2017年10月15日

toujyouka016.jpg 立憲民主党の公約・経済政策

10月11日エントリに引き続き、
立憲民主党の政権公約を見ていくことにします。

「政策パンフレット」

今回は1.のページを見てみることにします。

「生活の現場から暮らしを立て直します」

 
1.から5.の項目については、とくに問題ないでしょう。

生活の現場から暮らしを立て直します


「将来的な国民負担を議論することは必要ですが、
直ちに、消費税率10%へ引き上げることはできません」というのも、
妥当な判断であることは、10月12日エントリで触れています。

「問題だらけの消費税増税」

現時点では景気回復がいまもってふじゅうぶんですから、
消費税率を引き上げたら、景気が恐ろしく落ち込むでしょう。

「自民も民進も間違っています。いま消費税を上げるべきでない。
むしろ景気拡大が不十分なら消費税の減税こそが必要です。
代わりに法人税や財産所得を含めた所得税の累進率を上げればいい」

消費税増税の凍結は枝野幸男が民進党の代表選で
公約にしていたことでもありました。

「民進党代表選・社会保障」


「実質賃金の上昇によって中間層を再生します」と
いうのはどういうことなのかと思います。
実質賃金が低下するのは、金融緩和によって
インフレを起こしたときの必然的な現象です。

「金融安定化政策のメモ」
「金融緩和の中間層への波及」

インフレに向かうと市場に出回るお金が増えるので、
貨幣価値が下がることになります。
それゆえ以前から雇用を得ていた人たちの
実質賃金が下がることになる、ということです。

デフレというのは、一部の人たちが失業することで、
雇用を確保し続けている人たちの賃金が上がる
ということですから、それが解消されて失業率が下がれば、
以前から雇用を得ている人の賃金が下がるのは、
ごもっともということです。

失業率の低い状態がしばらく続いて、企業の生産性が高くなると、
被雇用者の賃金上昇にことになります。
「アベノミクス」は中途半端で、まだこの段階に
いたっていないので、実質賃金が上昇するまで
さらに景気を促進しようということでしょうか?


安倍政権下での実質賃金の低下は、
インフレにともなう貨幣価値の低下よりも、
消費税の増税にともなう消費の低迷のほうが大きいです。
それゆえ消費税の増税を凍結して、消費を不活発にしない
ということであれば、妥当な政策だと思います。




アベノミクスで実質賃金が低下しているのは、
新しく作り出している雇用に低賃金の非正規雇用が
多いことが、影響していることも考えられます。

低賃金の非正規雇用に回されるのは多くは女性です。
正規雇用は男性のものであり、女性は家計を補助する程度という、
前時代のジェンダー役割と結びついた雇用環境を
続けていることが大きな原因です。

「実質賃金の低下と男女格差」

ご指摘の実質賃金の減少についてでありますが、景気が回復し、
そして雇用が増加する過程において、パートで働く人が増えれば、
一人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけであります。

パンフレットの箇条書きの1.-3.を見ると、
正規雇用と非正規雇用の格差を減らすこと、
とくに女性を低賃金の非正規雇用に回す要員にせず
男性の正規雇用と同程度の賃金にすることで、
実質賃金を上昇させるということになりそうです。
それは政策として適切だと思います。




ジェンダーやマリッジステートと分かちがたく
結びついた、正規雇用と非正規雇用の格差が
労働生産性を低い水準にとどめ、かつ賃金格差が大きいゆえに
消費の主体である中間層が育たない現状があります。

「日本はどうして賃金が上がらないのか」
終身雇用制と年功序列が完全にはなくならず、
さらに正規雇用と非正規雇用が固定化したため、
低賃金の労働力が生産性の低い分野に流入した。
日本は若者や女性を虐げ、外国人労働者を排除してきたため、
時代の変化とグローバル化に完全に乗り遅れてしまった。

「「日本の非正規雇用はアメリカから見てもヒドイ!」」
日本の非正規雇用はアメリカから見てもヒドイ! 
とにかく給料が低すぎます。
給料が低いと、消費の主体である中間層が育たないので内需が拡大しない。
中間層を育てるためにはどういう雇用形態が必要なのか、
何を保障すべきなのかを話し合うことが必要なのに、
そんな建設的な社会議論さえありません。

