子どもの貧困率が下がったという、厚生労働省による
国民生活基礎調査を見ていきたいと思います。
「子どもの貧困率、12年ぶり改善 主要36カ国で24位」
「子供貧困率 なお13.9% 15年 ひとり親世帯は過半数」(全文)
(はてなブックマーク)
「子どもの貧困率が減った! 何がどう変わったのか」
(はてなブックマーク)
今回はひとり親世帯の貧困率を見てみます。
2015年のひとり親世帯の貧困率は50.8%です。
前回調査の2012年のときは54.6%でした。
よって前回より貧困率は減少しています。
この貧困率の減少を「貧困の改善」と考えるかは微妙です。
過去からの推移を見ていると減少3.8ポイントは、
「変動範囲内」の可能性も考えられるからです。

ひとり親世帯のよりくわしい状況は、
上述の湯浅誠氏によると以下のようです。
「改善した」と言っても少しであり、依然として
貧困ラインの周辺に多くの世帯が集中していて、
生活実感は持てないだろうということです。
依然として厳しいのはひとり親世帯で、
増えたとはいえ、2人世帯で月収16〜20万円、
3人世帯で月収20〜25万円程度が増えただけだから、
「余裕が出てきた」とは到底言えない。
ギリギリの度合いが若干和らいだという程度だし、
生活実感があるかと言えば、おそらく「ない」と
答える人が多数ではないだろうか。
貧困ラインを若干上回っただけのギリギリのところに、
依然として位置している。
ひとり親世帯の貧困率は、減ったとはいえ、
依然として過半数(50.8%)。
しかも貧困ラインギリギリのところに多数がへばりついている。
子どものためにも、引き続き対応が検討されていく必要がある。
ひとり親世帯の貧困率が50%を超えている
というのは、依然として高い水準です。
少し古い統計になりますが、2010年のOECDの調査では、
日本はひとり親世帯の貧困率が50%を超えている
唯一の国であり、OECD加盟国中最高でした。
2015年はひとり親世帯の貧困率は減少しましたが、
それでも日本のひとり親世帯の貧困率が
最高水準であることは変わりないでしょう。
「日本のひとり親世帯の貧困率」

フランスの子どもの貧困率は25%程度、
イギリス、スウェーデンは20%以下であり、
デンマークは10%にも満たないです。
こうした国ぐにでは、ひとり親世帯でも貧困ラインぎりぎり
という世帯は、日本よりずっと少ないだろうと思います。
日本は親が働いていないより働いているほうが、
ひとり親世帯の貧困率が高いという
OECD加盟国中唯一の国という異常事態があります。
2013年のデータですが、貧困率のデータが更新された現在も、
この状況は変わっていないと思われます。
「ひとり親世帯の貧困率・2013年」
一人親世帯の貧困率(2013年)。
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2017年3月14日
日本は,親が働いている世帯のほうが貧困率が高い。シングルの親が働いても,公的扶助レベルの収入すら得るのが難しいってこと。こういう社会は他にない。 pic.twitter.com/4iVf5ArpkH
日本以外のOECD加盟国のひとり親家庭の貧困率は、
親が働いている家庭はどこも40%以下です。
イギリスやデンマークは5%程度かそれ以下です。
これらの国ではひとり親でも就労できれば
貧困の問題はほぼ解決するということだと言えます。
日本は親が働いている世帯のひとり親家庭の
貧困率は55%程度であり、他国とくらべて
突出して貧困率が高くなっています。
日本はひとり親世帯からも税金や社会保険料を
たくさん徴収しながら、ほとんど還元しないということです。
「わけあたえる」のではなく「むしり取る」わけです。
再分配がまともに機能していないということであり、
これが日本のひとり親家庭の貧困率を
きわめて高くしている原因と言わざるをえないです。