とある落語家の貧困自己責任論の続きです。
桂春蝶は日本で生活保護を受給することは、
たいした困難でないと思っているようです。
近年の日本における生活保護の状況を思うと、
このかたはどれだけ現実を知らないのかと思います。
世界中が憧れるこの日本で「貧困問題」などを曰う方々は余程強欲か、世の中にウケたいだけ。
— 桂 春蝶 (@shunchoukatsura) 2018年2月20日
この国では、どうしたって生きていける。働けないなら生活保護もある。
我が貧困を政府のせいにしてる暇があるなら、どうかまともな一歩を踏み出して欲しい。この国での貧困は絶対的に「自分のせい」なのだ。
日本の生活保護の捕捉率は、2010年のデータで15.3-18%です。
これはヨーロッパの民主主義国と比べて、問題なく低いです。
表に出ている国では、フランスの捕捉率は91.6%です。
「生活保護の実態のメモ」
捕捉率が低いというのは、本来受給資格があるのに、
受給していない人が多いということです。
日本はそれだけ生活保護を受給しにくい国ということです。
この捕捉率の低さは、役所がおもに窓口で行なう
「水際作戦」が原因のひとつとなっています。
窓口の職員が情報のミスリードをしたり
圧力をかけたりして、受給の申請に来た人を
あきらめさせて、帰らせるというものです。
1年ほど前、小田原の生活保護担当の職員が
問題になりましたが、当時のウェブサイトを見ると
受給できない場合についての記述を、
いちばん目立つところに配置していました。
これもネットを使った「水際作戦」と言えるでしょう。
「生活保護・ネットの水際作戦」
日本の役所では「窓際作戦」が常態化していることを、
桂春蝶は知らないのかと思います。
生活保護は受給することが「スティグマ」とされ、
偏見や憎悪が渦巻き、バッシングが横行するところです。
現実には問題ない「不正受給」が過剰に問題視されるし、
受給者の私生活に不当に干渉したがる人も多いです。
最近のバッシングの発端になった河本準一氏の母親は、
受給資格があって正規の手続きをしていました。
違反はないし謝罪するいわれはないのに、
河本準一氏は謝罪する事態になりました。
片山さつきなどの自民党議員と、それに煽られた世論が
理不尽に圧力をかけたからです。
「河本準一氏叩きで見失われる本当の問題」
上述の1年前に問題になった小田原の
生活保護担当の職員は、受給者を威圧する
ジャンパーを着たり、グッズを利用していました。
自治体の職員が、世間の偏見や劣情と同レベルの認識で、
職務を行なっていたということです。
「生活保護・威圧のジャンパー」
「生活保護・威圧のグッズ」
日本では生活保護は、世論一般のあいだでの
偏見が強く、業務を担当する自治体職員でさえ、
その偏見の影響を受けているくらいです。
日本で生活保護を受給するとなると、
かなり覚悟を決めてかかる必要があることになります。
生活保護のバッシングに関するニュースも
わりとよく報じられると思うのですが、
桂春蝶はこれらをご存知ないのかと思います。
桂春蝶は、本当にここでお話したような、
生活保護の「水際作戦」やスティグマ性をご存知なくて、
「働けないなら生活保護もある」と言っているなら、
よくよく社会の現状を知らないことになります。
今後、必死になってお勉強して、社会問題について
適切な認識を持つ努力をする気がないなら、
社会問題を語るのはやめたほうがいいでしょう。
桂春蝶のいい加減な認識が拡散することの
社会への悪影響は言わずもがな、生兵法を続けるのは、
桂春蝶自身にとってもよくないです。
じつは承知の上で「働けないなら生活保護もある」と
言っているなら、悪質であることは言わずもがなです。
生活保護に偏見や憎悪をいだき、バッシングするのは
「日本はすばらしい国だ」と信じている人、
つまり桂春蝶と同様の思想の人に多いです。
実際に生活保護を受給する人がいたら、
桂春蝶は「働けないなら生活保護もある」と
言っていたことをすっかり忘れたかのように、
バッシングに加担しないかと、わたしは心配です。