2018年06月06日

toujyouka016.jpg 日本社会はうまく回っていない

補助ブログの5月25日エントリでご紹介した、
「日本で女性は主体的に生きられる」と信じているかたは、
次の理由で「日本の社会はうまく回っている」とお考えです。

これを見れば、このかたの言いたいことは
「女はキャリアを持たなくても、男性と結婚して養われることで
生活が安定するから、いまの日本はよい社会だ」
ということなのかと、当然思うことになります。

 


配偶者控除や扶養手当ては、基本的に既婚男性だけが受けるものです。
それによって世帯所得が安定するというのなら、
安定するのは既婚男性の世帯ということになります。

「配偶者控除で世帯所得が安定?」

女性は低賃金の非正規雇用につくことが多くても
「社会がうまく回っている」と言っています。
非正規雇用の年収ではひとりで暮らすことも困難です。

「男女&雇用形態別年収分布」


よって「女性は低賃金でも高所得の男性と結婚することで、
世帯全体の収入は安定するから問題ない」と
最初のツイートのかたは言いたいと、考えることになります。

「家のことは専業主婦の妻に任せて、
男は会社での仕事に専念する」という、
高度経済成長期に定着した家族観と企業文化を
「うまく回っている」と言っているものと思われます。
もっとはっきり言えば、現在の既得権を
維持したいということでしょう。



「夫が外で働き、妻は専業主婦、子どもはふたり」という
高度経済成長期以来の「ふつうの家族」を、
2010年代の現在に実現しようとすると、
夫の年収は30歳で650万円程度となります。

「子どもふたりの適正年収」
「日本という国で、子供2人を育てる適正年収をレポート」

30歳代の男性の平均年収は427万円です。
年収分布は以下のようで、ボリュームゾーンは、
300万円-400万円と、400万円-500万円です。
「ふつうの家族」を持てる年収650万円以上は
全体の5%程度であり、一握りの裕福層ということになります。

「平均年収/生涯賃金 > 年齢別 > 30代」

「平均年収/生涯賃金 > 年齢別 > 30代」


日本は女性を低賃金の非正規雇用が多いし、
正規雇用でも生産性の低い部門に回すことが多いです。
そのように女性をまともに登用しないことが、
労働生産性を引き下げる大きな原因となっています。

「女性の活躍度と労働生産性」
「「労働生産性と男女共同参画―なぜ日本企業はダメなのか」

GEMと就業者の年間労働時間1時間当たりのGDPの関係

因習・反動的な家族観をいつまでも続けることが、
子どもを持ちたくない女性を増やすことになり、
出生率の低下を招いて、少子高齢化をもたらしています。

「良妻賢母嗜好と出生率」
「良妻賢母が好きな国はなぜ出生率が低いか」

ひとつは「女性が活躍する国ほど少子化ではない」という相関です。
逆に言うと女性が活躍できない国、働けない国ほど少子化が進んでいる。

「良妻賢母が好きでない国の方が出生率が高い」というものです。
少子化の国は「日本、イタリア、ドイツ、韓国」など
「伝統的家族観」が強いところ。当然良妻賢母が良しとされます。
イタリアなんか「マンマ」の国ですし。


少子高齢化が進むことで、人口減少が進むことになり、
日本全体の経済力が低下することになります。
日本の経済力はすでに低下を初めていて、
今後は先進国から脱落することが予想されています。

「2050年に先進国から脱落?(2)」

GDP成長率(実質) 2030年代以降、すべてのシナリオでマイナス成長


高度経済成長期以来の「夫が働き妻が専業主婦」という
因習的な家族観は、個人レベルでも維持できないし、
社会全体のレベルでも破綻をきたしています。
この状況において、日本社会は「うまく回っている」
というのは、どれだけのんきな認識なのかと思います。

このように現状で「うまく回っている」と
思っているのんきな人は、残念ながらいまの日本には、
まだまだ多いのだろうと思います。
それでこの期におよんで危機感も薄いし、
因習的な家族観を維持したい人たちは後先を考えずに、
ジェンダー平等への反対に血道をあげられるのでしょう。

posted by たんぽぽ at 23:49 | Comment(0) | 家族・ジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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