2018年02月23日

toujyouka016.jpg 日本の夫婦別姓問題の経緯

「江戸、明治、大正になかった夫婦別姓問題が、
なぜ昭和になって出てきたか?」などと
みょうなことを訊く選択的夫婦別姓の反対派がいます。
今回はこれを見てみたいと思います。



 
>江戸時代

江戸時代に苗字を名乗ることができたのは、
サムライと一部の特権を得られた人たちだけです。
人口の大半を占める庶民は、苗字がないかあっても
おおやけには名乗れませんでした。

苗字がないのですから、夫婦同姓とか夫婦別姓以前です。
「夫婦別姓問題」なんて、出てくるはずもないです。

そうしたら先の反対派は「江戸時代は苗字の
あった人たちだけのお話だ、苗字のなかった庶民は除く」
という主旨のことを言ってきました。
(いちおう筋は通っていると思います。)



江戸時代までは明治以降とは苗字の概念が異なります。
「氏(うじ)」「姓(かばね)」「名字」は
もともとは別のもので、作られた起源も、
用いられるようになった経緯も違っています。

「氏姓」は大和朝廷の時代に始まる天皇からさずかる名前で、
「氏」は一族の名前、「姓」は役職を表わしました。
「名字」は平安時代の後期に起こったサムライたちが
自分たちの一族の名前として自称したものです。
江戸時代からは「苗字」とも書き、役職も表わすようになります。

「夫婦別姓4部作」
「名字の歴史と夫婦別姓」

明治に入って近代的な家族制度を法律で整えていく際、
「氏(し)」「姓(せい)」「名字/苗字」の
区別がなくなり、同じものを表わすようになります。
「姓」と「名字/苗字」の法律用語が「氏」というくらいです。

現代の意味での「夫婦同姓」とか「夫婦別姓」は、
基本的に明治以降の概念ということになります。
苗字の概念が現代と異なるのですから、現代的な意味での
「夫婦別姓問題」が江戸時代にあるはずもないことです。



>明治時代

明治になって近代的な家族制度を整備したとき、
最初の政府の見解は「苗字は出自を表す」でした。
結婚改姓という考えがなく、女性は結婚しても
生来の苗字を名乗る夫婦別姓が原則だったと言えます。

「反対派の精神構造と思考構造 夫婦同姓は日本の伝統?」
「日本で夫婦同姓になった起源」


明治のはじめに夫婦別姓が存在したので、
この意味でなら「夫婦別姓問題はあった」と言えます。
それでも夫婦別姓を原則とすることに
異論や反論があって議論になったというほどではないので、
その意味では「夫婦別姓問題はなかった」と言えます。


その後、日本政府はヨーロッパの家族法を研究します。
このとき家父長制のもと妻は夫の苗字を名乗って
夫婦同姓になると定めている国を参照します。
日本もこれにならって夫婦同姓を原則にします。
「苗字は家の名前」という考えが出てきたのもこのころです。

女性が改姓して夫の苗字を名乗る夫婦同姓を、
日本が民法で定めたのは1898年です。
明治の後半であり、明治維新からだいぶ経っています。


日本で夫婦同姓を法律で定めた経緯として、
不平等条約を撤廃するために、欧米並みの法整備を急ぐ
必要があったことは、特筆することだと思います。
夫婦同姓は「従来の日本の伝統を捨てて
欧米化するために持ち込まれた」ということです。


最初のツイートの反対派は「夫婦別姓の考えは
いつ日本で生まれたのか」などと訊いています。
あたかも夫婦別姓がどこかの外国から、
日本に持ち込まれたかのように思っているのでしょう。


夫婦同姓こそもともと日本になかった考えであり、
近代化の過程で欧米諸国から持ち込んできたものです。
問いかけるとしたら「夫婦同姓の考えは
いつ日本で生まれたのか」になるでしょう。



付記:

最初の反対派には、わたしから次のことをお尋ねしたいです。
(お返事はいただいていないです。)



posted by たんぽぽ at 23:45 | Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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