青野慶久氏が予定している夫婦別姓訴訟に関連した
選択的夫婦別姓についての記事の最後のほうにある
次の指摘はまさに日本のことだと思います。
「家族観が硬直化」と「家族成員間の相互扶助負担が重い」という
ふたつの条件に当てはまり、実際に出生率が低いです。
「「選択的夫婦別姓」訴訟から考える「家族主義が家族を壊す」現実―― 水無田気流」
立命館大学教授・筒井淳也氏が『仕事と家族』(中公新書)で
指摘するように、世界的に見れば家族観が硬直化、
かつ家族成員間の相互扶助負担の重い国ほど少子化が進行するなど、
客観的に見れば「家族主義は家族を壊す」点が指摘できる。
「家族観が硬直化」というのは、戦後民法が規定する
「家族のありかた」を金科玉条のように守り、
高度経済成長期に企業利益のために浸透した
「夫が外で働き妻が専業主婦が理想の家族」という家族観で
硬直化していることにほかならないでしょう。
「家族思想という信仰」
記事では「理念としての家族像」と書いているものです。
家族やジェンダーに関して因習・反動的な人たちは、
かかる硬直した家族観を「伝統的家族」と呼びます。
このような家族観が日本では一種の「信仰」のように
なっているので、硬直化することになります。
彼らは家族観が硬直化しているゆえに、
「信仰」に当てはまらない家族のありかたは
「異教徒」としてひたすら排撃することになります。
選択的夫婦別姓の導入に反対する異様な情熱の原動力です。
「他人の生きかたを拘束する理由」
硬直した家族観が現実から乖離していることは、
フィクションに現れることになります。
フィクションは製作者が硬直した家族観を
「現実」と思って作ることになるからです。
「フィクションに見る家族思想信仰」
「フィクションに見る家族思想信仰(2)」
平凡な庶民として描かれる「クレヨンしんちゃん」の家庭が、
実際には平均をはるかに上回る裕福層だったり、
同性愛者がいない仮想空間で生活するゲームに、
このような乖離は現れていると思います。
国際的に見ても、出生率が低い国の代表として
日本のほかドイツ、イタリア、韓国があります。
これら4カ国は、近年はずっと世界でもっとも子どもが
少ない国の上位4位を独占しています。
「世界一子どもが少ない国」
これらの国ぐにはどこも「理念としての家族像」で
家族観が硬直しているという特徴があります。
以下では「良妻賢母嗜好が強い」と表現しているものです。
「良妻賢母嗜好と出生率」
「良妻賢母が好きな国はなぜ出生率が低いか」
「良妻賢母が好きでない国の方が出生率が高い」というものです。
少子化の国は「日本、イタリア、ドイツ、韓国」など
「伝統的家族観」が強いところ。当然良妻賢母が良しとされます。
イタリアなんか「マンマ」の国ですし。
だいたいどこの国も、「理念としての家族像」とか
「伝統的家族」とされるものは、家族やジェンダーに関して
因習・反動的で、ジェンダー規範の強いものです。
より具体的には「夫が外で働き妻は専業主婦」という、
19世紀以降台頭したブルジョワに始まった家族観です。
これは女性は収入の担い手とはならず、
家庭のことに専念することを前提にしています。
よって女性が仕事を持ちながら家庭との両立ができることを
前提に設計されていないことになります。
経済状況が変化して、夫婦片働きでは家計の維持が難しくなると、
夫婦共稼ぎに移行する家庭が増えてきます。
「理念としての家族像」「伝統的家族」は、
女性にとって仕事と家庭の両立が困難なので、
自分の生活を維持するために、子どもを持たずに
仕事を続ける女性が増えることになります。
かくして「理念としての家族像」や「伝統的家族」で
家族観が硬直する社会は、出生率が低下することになります。