よって正規雇用と非正規雇用の格差や、
賃金のジェンダー格差を是正することは、
消費の活性化をもたらすし、実質賃金を引き上げて中間層を
再生する観点からも、妥当な政策となるでしょう。


中間層の不満を解消することは大事でしょう。
一般に中間層は経済政策の恩恵を感じにくい層です。

彼らが社会に不満を感じると、右傾化やネトウヨ化して、
さらに深刻な状況にになりかねないです。
彼らが不満を溜め込まないようにするためにも、
中間層が恩恵を感じる政策は必要と言えます。

ちゃんと働いているのに(自分たちを)中流と
感じられない人たちがイライラしてきて、
大統領選で共和党のドナルド・トランプを支持してしまう。
日本でいえばネット右翼と同じで、どこかで怒りたい、誰かのせいにしたい。
それらは根本的には経済政策が問題なのだと思います。

―中流層から富を奪って下流に叩き落とし、その結果、
不満を持った人たちが彼らの「支持者」になる…。
皮肉な話ですが、権力側にすればオイシイですね。


最初に金融緩和によってインフレを起こして
雇用を増やして失業者を減らすという、
「アベノミクス」の「第一の矢」に相当する政策については、
立憲民主党はどう思っているのかと思います。

実質賃金を上昇させて中間層を厚くする前に、
なにより景気をよくして雇用を増やすことが大事です。
また各種の社会福祉制度の財源確保のためにも、
金融緩和にともなうインフレで税収を増やすことが必要です。

金融緩和は実質賃金の低下をもたらすので
このましくない政策などと考えているなら大問題です。
金融安定化政策に理解がないことが、
民進党は経済がわかっていないとされた
ゆえんでもあったのでした。

多くの経済学者も「アベノミクス」の
「第一の矢」だけは評価していることです。
ここに立憲民主党は積極的な政策を示してほしいとも思います。

posted by たんぽぽ at 23:33 | Comment(2) | 選挙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
枝野氏は経済政策は弱いんじゃないかと色々言われてますけど、
アベノミクスこそ結局のところ何も成功していない。
株価があがる、法人税減税→企業の内部留保がたまる、という図式にあっても、実質賃金の減少状況。雇用は増えたといっても、非正規雇用がぐんと増えて、男性も多い。そりゃ雇用が増えても賃金さがる。金融緩和による賃金低下とは違うんじゃないのかな。

演説では、「非正規で賃金200万も行かなかったら、何も買いたいものが買えない、車も買えない、消費が冷え込むだけ」「これで残業代ゼロ法案、とんでもないことをしようとしてる」「企業が潤えば、庶民が潤う、、そんな風にはなっていない。格差社会になるだけだ。庶民の消費を上げて、経済を成長させないとだめ。上からではなく下から!」というようなことを言っていたように思います。

現状、日本もアメリカと同様に格差社会に向かってるということですね
Posted by うがんざき at 2017年10月21日 15:03
うがんざきさま、コメントありがとうございます。
ようこそお越しくださりました。

>アベノミクスこそ結局のところ何も成功していない。

成功したと言えるのは「第一の矢」だけというのは、
少なくない経済学者が指摘していますしね。
「第一の矢」で増えたという雇用も、
実は団塊世代が退職してポストが開いたぶんの寄与がある
という疑いが残っていますし。

財政出動も旧式の公共事業ばかりですが、
これも景気対策にはあまり寄与していないと、
経済学者からの指摘があります。

賃金を引き上げないと、緩和マネーが資産として
溜め込まれるという指摘もありますが、
この指摘通りになってきているようですし。


>非正規雇用がぐんと増えて、男性も多い。そりゃ雇用が増えても賃金さがる。
>金融緩和による賃金低下とは違うんじゃないのかな。

実質賃金の低下は、低賃金の非正規が増えている、
ということのほうが大きいのではないかというのは、
わたしも思っています。

パートが増えたから実質賃金が下がったと、
安倍首相がみずから国会答弁で言っていましたし。
http://taraxacum.seesaa.net/article/432839843.html


>演説では、「非正規で賃金200万も行かなかったら、何も買いたいものが買えない、

賃金格差のせいで消費が伸びないから、
景気が回復しないという指摘も、
よくなされているものだと思います。
この点に関しては、枝野幸男のほうが
「経済をわかっている」と言えそうです。
Posted by たんぽぽ at 2017年10月21日 18:20