2018年05月15日

mar0006.gifペーパー離婚した親に思うこと

夫婦別姓の家庭に育った子どもへのインタビュー記事です。
子どもに直接聞いた体験談も、すでにいくつも出ていますが、
その中でもこの記事はとくに詳しいほうだと思います。

「22歳男性が「ペーパー離婚」した親に思うこと」
(はてなブックマーク)

 
ご両親の婚姻の形態ですが、ペーパー離婚して事実婚です。
いまから25年前で、法制審議会の答申書(1996年)より前です。
旧姓使用を求める関口裁判も、判決が出たのは
1998年ですから、それより前になります。

当時は旧姓使用が認められない職場も多く、
法律婚をして結婚改姓すると、自分の苗字を守ることが、
現在よりずっとむずかしかったのでしょう。

ふたりは、将也さんが1歳のときにペーパー離婚しています。
ペーパー離婚というのは、婚姻(法律的に結婚)した夫婦が、
法的には離婚するものの、実生活ではそれまでどおりの
結婚生活を継続するという、書類上だけの手続きです。
将也さんの両親が結婚したのは、いまから約25年前ですから、
旧姓を使いたい人にとっては、いまよりもっと不便が多かったでしょう。
事実婚やペーパー離婚をする人もまだ少なく、
家族のなかで苗字が異なるのは、いま以上に珍しいことでした。


インタビューを受けたかたは、ご両親の夫婦別姓を
どう思っていたかというと、「それでふつうだと思っていた」です。

一緒に暮らしていることが家族
将也さんとお父さんは「松浦」さんで、お母さんは「百瀬」さん。
小さい頃から将也さんにとっては、それが「当たり前」でした。

でも将也さんにとってはずっと、その状態こそが「ふつう」だったのです。
「僕は『一緒に暮らしていることが家族だ』と思っていたから、
苗字が別であることに関して、抵抗も、違和感もなかったです。

夫婦別姓の家庭の子どもは、物心ついたときから、
両親の苗字が異なるという環境なので、
それを当たり前と思うだけで、なんら疑問を持たないという、
よく言われていることが、ここでも確認できます。

「夫婦別姓だと子どもがかわいそう」とか、
「子どもは夫婦同姓を望んでいるはず」といった
選択的夫婦別姓の反対派にありがちな認識は、
やはり偏見にもとづいた虚構にすぎないことになります。

「長尾たかし・選択的夫婦別姓に反対」


インタビューを受けたかたが、自分の家族のことで
最初に衝撃を受けるのは、クラスのともだちから
「夫婦は同姓のはず」という意味のことを言われたときです。

自分の両親は夫婦別姓なのはどういうことかと
両親に確認したところ「離婚している」と言われました。
「離婚=不幸」のイメージがあったので、
衝撃を受けることになったのでした。

僕はペーパー離婚のことを知らず、
両親が結婚していると思い込んでいて、
親の苗字が違う理由をほかの子から聞かれても、
『うちの親は結婚してるよ』って答えていたので。

小4のとき、女の子から『結婚するには苗字が一緒じゃないと
いけないんじゃない?』みたいに言われて、
『えっ!?』ってなりました(苦笑)。
それまで間違ったことを言ってしまっていたのが恥ずかしかった。
親もいつか教えようとは思っていたんでしょうけれど
『遅いよ』という感じです(笑)」
将也さんは、友だちに指摘されて初めて、
両親が婚姻関係にない可能性に気づきました。
そこでさっそく親に「離婚してないよね?」と尋ねたところ、
返ってきたのは「離婚してるよ」との答え。

「それはショックでした。それこそ固定観念ですけれど、
当時は離婚イコール、マイナスのイメージだったので。
よく『行列のできる法律相談所』(テレビ番組)とかを
見ていると離婚の話をやっていて、離婚というのは
不幸なものだ、と思っていたんです」

こうしてみると、夫婦別姓の家庭の子どもが
自分の家族のありかたに疑問を持ったり、
不幸になる原因があるとすれば、
それは社会や周りの人たちのせいだろうと思います。

そうした社会や周囲が「夫婦は同姓に決まっている」
「婚姻届けを出している状態が正しい結婚」
「離婚は不幸」という社会通念を吹き込むことで、
夫婦別姓の家庭の子どもが不幸になる
可能性が出てくるということです。


インタビューを受けたかたの場合、
ご両親が適切な説明をしてくださったので、
ショックを受けているのは数十分だけでした。

両親にはもっと早く教えてほしかったという
主旨のことを言っていますが、最後に「(笑)」が
付いているので、さほど深刻ではなかったのでしょう。

「でも、ショックを受けていたのは数十分です。
親がそこで誠実に説明してくれたので。
『お母さんもお父さんも自分の元の苗字を使いたいから、
書類上は離婚したけれど、実際にこうして仲良く
暮らしているじゃないか』と言われて、
確かに仲は悪くないなと。それで安心しました」

「離婚」という単語を耳にしたときは、
「もしかして本当は、両親は仲が悪いのか?」と心配になり、
本当に別れることまで想像してしまったそうですが、
そういう状況ではないことがわかり、
不安はすぐに解消されたのだそうです。


わたしが少し思ったのは、両親の夫婦別姓に
子どもがショックを受けているあいだに、
選択的夫婦別姓の反対派が自分の偏見にもとづいた家族観を
あれこれ吹き込んだらどうなるかです。

ショックをこじらせて、自分の家族は間違っているとか、
なにか問題がある家族だとか思うようになって、
本当に不幸になる可能性もあるだろうと思います。

かくして「夫婦別姓の子どもはかわいそう」と信じる
選択的夫婦別姓の反対派は、自己成就予言的に
夫婦別姓の子どもをかわいそうにするのだと思います。


1月17日エントリと2月16日エントリでお話した
選択的夫婦別姓の反対派は、とくに危険だろうと思います。
この反対派は、夫婦別姓の家庭の親が
「自分の子どもはいじめられていない」といくら言っても、
「親が隠している」とか「親が気づいていない」とか、
人聞きの悪いことを言い続ける人です。

「別姓夫婦の子はいじめられる?」
「別姓夫婦の子はいじめられる? (2)」

眼の前に夫婦別姓の家庭の子どもがいたら、
「君は不幸なのにそれを認めたくないだけだ」とか言って、
「ぼくは夫婦別姓の家庭の子だから不幸なんだ」と言うまで、
この反対派は詰問を続けるのではないかと思います。

子どもが親の夫婦別姓のことでショックを
受けているときに、そのような詰問をやったら、
なおさら簡単に、その子どもを親の夫婦別姓のせいで
不幸ということにしてくれると思います。


夫婦別姓の子どもに対する現実的な不幸は、
ひとつだけあって、それは選択的夫婦別姓反対派の存在であり、
彼ら反対派に出会うことだというのは、
わたしがつねづね思っていることです。
それがこのインタビュー記事に対する考察で、
また示されたのではないかと思います。

「子どもがかわいそう?」

しかしそれでも、別姓夫婦の子どもが不幸になる、
確実な原因がひとつだけあると、わたしは思います。
それは、「夫婦別姓だと子どもがかわいそう」という、
偏見を持ったおとなたち、とりわけ、ここでわたしがお話ししている、
選択別姓の反対論者たちに出会うことだと思います。


posted by たんぽぽ at 23:01 | Comment(0) | 民法改正一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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