2017年版の報告書を使って、就労や家事労働に関する
分析をしているエントリがあります。
「世界男女格差指数報告書2017年版 Global Gender Gap Report 2017」
ここでは失業率について見てみたいと思います。
表では日本を含むいくつかの国を抜粋しています。
日本の失業率は、男性が3.4%、女性は2.8%で、
欧米の民主主義国と比べて低いことが目につきます。
「日本は諸外国とくらべて失業率が低い」
ということは、よく言われると思います。
ジェンダーギャップ指数の報告書も、日本国内の調査と
同様の結果を出していることがわかります。
この数値は「仕事についていない人のうち、
就労を希望する人」を「失業者」と考えています。
仕事についていなくても、就労を希望しなければ
「失業者」とみなされず、カウントされないということです。
ここで「就労を希望する/希望しない」を
どのように判断するか、という問題が出てきます。
世界経済フォーラムは「失意の求職者」を算出しています。
「失意の求職者」とは、「自分にできる仕事はどうせない」と
思い込むなどの理由で、もとより求職を諦めた人です。
そこで、世界男女格差指数報告書では、
このトリックを見破る数値を用意している。
それが、”discouraged job seekers”という視点である。
これは、以下のように定義されている。
Discouraged job-seekers refer to those persons of working age who,
during a specified reference period,
were without work and available for work but did not
look for work in the recent past for specific reasons
(for example, believing that there were no jobs available,
believing there were none for which they would qualify,
or having given up hope of finding employment).
つまり就労可能なのに、「私なんかにできる仕事は
ないんだ」と思いこんでいたり、最初から求職を
諦めた人などを指す。その数値が以下だ。
日本の女性は「失意の求職者」が74.1%もあり、
他国とくらべて、きわだって多いことが特徴的です。
「失意の求職者」は「就労を希望しない」とみなされるので、
上述の「失業者」にカウントされないです。
日本の失業率が低いのは、本人の希望にかかわらず、
就労を諦めている「失意の求職者」が
多いからということが考えられます。
「失意の求職者」までカウントすれば、
日本の失業率はむしろ高いほうになりそうです。
日本の女性に多くいる「失意の求職者」とは、
具体的にどんなかたかと言えば「専業主婦」です。
就労したいけれど、既婚女性を採用してくれないなどの
理由で就労を諦めて、専業主婦をしているかたが
日本の女性には多いということです。
この結果は、厚生労働省の『出生動向基本調査』によると、
専業主婦を希望する未婚女性は2015年に8%程度で、
少数派であるという事実と合っていると言えます。
「未婚女性の予定ライフコース」
未婚女性の予定のライフコース。
— 舞田敏彦 (@tmaita77) 2017年4月3日
伝統型が減り,両立志向が増えている。それが実現可能という展望が持てないと,結婚は躊躇する。 pic.twitter.com/A1gT4YTA7J
若い女性で専業主婦を希望するかたは、
相手の男性が家事に非協力的なことや、
とくに妊娠や出産後の女性の就労が困難という理由で、
やむをえずということが多いです。
これも日本の女性で専業主婦になるかたは
「失意の失業者」が多いことを、裏付けていると思います。
「若い女性の専業主婦願望」
やむをえず専業主婦をしている女性を、
「専業主婦をしているから、就労を希望していない」と
みなして「失業者」の算出にカウントしないのが、
日本の統計ということです。
ほかに選択肢がない状況に追い込んでおいて、
「自発的に選択したのだから差別ではない」
などと言って、独りよがりに納得するのは
差別主義者にありがちなことです。
日本は統計でこのようなことをしていると言えます。
補助ブログの3月20日エントリで、
「女性は積極的に専業主婦になりたい人が多い」と
思っている男性をご紹介しました。
このような考えかたの人(男性)は、
日本では結構多いのではないかと思います。
「専業主婦希望の女性が多い?」
それゆえ専業主婦になる女性がいても、
そこに問題があると思わないので、「失意の失業者」に対して
問題意識が出てこないのではないかと思います。
家族やジェンダーに因習・反動的な人の中には、
賃金や雇用にジェンダー格差があっても、
「女性は専業主婦になれば経済的に困らないから
格差は問題ない」と考える人もいます。
これも「女性は専業主婦になれば安泰になるので
それを望んでいる」となんとなく思っていて、
「失意の失業者」を「失業者」と思っていない
ということもあるのだろうと思います。
謝辞:
ジェンダーギャップ指数の失業者についての
情報を提供してくださった、猫アカデミーさま、
ありがとうございます。
拝読して思いだした事があります。毎年世界経済フォーラムから11月頭に公表されるGlobal gender gap reportの内容です。大きく話題になる割には、あまり中身に踏み込んだ報道が無いのですが、私が抜き出し個人HPで公開している情報から4つほど紹介させていただきます。まず2つ→ pic.twitter.com/qdftRYVyGd
— 猫アカデミー (@nekoacademy0) 2018年3月20日
続いてトリッキーな失業率と、その「隠された意味」を示す、discouraged job seekersという指標です。及びその能書き。私は専門家では無いので、資料作成元の意図を読み誤っている可能性はありますが、気付いたことはツイートしていきたいと思います。どうかご参考に。 pic.twitter.com/1fdOWrthsN
— 猫アカデミー (@nekoacademy0) 2018年3月20日
Global Gender Gap Report 2017のサイトは以下です。https://t.co/hdtu5YWso2
— 猫アカデミー (@nekoacademy0) 2018年3月20日
以上から推察できることは、「女性に専業主婦願望があるとしても、男性に経済的に依存することを積極的に良しとしている≠ニは言えない」ということです。すなわち御説の補強になるものだと考えます。以上です。
— 猫アカデミー (@nekoacademy0) 2018年3月20日