2018年02月12日

toujyouka016.jpg 2分の1成人式・多数派の暴力

10歳になったことをお祝いする、
「2分の1成人式」なる学校行事があります。
この「2分の1成人式」はとても問題が多いのですが、
それを指摘した記事があるので見てみたいと思います。

「元小学校教員が挙げる、2分の1成人式を即刻やめるべき5つの理由」
(はてなブックマーク)

このエントリは2017年1月に書かれたので、
いまから1年ちょっと前のものですが、
わたしは最近このエントリを知りました。

 
このエントリによると、「2分の1成人式」を
やめるべき理由を、次の5つにわけています。

1. 苦しむ子どもがいる
2. 親を喜ばすためのイベントはいらない
3. 学校は子どもたちが勉強をすべきところ
4. 関係者全員が余計な負担を負う
5. そもそも公教育がやることではない

ここでは「1. いらぬ苦痛を受ける子どもがいる」を
とくに注目したいと思います。
いらぬ苦痛を受ける子どもは具体的に
次のような事情があることを挙げています。

私が挙げるだけでも、

片親に育てられている子ども
施設で生活している子ども
虐待を受けている子ども
親が仕事等で式に来られない子ども
親の事情で親から手紙を貰えない子ども
公の場でありがとうを言いたくない子ども

このような子どもたちが、いらぬ苦痛を受けるのです。

さらに「5. そもそも公教育がやることではない」の節で、
「2分の1成人式」はプライバシーの侵害や、
カチカンの押し付けになることを指摘しています。

実施している学校や喜んでいる親たちはおそらく無自覚かと思われますが、

家庭状況を公に明らかにすること
個人の心情を公開させること
家族(親子関係)の価値観を押し付けること

などが行われる可能性があり、それらは公教育の一線を越えています。


「2分の1成人式」は、わたしも以前、問題に思って、
このブログで話題にしたことがあります。

「「2分の1成人式」の問題」

この行事は、次の想定をしていると思います。
--------
1. 子どもには父親と母親が揃っている。
(ひとり親家庭や親のない子はいない。
また現在の父親と母親が実の両親で、養子として引き取ったとか、
親が再婚したといった事情もない。)

2. 親はかならず子どもに感謝されることをしている。
(毒親、問題家庭、子どもの虐待は存在しない。)
--------


ここには日本で家族に関して、因習・反動的な人たちが
信仰にしているあの「家族思想」の影響もありそうです。

「家族思想という信仰」

この信仰のもとでは、自分たちが考える
「あるべき家族」しかこの社会には存在しないので、
「子どもには両親がいて実の親」
「親はかならず子どもに感謝されることをしている」
という前提で、行事を行なえるのだと思います。

ベネッセのサイトを見ると、「2分の1成人式」に
「9割が満足!」などと書いています。
「あるべき家族」の条件を満たすらしい家庭が
多数であることはたしかなのでしょう。

「9割が満足! 親子で感涙する「2分の1成人式」とは!?」

「2分の1成人式」に「満足である」という保護者が9割近くを占めています。


「2分の1成人式」を学校が取りやめようとすると、
クレームを入れてくる保護者がいるので、
学校もやめられないという現状もあるようです。
「2分の1成人式」を支持する保護者が多いので、
彼らに発言力があることもあるのでしょう。

学校長が子どもたちのことを第一に考え、プライドをもって
取りやめる判断を行えば良いのですが、現在そんな管理職は皆無です。

なぜなら、学校がこの行事を取りやめた日にはクレームを受け、
実施すれば称賛を受けるからです。
(結果、取りやめるのは私のような異端教員だけです)
これはもう、「マジョリティの暴力」といっても過言ではありません。

「2分の1成人式」を支持する人たちは、
自分たちが多数であることにものを言わせて、
「2分の1成人式」で苦痛を受ける少数の人たちを無視して、
行事を維持していることになります。
記事の指摘通り「マジョリティの暴力」です。


「2分の1成人式」を支持する背景に、
前述の「家族思想信仰」があるとすると、
この「信仰」が教える「あるべき家族」に当てはまらない
「異教徒」の家庭は「なかったこと」にされます。

はじめのエントリでは「2分の1成人式」を
「実施している学校や喜んでいる親たちは
おそらく無自覚かと思われますが」とも言っています。
行事の支持者たちの中には、苦痛を受ける少数派なんて、
ろくに眼中になく、存在すらまともに
意識していない可能性さえありそうです。

任天堂が4年ほど前に、同性愛者のいないゲームで
批判を受けたとき、「社会問題を描く意図はないから、
まずはゲームを楽しんでくれ」なんて、
のんきな見解を示したことがありました。

「同性愛者のいない世界」

「2分の1成人式」を喜んでいる学校関係者や
親たちの多くも、このときの任天堂と同様な認識を
「2分の1成人式」に対して持っているかもしれないです。



付記1:

「2分の1成人式」は「親を喜ばせる行事だ」
「親の自己満足のためのものだ」という批判がありますが、
正確には「『あるべき家族』に該当する多数派の親を
喜ばせたり自己満足させる行事」だと思います。

「あるべき家族」に該当しない少数派は、
子どもはもちろん、親も苦痛を受けることでしょう。



付記2:

「2分の1成人式」の推進派の思想についてです。
いかにも家族に関して因習・反動的で、
自分たちが「あるべき家族」と考える家族しか、
社会に存在しないと思いたい人たちだと思います。

「脳教育学者・桑原清四郎」
「「生んでくれてありがとう」父母への感謝を述べる“2分の1成人式”に疑問の声」
キーパーソンは恐らく桑原清四郎。
毎年のように川口市の小学校で脳科学をテーマに講演をしており、
彼の主催した講演会には森昭雄(ゲーム脳)や高橋史朗(親学)が招かれている。
親学には、「親守詩」として、子供に親に感謝させ、
讃えさせるという取り組みがあるから、恐らくこれもその一部だ。




posted by たんぽぽ at 21:15 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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