「弱者男性」のフェミニズム観についてのエントリは、
高収入の女性はすべての弱者男性を養えるのか、
という人数に関する考察もしています。
「なぜ「弱者男性」の敵が「フェミニスト」なのか」
ジェンダー別の年収階層データを見て、
(出典は2014年の国税庁、民間給与実態統計調査結果)
「高収入女性」と「金のない男性」が
それぞれどれだけいるかと見てみます。
「年収階層分布図2014-年収ラボ」
「金のない男性」を年収300万円未満とすると
672.7万人(割合は男性全体の25.0%)です。
「高収入女性」を年収600万円以上とすると
104.1万人(割合は女性全体の5.2%)です。
かりにすべての高収入女性が弱者男性を養ったとしても、
570万人以上の弱者男性があふれることになり、
養われないことになります。
雇用や社会福祉を充実させる代わりに、
高収入女性に弱者男性の生活を保障させるという考えは、
単純に「頭数」だけで破綻するということです。
日本は年収のジェンダー格差の大きい国です。
「夫は働き妻は専業主婦」という前時代の家族観が
いまだ残っているので、雇用環境は既婚男性中心で、
女性は生産性の低い低賃金の部門に回されやすいです。
「男女&雇用形態別年収分布」
正規・非正規の年収曲線。雇用形態の差と同時に,正社員のジェンダー差にも注目。これ,調査法の学生さんに計算させたんだけど,憤りの感想が多かった。 pic.twitter.com/XC6tgbqBwN
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2013年12月23日
とくに結婚した女性は低賃金の非正規雇用に
つくことを余儀なくされることが多いです。
諸外国と比べても、日本は年収のジェンダー格差が
大きい国であることがはっきりします。
「年収の男女格差・国際比較」
フルタイム就業男女の年収のジェンダー差。 pic.twitter.com/mp66mRgbcN
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2016年2月29日
こうした「常識的なこと」を考えれば、
「高収入女性が弱者男性を養う」なんて、
簡単に破綻することは、容易にわかることだと言えます。
「弱者男性」や「きもくて金のないおっさん」たちは、
なぜ明白な年収のジェンダー格差を問題にせずに、
「高収入女性は自分たちを養え」などと
言うのか?という問題があります。
彼らは年収に厳然とジェンダー格差があること、
そして低収入の女性は低収入の男性よりずっと多いのであり、
高収入の女性なんて「ひと握り」であることなんて、
そもそも認識していないのではないかと、わたしは思います。
わたしが想像するに「弱者男性」や
「きもくて金のないおっさん」諸氏は、
社会に対する見識がないことに加えて、
「自分たちこそ社会的弱者」という
狭隘な被害者意識を持っていると思われます。
彼らが眼にして存在を意識する女性は、
高学歴で高収入のフェミニストばかりです。
それゆえ「時代はすでに男女平等になった、
年収のジェンダー格差もなくなっている」と
錯覚していることはありそうです。
「弱者男性のフェミニズム観」
弱者男性が想定するフェミニストは、高学歴で高所得の
女性らしいですが、まずその前提がどうなのかと思います。
確かに、発言機会を与えられる女性はそういうタイプが多いと思います。
あるいは「すべての弱者男性が高収入女性によって
救済されることを考えているのではない、
おれたちの一部でも救済されればいいのだ」と、
言いたいのかもしれないです。
この場合、高収入女性によって救済されなかった弱者男性は、
救済された弱者男性をどう思うのかと思います。
「自分たちと同じ境遇の仲間が少しでも
救済されたのでよかった」と考えるでしょうか?
むしろわたしがありそうだと思うのは、
「あいつだけいい思いしやがって」と、ねたみそねみで、
相手の見つかった「弱者男性」を相手の見つからない
「弱者男性」が攻撃するようになる、ということです。
高収入女性によって救済された弱者男性は、
救済されない弱者男性にとって、それだけで「勝ち組」であり、
もはや「弱者男性」にならないのではないかと思います。
「弱者男性」どうしの「分断」が生じそうです。
彼らが「分断」してもわたしはかまわないです。
その前に「高収入女性が弱者男性を養うようになった」という
ここでの前提自体が、現実にありえない仮定ですが。