1月に夫婦別姓訴訟を起こしたサイボウズ社長の青野慶久氏と
その支援者たちの動きへの懸念についてです。
「サイボウズ青野社長の「別姓訴訟」、日本会議への接近に戸惑う人たち」
(はてなブックマーク)
今回は日本会議への接近について見てみます。
こちらはなにをしたいのかが、わたしもわかりかねています。
具体的にはなにがあったかというと、担当弁護士の作花知志氏が
「日本会議の提案内容が実現される訴訟だ」と、
日本会議に向けてメッセージを送ったことです。
こうした危惧は、青野氏側が「夫婦別姓」反対である
日本会議にアプローチしたことでさらに濃くなる。
「日本会議の提案内容が実現される訴訟です。ご協力ください」
この訴訟の担当弁護士・作花知志氏が日本会議に向けたメッセージである。
夫婦別姓訴訟で目指すものが、なぜに選択的夫婦別姓の
反対派である日本会議の提案内容と同じというのは、
どういうことなのか?という疑問が出てきます。
青野慶久氏たちの提訴が目指すものは、
かつての法制審議会のC案に近いもので、
これはいわば旧姓の通称使用を法制化するものです。
日本会議などの反対派は、つねづね「旧姓の通称使用で
じゅうぶんだ」と言い続けているので、この点で主張内容が
一致するということのようです。
作花氏が「提案内容が実現される」とまでいった、
日本会議がかつて行っていた請願署名の内容を以下に抜粋する。
「『夫婦別姓』は、必然的に親子の間で
姓が異なる『親子別姓』をもたらします。
子供たちが受ける悪影響ははかり知れません。
近年、子供の心の荒廃が社会問題となり、
家族の絆や家庭の教育力回復の必要性が求められていますが、
『夫婦別姓』制度の導入は、全く逆方向の政策です。
選択的夫婦別姓制度は、家族の間で統一した姓を定めている
現民法上の家族の原則を崩壊させるものです。
私共は、選択的『夫婦別姓』制度の導入に強く反対するとともに、
働く女性の不利益の解消のためには、
旧姓を通称として認めることが最善であると確信します」
なるほど「類似点」がある。確かに青野氏たちが
求めるのは「旧姓を通称として認めること」。
原告団は日本会議に対して「ご協力ください」と
言っているのですが、これが「社交辞令」ではなく
本気で協力を打診しているとしたら、かなり問題だろうと思います。
選択的夫婦別姓の反対派はどういう人たちかが、
あまりにも見えていないことになるからです。
彼ら反対派というのは「選択的夫婦別姓に反対」以外を
いっさい認めることができず、なにがあっても妥協することのない、
頑迷きわまりない人たちと言わざるをえないからです。
「反対派と議論すると...」
15年前、自民党の選択的夫婦別姓の推進派の
活動がさかんだったころ、自民党内の反対派に対して、
推進派から譲歩するという戦略を取ったのでした。
具体的には
民法改正から婚外子差別の撤廃を切り捨てる、
夫婦別姓を例外扱いする「例外制法案」、
夫婦別姓の選択には家裁の認可が必要という「家裁認可案」、
という後退戦術を取り続けました。
「婚外子差別撤廃の切り捨て(1)」
「例外制法案」
「家裁認可制法案(1)」
それにもかかわらず、反対派諸氏は少しも態度を変えず、
終始頑迷きわまりない反対を続けるだけでした。
推進派からの妥協や譲歩は全部無駄だったということです。
日本会議のお歴々も、かつての自民党内の反対派と同様、
いっさいの妥協しない頑迷きわまりない反対派でしょう。
よって夫婦別姓訴訟の原告団が、いくら主張の類似性や親和性を
主張して接近しても、彼ら日本会議は絶対に
原告団への接近や理解は示さないと思います。
現に今回の作花知志氏のこの呼びかけに対する
日本会議の反応は、実質的に無視黙殺と呼べるものです。
理解も協力もしないよ、ということです。
これだけ親和性を強調したにもかかわらず、日本会議の返答は冷淡なものだった。
「具体的に夫婦別姓問題に取り組んでいるものではありません」
「この度のお申し出につきましてご辞退申し上げる次第です」
それゆえ今後原告団が、日本会議からの理解や協力を
得ようとして、あれこれと努力を始めると、
いよいよ確実に迷走して失敗すると思います。
日本会議からの歓心を買おうとすることで、
自分たちを見失なうことになりかねないです。
日本会議に接近しすぎることで、原告団の理解者や支援者の中から、
反発が強まる可能性も高くなるでしょう。
日本会議は今回の夫婦別姓訴訟の直接の被告ではないです。
15年前の自民党内の反対派議員のときと違って、
直接理解を求める必要はない相手であり、
原告団は無視してもまったく問題ない存在です。
かりに日本会議が被告側の支援に
関わることになったとしても、あくまで裁判闘争です。
15年前の自民党内の法務部会のように、
被告が自分たちの社会的ヒエラルキーを利用して、
原告をだまらせるという手段も使えないです。
「自民党法務部会の実態」
原告団にとって、日本会議から理解や協力を得たり
懐柔するメリットはほとんどないことになります。
原告団もそれくらいは承知でしょうから、
今後、日本会議からの歓心を買おうとか
理解や協力を得ようといったことを、おそらくまともには
考えてはいないだろうとは、わたしは思います。