2017年12月12日

toujyouka016.jpg なぜ日本の性教育は後退したか

12月10日エントリでご紹介した、貧弱すぎる性教育が
危険な事態を引き起こしているという記事ですが、
なぜ日本の性教育が貧弱になったのか、
原因についても簡単に記述があります。

「「セックスすると妊娠」「処女にも生理」すら知らない…遅れすぎの性教育で危険な事態も」

 
記事では00年代に「一部の保守派やマスコミ」による
性教育バッシングがあったことに言及があります。
ここに触れているのはよかったです。
もっと常識的に知られてよいことだと思います。

ところが、2002年頃に一部の保守派やマスコミによって
“性教育バッシング”が始まり、日本の性教育が一変してしまう。

「教育方法や教材・教具が槍玉に挙げられ、
都立七生養護学校の性教育に対して激しい攻撃が始まりました。
その後、10年近い訴訟の末に七生養護学校の先生方が勝訴し、
『学習指導要領は基準を示すもので、教師たちの創意工夫による
性教育は違法ではない』と認められました。

性教育バッシングの「いけにえ」にされた七生養護学校の
性教育裁判とその顛末についても触れています。

「七生性教育裁判・賠償確定」

自民党が性教育バッシングを先導したこと、
安倍晋三も主導的立場にあったことにも言及がほしかったですが、
紙面の都合でそこまでは無理だったのかもしれないです。

「自民党的性教育と女性の権利」
「自民党・性教育バッシング」
「なぜ日本の性教育は進まないか」

「「レイプもセックスだと思ってた」…まともに教えず、男を誤解させる自民党の政治的性教育」

特に今の首相である安倍晋三さんなんかは、
第一次安倍政権の2005年に「過激な性教育・ジェンダーフリー
教育実態調査プロジェクト」を設置し、性教育を激しくバッシングしました。

その事務局長を務めていた山谷えり子さんとは、
フジテレビの討論番組で向き合いましたが、「性なんて教える必要はない」
「オシベとメシベの夢のある話をしているのがいい」
「結婚してから知ればいい」などというのがその主張でした。


七生養護学校の性教育裁判は学校側が勝訴しました。
それにもかかわらず多くの学校現場で性教育に対する萎縮が
いまだに続いているという問題があります。

しかし、当時の性教育バッシングがトラウマになっているのか、
学校現場ではいまだに性教育に対して萎縮ムードが続いています」

これに関してですが、学校現場ではまだまだ性教育に対する
忌避が強く、「性教育狩り」が「自発的」になされることが、
「萎縮ムード」の原因ではないかと思います。

避妊を教えた教師が、生徒の親御さんからの
密告によってクビになることあります。
教師も職を賭して性教育を教える必要があるということです。
自分が失業するリスクを抱えてまで
性教育を教えたい教師は、なかなかいないでしょう。

「避妊を教えた教師がクビ」
「避妊を教えた教師がクビ なぜ日本の“性教育”は進まないのか?」

AV女優の経験を持つタレントの総長ダリアさんは、
1年ほど前に九州の学校の先生から相談を受けた。
「保険体育の授業で自分は若いときに中絶をさせてしまった経験があるから、
そういう悲しい思いをしないためにも
コンドームを使わないといけないって教えたら、
生徒の親に知れ渡って、PTAにチクられて。
その先生がクビになっちゃったんです」と衝撃のエピソードを紹介。
「先生たちも命がけで授業をしているから、
話したくても教えられないのでは」と分析した。



そんな日本も1990年代までは、性教育は取り立てて
遅れていなかったという指摘があります。
(これはわたしも初めて知りました。)

性感染症を防ぐという観点から、性教育が重視されました。
このまま続けば、日本の性教育も諸外国と同様の、
充実した内容になっていたものと思います。

しかし、昔からこうだったわけではない。
橋本さんによると、1990年代の日本の性教育は
決して遅れていたわけではないという。

「80年代半ばに起きた“エイズパニック”を受けて、
90年代の日本ではHIV感染症を未然に防ぐための性教育が重視されました。
89年に小学校の学習指導要領が改訂され、
92年から小学校5年の理科で『ヒトの発生』を扱うようになり、
保健の教科書も登場して、男女の二次性徴や
生殖器官の名前も問題なく扱えるようになったのです」

当時の小学校の教育現場では、
HIVの感染経路を子どもたちに教える
『ひとりで、ふたりで、みんなと 性ってなんだろう』(東京書籍)
という副読本も普及していた。
教員たちも、工夫をこらして性教育に取り組んでいたという。

この間、諸外国ではどんどん性教育の内容が充実しますが、
日本だけは国際社会の動きに反して、
「性教育バッシング」によって萎縮していきました。
なぜ日本だけ「性教育バッシング」に屈することになったのか、
研究が必要なところだと思います。

posted by たんぽぽ at 23:15 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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