。
国籍法に詳しい名城大の近藤敦教授(憲法)は
「戸籍は基本的に非公開であるべきだ。
党内事情で公開に応じるとすれば、社会に深刻な
影響を与えかねない」と警告する。
有田芳生参院議員は自身のツイッターで
「一般人への攻撃材料になることは目に見えている」と記述。
蓮舫氏が「前例」になり、国籍確認のために個人情報の公開を
強要されるなど、差別的な対応が拡大しかねないと懸念した。

ことは日本社会全体の基本的人権に関わることです。
民進党の内部事情なんてローカルな事情で
これに反することをするのは大問題と言わざるをえないです。

これを契機に、なにかにつけて本当に日本人なのかと、
出自を問題にする雰囲気ができる可能性もあるでしょう。
発言や活動に対して、いちいち出自を問題にすることが
差別的であることは、言うまでもないでしょう。


とりわけ危惧されるのは、議員以外の一般の人たちにも
戸籍や個人情報の公開を要求する風潮が拡大することです。
在日外国人や同和地区出身者など、スティグマ性のある
出自のかたはもちろん、そうでない人たちに対しても
プライバシーの暴露につながるでしょう。

民進党の蓮舫代表が日本と台湾の「二重国籍」問題で
戸籍謄本を公開する意向を示したことに、
党内から「外国人や日本国籍の取得をした人への差別を
助長しかねない」と危惧の声が上がっている。

蓮舫や民進党内で公開を主張する人は、
党の代表で公人だから特別だとしています。
こうやってどこかに「特例」を作ることで、
「風穴」がだんだん大きくなる恐れもあると思います。

戸籍に関する公表は「個人のプライバシーに属するもの。
差別主義者に言われて公開することは
絶対あってはならない」と言明した。
その上で、自らは野党第一党の代表で公人であることから
「極めてレアケース」だと前置きし、
大串博志政調会長は「通常は絶対あってはならず、
多様性を求める党是にも合わない。
ただ、野党第1党の党首という立場を考えると
やむを得ない」と話した。

posted by たんぽぽ at 13:42 | Comment(1) | TrackBack(1) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
拍手コメントありがとうございます。

わたしもその可能性を考えました。
あるいはわざと注目される話題を作って、
支持率の回復につなげようなんて思ったのではないか、
なんて考えたりもしました。

7月15日の毎日新聞によると、「二重国籍問題を
うやむやにしたから東京都議選で大敗した」という批判が
党内からあったからだそうです。
なにを無茶苦茶なことを言っているんだと思います。
https://mainichi.jp/articles/20170716/k00/00m/010/061000c

次のエントリでこのあたりに触れたので、
ご覧いただけたらと思います。
http://taraxacum.seesaa.net/article/451861637.html
Posted by たんぽぽ at 2017年07月16日 22:02
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Tracked: 2017-07-30 15:06