社会保障政策とその財源を見てみたいと思います。
これは気になるところだと思います。
「社会保障充実、財源も論戦 前原氏と枝野氏 民進代表選」
「社会保障充実、財源も論戦」(全文)
「背水の民進 社会保障の財源、対立 前原氏「増税」/枝野氏「赤字国債」」
前原、枝野のどちらも社会保障と福祉の充実を主張し、
個人消費を拡大することで景気回復を図る政策を掲げています。
これはとくに問題はないでしょう。
社会保障と福祉の充実、そして個人消費の拡大は
多くの人が望んでいることだと思います。
これらは安倍政権の経済政策がなおざりにしたことでもあり、
安倍政権との対立軸もはっきりすると思います。
前原、枝野両氏はいずれも、新自由主義的な
安倍政権の経済政策に対抗し、社会民主主義的な
経済戦略を一致して打ち出す。
「個人を疲弊させるのがアベノミクス」(前原氏)として、
社会保障を拡充して安心感を確保することで
消費拡大を図るとの主張だ。
民進党代表選(9月1日投開票)で、前原誠司元外相(55)と
枝野幸男前幹事長(53)がアベノミクスへの対抗策として
掲げるのが、社会保障や福祉の充実による低所得層の底上げだ。
共に個人消費を喚起して景気回復を狙う政策だ。
社会保障の具体的な内容ですが、これも前原、枝野のふたりとも
同じようなことをあげていて、介護士、保育士の待遇改善、
教育無償化、年金の安定化といったことがあります。
これらも妥当であり、明言しているのはよかったと思います。
枝野氏が最優先課題として訴えるのが介護職員と保育士の待遇改善。
社会保障政策ではなく「景気対策」と位置付けるのが特徴だ。
枝野氏は「人手不足は低賃金だからだ。
需要があって供給が不足していたら価格が上がるのが
経済の原理だが、政治が低く抑えている」と繰り返し、
前原氏は基本理念として「オール・フォー・オール
(みんながみんなのために)」を掲げる。
「応分の負担をいただきながら、全ての世代の不安を解消する」として、
貧困対策や個人消費拡大に向け、教育無償化や年金の安定化、
介護職員や保育士の待遇改善などを訴える。
介護士、保育士が低賃金であることは、
昨年「保育園落ちた」の匿名記事をきっかけに問題視され、
かなり議論されることになりました。
介護士、保育士が不足するのも低賃金が原因、
ということも指摘されていることです。
「保育士の給与はなぜ低い?」
「保育士が不足する理由」
教育無償化もぜひとも推進・実現してほしいことです。
日本はとくに高等教育に対する公的支出が少なく、
OECD加盟国の中では最低となっています。
そして給付型の「奨学金」がほとんどないです。
「教育の機会不平等・原因と結果」
かくして日本は大学の授業料が高く、
奨学金が少ない唯一のOECD加盟国となっています。
OECDの中で日本は他国と比べて飛び抜けて、
大学生の負担がとても大きいということです。
「学費は高いわ援助はないわ・・・日本の高等教育@OECD」
>財源
これらの社会保障の財源をどうするかが、とても気になるところです。
前原誠司は消費税の10%への引き上げを主張しています。
これは問題だと思います。
前原氏は「財源は検討中」としたが、
2019年10月の消費税率10%への引き上げについては
「よほど経済状況が変わらない限り、(使い道の)中身を
組み替えて納得してもらえるものにしていく」と述べ、
引き上げるべきだとの考えを強調した。
消費税を10%に引き上げたら、それこそ消費が低迷して、
「個人消費の拡大で景気の回復」というもともとの目標と
正反対の事態になりかねないと思います。
2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げたときも
実質賃金が下がり、個人消費が落ち込んだのでした。
「保育士の待遇改善の財源」
3年前の2014年9月に「消費税を10%にしたら日本は終わる」と
経済学者のクルーグマンが警告していましたが、
この状況は現在もまだ当てはまると思います。
「本誌独占インタビュー ノーベル賞経済学者クルーグマン
「日本経済は消費税10%で完全に終わります」」
枝野幸男氏は消費税の引き上げには反対で、
財源の確保は赤字国債の発行を主張しています。
より具体的には、現在発行している建設国債を
介護職員や保育士の賃金上昇に当てるというものです。
対する枝野氏は「足元の経済状況や、税の使い方に対する
国民の信頼を考えると、到底できる現状にはない」と反論。
介護職員や保育士の賃金アップには1兆円規模の財源が必要だとして、
「建設国債で景気対策をやっている分を介護職員や保育士の
賃金を上げることに使うのは財政的に合理的だ」と訴えた。
ようは「公共事業を削って介護と保育に回す」です。
これはわたしも妥当だと思います。
経済学者や社会保障の専門家も指摘していることですし、
よくぞはっきり示してくれたと思います。
「財政政策・福祉と公共事業」
「左派こそ金融緩和を重視するべき 松尾匡・立命館大教授」
「ひどい不況の時、金融緩和で作ったお金は、
直接には使われず銀行にため込まれてしまう。
だから、そのお金が世の中に回る仕組みをつくるために、
安倍政権は旧来型の公共事業を第2の矢として実行し、それが効いた。
質はともかく、景気が拡大する方向への力が働いているのだと思う。
本来は、公共事業よりも、介護や福祉の働き手を増やすために使うべきではあるが」
「保育士の待遇改善の財源」
「介護士の厳しい待遇は「女性労働だから低賃金で低待遇」」
「軍備費や公共事業にばかりお金を割いている。
消費増税が引き延ばされたら財源不足のものが出てくると思うが、
そもそも社会保障に消費税を充てることが間違い。
諸外国ではあらゆる税収を充てています。
待機児童対策など緊急性の高いものは、
むしろあまり緊急性のない公共事業費を削って回すべきです」
前原誠司、枝野幸男のどちらの候補者も、
金融安定化政策による景気の活性化で、
経済成長させて財源を確保する、という考えは出していないです。
依然として金融緩和に対するアレルギーがあるのか、
それとも「アベノミクス」と同じだから避けられるのでしょうか。
「金融安定化政策と民主党」
「金融緩和アレルギーの系譜」
民進党に理解のあるシンクタンクのかたも、
アベノミクスのうち金融緩和だけは評価しています。
たくさんの経済学者も主張することですし、
これは積極的に受け入れることだと思います。
「安倍政権・経済効果が薄い理由」
「「日本の非正規雇用はアメリカから見てもヒドイ!」」
ファクラー アベノミクスには、基本的には「1本の矢」しかありません。
日銀による金融緩和策で、それは本当にうまくいったんですね。
むしろ、この20年ほど日銀が何も動いていなかったのが
異常な状態だったとも言えます。
「左派こそ金融緩和を重視」
「自民党だけではなく、共産党も社民党も、
政治家はお金がなければ公約は実行できない。
民主党政権がうまくいかなかったのは、
高校無償化や子ども手当を掲げたが財源が足りず、公約違反だと批判された。
ところが、金融緩和でお金を作っていれば全部でき、
おまけに景気も良くなったはずだ。
民主党政権には、そういう発想はなかった」